三度目の・・・


 二度あることは三度あるというわけではあるまいが。
 悠太・光太、今シーズン三度目の嘔吐下痢症にかかっています。
 昨年12月の二度目の後に、使い捨て手袋を買っていたのですが、まさか役に立つ日が来るとは思わなかったわー(涙)。素手で処分していたことを思えば、随分と気持ちがラクです。

 最初に発症したのは光太。
 ただ、今回は普段と違い発熱から始まったので、最初は、「単なる風邪で、おなかにもきちゃっただけかなあ」と思っていたのですが、さにあらず。この、一向に治らない下痢は。水便は。くううっ。もう、ノロウィルスだかロタウィルスだか知んないっ。

 ただ、光太は嘔吐もなく比較的軽症で、下痢が続いているので自宅軟禁状態ですが、4日目には食欲も戻り、元気いっぱい。まあ、光太はたぶん通りすがりの人から、さくっとウィルスをもらっただけだったのだろうし。

 かわいそうなのは、光太の持ってきたウィルスをさらに凝縮させた形で、密閉された室内で光太からもらってしまう悠太です。
 光太から2日遅れて発症した悠太は、発熱、嘔吐、下痢・・・・熱は大したことはなかったのですが、ひどいのが嘔吐。2日たっても嘔吐はおさまらず、のどが渇くのでしきりにミルクを欲しがるのですが、飲めばまた吐いてしまいます。

 のどが渇く、ミルクを飲む、気持ち悪くなる、吐く、の繰り返しで、体力がどんどんなくなり、顔は真っ白。唇も白く、げっそりと頬がこけ、すっかり別人の形相。起き上がる気力もなく、吐いた後はひたすら眠り続け、生ける屍状態。

 なのに、夕方になるとフラフラしながら「お風呂まだですか」と催促するのですよ。
 体力ないのに無理だってばー!「夕方=お風呂」の習慣が体にしみついているんでしょうねえ。「病気だから、お風呂に入りません」は通じないので、仕方なく浴槽に湯を張り始めます。
 まあ、いいか。さっき横向きに寝た状態で吐いてしまったので、顔も髪の毛もミルクゲロまみれになったことだし・・・シャンプーしてやりたいし。

 待ちきれず、すぐに浴槽に入る悠太。そのそばで、悠太を気にしながら入浴準備をしていたのですが・・・
 ひーーーーっ!
 ふと風呂場を見ると、悠太が浴槽から出て、お風呂マットの上でぐったり倒れているのです。
 生きてるか、悠太―!あ、生きてた。
 だーかーらーっ。お風呂は無理だってばーーー(涙)

 もう1日もすれば吐き気もおさまるから頑張って、としか言いようがないのがつらいです。言ったところで伝わらないし。

 
 もう一つつらいのが、一足先に元気になった光太の相手です。
 ただでさえ、二人分の下痢の始末(光太は床に垂れ流し)、悠太の吐物の始末(悠太は布団の上で吐くので、そのたびにシーツを洗濯、布団をドライヤーで乾かします)にあたふたしているというのに、光太ときたらにっこり、「お母さん、あーそーぼっ!」ですもん。
 そりゃあね、家の中、つまらないのは分かる。できるだけお付き合いしたい。けど、母のこの状態が見て分からんのかー!!

 光太は、自閉ちゃんの割に状況を把握できる子です。人の顔色をよく見ている、というか。園でも、忙しくて遊んでもらえそうにない先生には近寄らないし、家でも、台所仕事をしていたり、忙しそうにしている私にも無理を言わない。私が一息ついて椅子に座ったところで、「遊んで?」と来る。そんな子です。

 光太も、最初はちゃんと我慢していたんです。絵本を見たり、テレビを見たり。
それに飽きると、普段出すこともないプラレールを「出して」とせがんだり、埃のかぶった古いおもちゃを取り出してそれで遊んでみたり、光太なりに、頑張って退屈をしのぐ工夫をしていたのです。

しかし、あまりに退屈な状況が続くので、光太もがまんの限界がきてしまったらしく。
「おかあさーん、あーそーぼっ?」ですよ。

昨年のクリスマスプレゼントにトランポリンを買ってから、二人とも、夫や私に「一緒に遊んで」とせがむことが多くなりました。一緒に跳ぶこともですが、とにかく一緒にいて欲しい、「ボクを見て」なのです。
これは、すごくうれしいことです。共感の芽生え、共感して欲しいという気持ちの表れです。
普通の子どもが「お母さん、見て、見てー!」ってよく言うじゃないですか。あれ、うらやましかったなあ。それに引き換え、たんたんと、自分の世界で遊ぶうちの子。「お母さんはここにいるんだけど〜」と一緒に遊ぼうとしても、ぷいっと行っちゃったり。

そんな悠太・光太が、私がそばで見ているだけで、うれしそうにしているのですよ。そんな彼らを見ているだけで、私も幸せ・・・なのは幸せなのだけれど。

光太、今は勘弁してくれ。さっき、お付き合いしたじゃないか。さっき、一緒にトランポリンも跳んで、追いかけっこして、マラソンまでしたじゃないか。
こら、今布団を乾かさなきゃいけないんだから、こっちへ来るな。ドライヤーでやけどするから、来るなってば。来るな。来るな。来るなーーーっ!!

1日中軟禁状態で言葉の通じない病人の世話をして5日も経つと、神経が参ってきます。
「来るな」と言ってもそれでも絡んでくる光太を、足蹴にしていました。けどそれを、「遊んでくれている」と光太は勘違い。キャッキャッキャ〜と笑いながら大喜びです。それがまた腹が立ち、蹴倒して、どついて、押し倒して・・・
それでも、喜ぶ光太。もう、いやだ。助けてくれ。


唯一頼りにできる夫はさして頼りにならず。
さすがに、悠太が発症してからは残業せずに帰ってきてもらっていたのですが、結局のところ、夫は、大変なこと(悠太のゲロの始末とか、お風呂のどたばたとか)全部終わった後に帰ってくるのです。
で、機嫌のいい光太とお風呂に入ったり(光太は2度目のお風呂)、光太をお膝に据えてテレビをへらへら見てるだけ。

そして、何が腹が立つといって、ずっと引きこもりで一歩も外に出ることのできない私に、手土産もなく、手ぶらで帰ってきやがったのだから。
これには、キレました。
「悠太・光太に絵本とか、私にマリオのプリンでも買って帰って来なさいよー!それくらいの思いやりってもんがあんたにはないのー!?」
すると、翌日は「お土産〜♪」と得意そうに帰ってきました。ええ、私の言ったとおりのもの。悠太・光太には絵本、私にはマリオ(広島のお店です)のプリン。
もう、やだ。この芸のなさ。
子どもや私の体調を心配する電話やメールをくれるでもなし。一人で、今にも死にそうな悠太を抱えて、どれだけ不安だったか。
こういうところの夫の鈍さが、耐えられない。
結局、母親が一人で責任をとらなければいけないのか。悔しい。

腹いせに、夜中の子どもの看病は夫一人に押し付けて、私は一人静かに二階で就寝♪腹いせというのは言葉が悪いけれど、実際、子どもから離れる時間がないと、気が変になりそうだったのです。
夫は、しばらくまともに夜、寝ていないはず。
知―らないっと。若いから大丈夫でしょ。


まる2日嘔吐に苦しんだ悠太、翌日にはやっと起き上がることができました。顔はまだ真っ白のまま、下痢はひどいし、それでも「お外行きましょう」と言う元気がでてきました。
お父さんとつかの間ドライブを楽しんだ悠太・光太。けど、ドライブでは飽き足らず、結局もう一度「お外」。結局、公園に行くはめになりました。さすがに公園ではおとなしく、持っていった絵本を見ていたそうですが・・・
ちょっとは気分転換になったかな?


今回体調を崩してから、おまけがついてきました。
光太が、「杏仁豆腐命!」になってしまったのです。
もともと夫と私が杏仁豆腐が好きで、よく買い置きしています。夫と私が食べるときには、以前から光太も「ボクも〜」と3口、4口は食べに来ていたのですが、今回体調を崩したことで、あの、冷たくてつるん、の感覚がいたく気に入ってしまったよう。
朝から冷蔵庫の前で「杏仁豆腐ちょうだい!」です。10時のおやつも、昼も、3時のおやつも、夜も、とにかく杏仁。まあ、一度に食べる量は少ないのでいいのですが・・・

なんと、バニラアイスクリームにもチャレンジ。
さすがに、これは一口食べるごとに「冷たいっ!」と顔をしかめるのですが(その顔がまた、かわいい)味は気に入ったよう。
この夏は、光太と一緒にアイスクリームを食べられそうです。

そろそろ、「冷たいもの、冷めたものは食べられません。温かい食べ物しか食べません」とは言えなくなってきたかな?
一番しんどかったことの一つが、食べ物・飲み物の温度のこだわり。
いろんなものが食べられるようになった光太ですが、でもまだ、このこだわりはしっかり残っていて、特にミルクの温度だけは、悠太よりも光太のほうが融通がききません。ちょっと熱めが好き。人肌になると、もう飲みません。「いーじゃん。まだあったかいじゃん」といっても、「まずーい」とべーっ。
園ではもうミルクを飲まない光太ですが、たぶん、光太ジャストの温度のミルクじゃないからだろうなあ。それよりも、お茶のほうがいいや、って感じなんだろうな。


先日、夫も書いていましたが、光太の「お父さんラブ」はすごいのです。とにかく、1日中お父さんから離れない。
お父さんが「お仕事、バイバイ」するときも、以前は「ふ〜ん」という感じでしたが、最近はお父さんが視界から消えると、すぐさま追いかけます。
「お父さん、どこ?どこ?」
追いついた先が玄関、お父さんが靴を履いていようものなら、「ボクも行く!ボクも連れて行ってー!」と抱っこポーズで号泣です。
こんなにも光太に愛されて、まっすぐに慕われて、夫もうれしくないわけがない。

光太が夫の膝に座って、夫に「あ〜ん」してもらって杏仁豆腐を食べていたときのことです。
一口たべるごとに、「ん〜、おいしい♪」という顔をする光太。そのかわいさに、夫、「うふふふふ〜」目尻は下がりっぱなし、そして、だらしなく鼻の下が伸びっぱなし。
その夫の顔を見て、しばし呆然。
よく、「鼻の下が伸びる」という表現を使うけれど、こういうことなのか・・・
比喩ではなく、普段の1.5倍の長さにはなっている。
本当に、デレデレすると鼻の下って伸びるんだ。しっかし・・・情けない顔。
はあ。
ため息をつく私に、「ほら、見て。光太、かわいいでしょ?」
あほか、あんたは。この、バカ親子。 


すっかり元気になった光太。悠太は完全復活にはまだ、しばらくかかるかな。もう少ししんどいけど、頑張ろうね。
お母さんも・・・頑張らなきゃ。あーあ・・・

発病前の悠太。玉ねぎを狙っています。
発病後、家でおとなしく過ごす二人。本を奪い合うケンカはします。 日曜日。外遊び出来るまで回復しました。


育児なんか大キライ!目次へ
ホームへ