母親スイッチ


 1月も半ばを過ぎてしまいました。お正月なんて、すっかり過去のもの。
 今年のお正月休みも、ほんと、な〜んにもしなかった私。料理こそ仕方なくやりましたが、料理の後片付けはもちろん、洗濯機まわしたり、洗濯物干したり、掃除したり・・・そんな一切の家事をやってくれたのは夫。子供の世話や相手もすべて夫。どうしても手が足りない場合には抱っこしたりおんぶしたりもしましたが・・・それも数えるほど。「な〜んで、私がやらんにゃいけんのんよー」と。母親業、放棄。
 実際のところ、去年から持ち越した風邪のせいで体がしんどかった、というのもあるのですが。

 夫は、そんな私に慣れっこ。ゆっくり私が新聞を広げているそばで、「光ちゃん、おしっこ?悠ちゃん、うんち?」とばたばた。それでも、何もしない私に腹をたてるでもなく、「お母さんは、動かざること山の如しじゃねえ」と感心して(?)笑っています。
 しかし、このぐーたらした生活のつけは、しっかりとおなか回りについてしまい(汗)。
 さあ、動け、私。母親スイッチ、オン。


 正月休み明けは、緊張しました〜。
 果たして、私は母親に戻れるのだろうか?「お父さ〜ん」と呼んでも、夫はいません。
去年の夏休み明けには、子供はお父さんがいなくなったことにあからさまにがっかりして、ハンストまでした悠太・光太。母子3人の生活に戻って、果たして、あいつらは私になついてくれるのだろうか?
それはもう、真剣に心配しました。

よしっ。「だっりー。めんどくせー」は封印。顔をぴしゃぴしゃ叩いて気合を入れて。にっこり、聖母の笑顔を貼り付けて、声も1オクターブ上げて。
「悠ちゃ〜ん、光ちゃ〜ん、おっはよ〜!」

意外にも、二人とも、お父さんのいないことを気にするそぶりはありません。それどころか、「うわー、お母さんだ、お母さんだ。久しぶり〜」といった感じで(笑)、二人がわらわらと、うれしそうに私の周りにまとわりついてきます。
ううう。よかったー。ほんと、よかったよぉ(涙)

しかし、はたとそこで思い当たる。
もしかして、あんたたち、ずっとお母さんと遊びたかったの?
確かに、お正月休みの間、私はずっと不機嫌な顔して(体調不良で仕方なかったとはいえ)、「お母さんに近寄るな」オーラを出し続けていたもんなあ。
ごめんね、悠太、光太。よしよし。いっぱいギューっするからね。
えっ?ギューっはいいの?トランポリンですか?お母さんも一緒に?いやー、朝っぱらからそれはご勘弁を・・・うっ。出た、光太お得意の「遊んでくれなきゃ、ボク、泣いちゃうぞ」攻撃!

遊んでくれる大人なら、自分の意のままに従う大人なら、結局誰でもいいのね。
聖母の仮面、あっけなく崩れる。
あーっ、やっぱりこいつら、めんどくせーっ!!


子供を産んでからというもの、風邪をひきやすく、治りにくくなりました。
以前は、「いつ風邪をひいたかなあ」と思い出せないくらい。そんなふうだったから、今でもちょっと風邪を引いても、最初は「まあ、そのうち治るだろう」と軽く考えるのです。
が、これが治らない。明日はましになるだろう、明日は、明日は・・・と思っているうちに、夫が新たな風邪菌を持ち込んだりして、どんどん悪化してしまう。1ヶ月ずーっと風邪引きっぱなし。最終的には病院へ行くのですが、そのタイミングがなかなかつかめなかったり。

なんで、こんな鼻風邪ごときが自力で治らないのか。自分でも分からない、情けなくなります。
園の先生や友人からは、「そりゃあ、そんだけ子育てストレスあったら、治りにくいよー」と言われるのですが。
普段は、そこまでストレスを感じることはないんですよねえ。子供が病気したり、機嫌が悪くてグズグズ言っていたりすると、さすがにイライラしますが。今の生活が当たり前だと思っているので。

けど、久々にぐーたらした「素の自分」全開の生活から一転、母親スイッチを入れると、いかに自分がぴりぴりしているか、よく分かります。なにぶん、ものを言えない子供たち。アンテナをぐぐっと張って、ちょっとした子供の仕草や変化にすぐに対応できるように、子供がそばにいる間はずっと緊張しているのです。
5分、10分夕食の時間が遅くなったために、取り返しのつかないことになる場合もあります。ばたばたしていて、ちょっと歯磨きの時間が遅れると、いつもはニコニコであーんしてくれるのに、激怒だったり。
 
 夫も、仕事の締め切りに追われてひーひー言っていますが、私だって毎日、数分ごとの締め切りに追われているようなもの。それも、「ちょっと待ってください」が通用しない上司だもの。たち悪いったら。
 ああ、疲れる。


 そんな母親のスイッチをつかの間オフできる格好の娯楽が、映画。もちろん、レディースデイ1000円狙い。とうとう、「6本見るごとに1本無料でご招待」というカード会員にもなってしまいました。
 今年に入ってからも、すでに2本見ました。

 一本目は、「犬神家の一族」。25年前のもののリメイク作品です。
 横溝正史の金田一耕助シリーズがすごく流行っていた当時、私は小学校4年か5年かそこいらだったのですが、家族みんなが夢中になって映画やドラマを見ていたものです。
 「獄門島」「悪霊島」「悪魔の手毬歌」「悪魔が着たりて笛を吹く」「八つ墓村」等等。
 時代背景などはまったく分かりませんでしたが、不気味で怖くて、それがたまらなく面白くて。文庫本も、読めない漢字を母親に聞いたり、辞書で引いたりしながら必死で読んでいました。

 そんなこんなで、「犬神家の一族」も楽しみにしていたのですが・・・
 なんというか、私もすっかり平成の世の中のスピードに毒されてしまったようで。あれは、昭和だから面白かったのかも。
 「よしっ、わかった!」とあてずっぽうに犯人をでっち上げる、おなじみのトンチンカンな刑事など、当時、私の母などは腹をよじって笑っていたものでしたが・・・なんか、ねえ。単なるバカ?

 一番ありえなかったのは、金田一がいるそばで、第二、第三の殺人が起こり、最後には金田一の目の前で犯人まで死なせてしまったっていうのに、「いやー、金田一さんのおかげで事件も解決しました」というくだり。
 嘘でしょうーーーー!
 こんなの、今の世の中じゃ大失態、謝罪会見、更迭もの、職務剥奪でしょう。
 びっくり。


 もっとびっくりしたのが、先日見た「愛の流刑地」。
 もともと渡辺淳一作品は共感するものがない、というか苦手だったのですが、まあ、話題作だし、見てみよう、と。ちょうどポイントもたまって無料鑑賞できたし。

 R15指定だけあって、しょっぱなから度肝をぬかれてしまいましたが、それはいいとして。
 なんじゃ、こりゃ。
 大人の純愛とかいいながら、結局のところ、売れない作家が、自分の熱烈なファンという若い人妻を利用して食っちゃった挙句、おかしくなったその人妻を懇願されるまま殺してしまったってことかいな。

 とにかく、ありえないことだらけ!
 まず、良識のある大人の男が、結婚していて小さい子供が3人もいる女を、いくら綺麗で好みのタイプだからといって口説くか?
 私は、そこからアウト。

 また、女性の描かれ方が、典型的な男性の都合のいい女。腹が立つことこの上ない。
 二人が最初に体の関係を持つときに男が女に言うのです。
「こういう関係になるのはいや?」
 すると女はこう答える。「おまかせします」
・・・そんなこと言う女、いるかーーーーーーっ!!
なんでしょう、男ってのはどこかで、こういうおとなしくて従順な女を望むものなんでしょうかねえ。

この男、変態きわまりなく、行為の間の音声をテープに録音しているのですよ。
それに女も気付いてしまうのですが、普通そこで、「あ、この男ちょっとやばいかも」と引くじゃないですか。しかし、男がこうのたまうのですよ。
「これは二人だけの、愛の記録だ」
げーーーーっ!きもいっ。
そして、その言葉に納得するな、女――――っ!

男が「私たちは真剣に愛し合っているんだ!」と豪語するわりに、家を追い出されそうになった女が「私たちの子どももできたことだし」と言ったとたん、あからさまにうろたえていましたっけねえ。
女の言う「子ども」というのは、男が新しく書き上げた小説のことだったのですが、その女の言葉の意味を知って、正直なくらいほっとする男。
どういうことなんでしょう。
子どもができて当然のことをしておいて、子供ができたというと、びびる男。
真剣に愛し合っているというのなら、お互いのすべて、子どもも生活も将来も、まるごと受け入れる覚悟があってのことじゃないのか?
で、結局、行き詰って追い詰められた女を殺しちゃったの?
理解不可能〜!

この女にも、共感するものは何もありませんでした。
女の年齢設定が32歳。まだ、母親を必要とする小さな子どもが3人もいるのに、いくら旦那が仕事で家庭を顧みないからといって、浮気に走った挙句、死ぬか?
子ども以上に大切なものってなに?

この女の年齢が、男と同じ40代だったら、もうちょっとリアリティがあったかも。
男45歳、女32歳というのも、気に入らない。なんじゃ、この年の差は。結局、男は若い女がいいってこと?
女は年上の男に何を求めるのか?包容力とか?うーん、分からん。
年下だろうが、うちの夫なんて並々ならぬ包容力(諦観ともいう)があるわよ〜!

やっぱり、不倫ものは理解できません〜
理解できないってことは、私は幸せなんだろうな〜とか思ったり。
不倫、浮気。家族のために懸命に働くお父さんに対して、すごく失礼だと思うのだけれど。

とにかく、突っ込みどころが満載だった「愛の流刑地」。私はムカムカしながら見ていたのですが、映画の後半になると、客席のあちこちから聞こえるすすり泣きの声。
ひいいっ!この映画のどこに泣きのツボがあるのーーーっ!?
私の方が変なの?

映画が終わってみれば、涙ぐむ人半分、私のように「ありえねー」と大笑いしている人半分、というところのようで、ほっとしました。
でもきっと、泣けるほうが、映画を楽しめたんだろうなあ。


さてさて。
悠太・光太は3学期。元気に通園しています。
冬休みにのんびりできたのはいいけれど、さすがに飽き飽きだったようで、新学期が始まると大喜びの二人でした。
え〜と。二人に関して特にトピックがないので、これにておしまい。
どうか、このまま体調を崩さず元気でいてくれますように。
年中さんでいられるのも、あとわずか。がんばれ〜!



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