ボクにもできるもん!


 悠太のクラスの母子通園日のこと。
 先生が、「悠ちゃん、お母さんにかっこいいとこ見せてあげよう!」と悠太にお手紙ホルダーを渡しました。お手紙ホルダーには、毎日の生活の記録や家や園での様子を書かれた用紙がはさんであって、そのお手紙ホルダーを赤い箱のポストへ入れるのが、子供の毎朝のお仕事なのです。
 「えー、悠太が?できっこないよー!」と一笑に付す私。
 案の定、悠太はお手紙ホルダーを目の前にいた私に渡そうとします。もーっ。ラクに解決しようとするんだから。「いやいや、お母さんにくれなくていいから」と悠太の前から逃げます。
 すると悠太、一呼吸置いてから、ぽてぽてぽて、とゆっくり歩き出し、棚の上においてあったポストの箱へお手紙ホルダーをすとん、と上手に入れたのです。
 「おーっ、すごい!できたじゃん!」拍手喝采です。
 お手紙ホルダーをポストへ入れる。たったそれだけのことですが、実は、私の中では大きな大きな目標だったのです。

 目の前にある箱に入れるのは以前からできていたそうですが、それを離れた場所の箱にも入れられるようになったのですねえ。先生も、「距離が伸びたでしょー」とにっこり。
 これも、先生方の毎日の丁寧な、根気強い関わりのたまもの。
 悠太、最初はお手紙ホルダーを渡されても、何のことか、どうすればいいか意味がまったく分からなかったはずです。
「悠ちゃん、ここだよ、ここに入れるんだよ!」
 通じなくても、毎日毎日、そんなやりとりを繰り返して。最初は先生の手を添えて箱へ。そのうち、なんとな〜くここに入れればいいのかなあ、と悠太も気付いて。
きっとここまでくるのさえ、長〜い時間がかかっているはずです。
 そこからまた、「お手紙をポストに入れるんだ」という目的を持ってポストを探す、そこまで歩いて行って、ポストに入れる。
 悠太にとっては、とっても大きな「できた!」なのです。
 朝のお仕事は、ほかにも、自分のタオルを自分のフックにかけるとかあるのですが、それはかなり高度なので・・・。手先の問題もあるし、今はまだ無理だけど。
 
 やるなあ、悠太。
 悠太にしても光太にしても、「できっこないよ」と決め付けてしまっているところがあります。どうせできない、できない、と思っていたほうがラクなのですね。
 でも、こうやって一つ自分の仕事をできるようになった悠太を見て、大げさに聞こえるかもしれませんが、感動したのです。
 あんたたち、できないことなんてないじゃん。そりゃあ、一つのことができるようになるのに、気絶するくらい長い時間がかかるかもしれないけれど(それこそ、5年、10年単位で)、でも、できるんだ。うん。できるんだよ。日々の丁寧なかかわり、毎日の積み重ねの中で。
 そう思うと、すごーく勇気がわいてきました。
 けど・・・家の中では「丁寧なかかわり」が難しいのですよねえ。二人分手がかかる、時間に追われてしまうのが現実です。着替えひとつにしろ、のんびりしていたら、もう一人が激怒です。ああ、一人につきっきりになれる時間と余裕が欲しい・・・

 そんな中、ただいま光太に「玄関で自分で靴を脱ぐ」を実践しています。
 二人とも、靴も靴下も自分で脱げます。けど、脱ぐ場所が違う〜!靴も靴下も嫌いなので、車に乗るとすぐにリラックス♪と脱いでしまいます。じゃあ、といっていざ玄関ではにっこり、「脱がせて〜」。なぜか自分で脱ごうとしません。
 玄関では母が脱がせてくれるもの、と思い込んでいるんだろうなあ。
 だって、早く脱がせないともう一人が靴のまま家の中に入っていっちゃうし、光太を早くトイレに連れて行ってあげたいし・・・ほんと、「ほら、早く、早く!」なのです。

 そこで、とりあえず悠太を家の中に放り込んでおいて、光太だけ、「靴脱ぐよ!」とやっています。
 これがまあ、通じないこと、通じないこと。
 「靴、脱ぐよ」と言うと、うひゃ〜っひゃっひゃっひゃと大笑い、お母さ〜ん脱がせて〜?と足を私に向けて上げる。
「ほら、靴。自分でやってよ」お母さ〜ん、好き好き、チューっ?
いや、そんなことはいいから。
ようやくマジックテープの部分に手をかける仕草をするものの、「ボク、できな〜い」
嘘をつけ!いっつもあっという間に(車の中で)脱ぐじゃないかー!!
そんなこんなで、靴を脱ぐのに10分かかるありさま。
すんなり玄関で靴を脱いでくれるようになるまで、どれくらい時間がかかることやら。


先週土曜日の夜、早めに寝付いた光太が寝たまま嘔吐しました。
その2、3日前からえらくご機嫌ななめだった光太。
その夜、たまたま夫は斉藤和義のライブへ行って外出中。一人で光太の着替えやシーツを取替えながら、あー、やっぱり体調悪かったんだなあ、気付いてやれなくてごめんねー、と思いつつ・・・本音のところは、「えー、またぁ?かんべんしてくれよー!」ええ、鬼ハハでございます。だって、先月半ばに嘔吐下痢症になって、ようやく回復して、まだそんなに経ってないんだもの。
けど、なんなの、この嘔吐は。ただの風邪?それとも、もしかして、もしかして?

ビンゴ!
光太、翌日曜朝から下痢。まぎれもなく、嘔吐下痢症。2クール目です。
そしてもれなく、悠太も月曜日から発症、激しく嘔吐。ああああああ。
新聞によると、ノロウィルスの感染による嘔吐下痢が、過去10年間で最悪のペースなんだとか。
先月のは、うちの地区(広島市北部)で流行っていたのを、予防接種を受けた内科でもらってきたもの。流行のはしりだったのですが、今回はどうも、時間差を置いてうちの地区より南にある園で本格的に流行り始めたものを再びもらってしまったよう。

ううう。なんてこった。
私にうつったらどうしよう。いや、大丈夫。過去、私が嘔吐下痢でダウンしたことってほとんどないもの。
と思っていたら。
火曜日、母、嘔吐。んがーーーっ!なぜ、なぜ、よりによってこの日なんだー!
この日の夜、子守りを夫に任せて、THE BOOMのボーカル、宮沢和史さんが新しくつくったバンド、GANGA ZUMBAのライブに行く予定だったのです。
このライブがあるから、とすごーく楽しみにして、がんばってきたっていうのに。
しかも、チケットの整理券番号が今回かなりよくって(ライブハウスでやるので、整理券番号順に入場できるのです)、かなりいいポジションが狙えるはず。うはうはだったのですが・・・

なぜ。なぜなんだ。
いや、大丈夫。過去の経験から考えて、嘔吐しても半日休めば、かなり体は動くはずだ。今まで下痢したことはないから、きっと大丈夫。何があっても行く。這ってでも行くんだから!

しかし・・・しんどくても休めないじゃないかー!二人の下の世話、悠太のゲロ、汚れ物の洗濯・・・おまけに、「しんどいから早めに帰ってきてくれ」と夫に打ったメールはなしのつぶて。「今メール読んだんだけど」って、もう夕方なんですけど(涙)。早く帰れー!私は行くんだー!

バタバタしながらも、行ってきました、ライブ。
朝から飲まず食わずでライブハウス、大丈夫かー?と不安だったのですが、なんとかなるもんです。気合。というより自己暗示?私は大丈夫♪平気、平気、と。
ライブハウス最前列で踊りまくってきました〜。
んー、やっぱりライブは最高!
けど、こうしてウィルスは様々なところへ運ばれて行くのですね・・・。知らんぷりしとこう。うん。


2回目の嘔吐下痢は軽いかなーと思っていたのですが、かなりキツイらしく(普段発症しない私がかかるほど)、前回より長引いています。悠太も、お尻がかぶれて真っ赤。パンツ替えるたびに泣くのです。うんうん、痛いよねー。でも私も泣きたいわー。
今回、夫は平気らしく、「ん?お父さんはへっちゃら〜♪」と余裕の表情。これって結構ムカつくもんですねー。
ああ、早くよくなりますように。



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