お手?


 ある日の夕方。
 私が洗濯物を片付けているところに悠太がやってきて、にっこり、ハンガーを一つ持っていってしまいました。針金ハンガーではなく、プラスチック製の先端の丸いもの。まあ、いいか〜、と見守っていました(針金ハンガーなら即没収です)。
 悠太は絵本を見ながら、開いたページをハンガーでとんとん。タイコのばちのようにして、ご機嫌です。

 さて、洗濯物も片付いて、ハンガーもおさめて。悠太の持っていったハンガーを返してもらおうと、「悠ちゃん、ハンガーちょうだい」と悠太の前に座り、手を差し出しました。
 悠太は「ん?」という顔をしながら、ハンガーを持っていないほうの手を私の手の上にぽん、と重ねてにっこり。
 「いやいや、ハンガーだってば。ちょうだい」 悠太は再び手をぽん、と重ねます。
 これじゃ、「お手」じゃん。あんた、犬じゃないんだから。
「だーかーらー、ハンガー、ちょうだい」 悠太、「お手」。
ぶふふ。おバカ〜。かーわいー?
あんまり悠太がかわいいので、からかい半分何度も「ちょうだい」「お手」を繰り返していたら、悠太は新しい遊びと勘違いしたらしく、どんどん目がキラキラになって、「うきゃきゃ〜!」 どうやら、「お手」が楽しかったみたいです(笑)。
結局ハンガーは、悠太の見ていないすきに取り返しました。

これが、悠太なのです。
普通なら、1歳の赤ちゃんですら簡単にできる「ちょうだい」「どうぞ」のやりとりができない。
「ちょうだい」という言葉が分からない、「ハンガー」という物の名前も分からないのだからできなくて当然なのですが、ただ、「お母さんがボクに何かを言ってきているな」、ということは分かる。うーん、なんだろう。よくわかんないや。で、えいっと手を出した。仲良し、握手♪

もー、私にしてみれば、これで十分。いい子じゃのう、悠太は。
もちろん、「ハンガーちょうだい」と言ってハンガーを渡してくれれば言うことないのですが、そんなのできるの、いつのことかしらねえ?
「ハンガーちょうだい」と言って悠太が渡してくれるとはまったく思っていないのですが、いつもこんなふうに、悠太にも光太にもごく普通に声をかけ、会話します。私の言葉が素通りすることのほうが多いのですが(慣れたとはいえむなしい・・・)、この「お手」のように、何らかの形で懸命に彼らなりの「こたえ」を返してくれることもあります。だいたいそれが笑えるんですけどね。

あ、でも、「ちょうだい」と言って無条件に渡してくれるものもあるんですよ。
飲み終わったミルクのストローマグとか、触っちゃいけないと分かっているんだけど、思わず持っていって遊んでいた母の財布とか携帯電話とか。

ストローマグは、「飲んだよー。はーい」ってな感じで渡してくれます。
ずっと小さかった頃は、飲み終わるとすぐそこらへんへぽいっと投げては、カップに残っていたミルクが床にぶちまけられて・・・なんてことがしょっちゅうでした。
それが嫌で、飲み終わるタイミングを見計らって、「はい、カップちょうだい」と繰り返しやっていたら、次第に飲み終わったら渡すもの、と理解してくれたようです。
飲み終わった後に父や母が近くにいないときは、放り投げたりせず、ちゃんとテーブルの上に置きに来てくれます。えらい。それでも、一度手から離れてしまったら、「カップちょうだい」と言っても「?」。分からないんだなあ、これが。

携帯電話や財布は、有無を言わさず「あ、ダメーっ!」と私が取り返すので(笑)、「ああ、これはボクの自由にはならないんだ」と理解しているようです。
財布はともかく、携帯電話は遊んでいてもしばらくは黙認しています。荒っぽい子ではないので、壊すことはありません。たまーにボタンを適当に押してカメラを起動させ、いつの間にか「これはなに?」と思うような芸術作品を撮っていたりします。

「ちょうだい」と言われて手にしているものを渡す。
今それができているものは、時間をかけたり、日常のやりとりなどパターンで覚えたもので、「ちょうだい」という言葉の意味は理解できていません。それでも、少しずつ、パターンでいいから一つ一つ覚えていってくれたらいいなと思います。
お母さんが怒っているから、これ返さなきゃ。あ、返したらお母さんが笑ったぞ。ふーん、こうすればいいのか。結構気付いてくれているのです。

ちなみに、「返して」「ちょうだい」と言われて絶対イヤ!なもの。三角コーナーから盗んだ玉ねぎや野菜のきれっぱし。「ボクの戦利品!」だそうです。玉ねぎ、白ねぎ、青ねぎ・・・ねぎと名のつくものが大好き。もう、いいです。好きにしてください。


次は光太ネタ。
もし、わが子が浴槽の中、仰向けになって口を開けて沈んでいたら・・・びっくりしますよね。
でも光太の場合、これは曲芸。
夏の終わりから、お風呂でお湯に顔をつけたり潜水するようになった光太、どんどん進化して、今ではお湯の中、変幻自在に動き回ることができるようになりました。まるで、胎児が羊水の中、ぐるんぐるん動き回るみたいなのです。光太・・・胎内回帰か?
鼻からお湯が入って痛くないのか?痛いはずなんだけど・・・光太は普通の顔。しれっとしています。見ているこっちのほうが、「ひーっ、やめてくれー!」と思うのだけど。
そんな光太に触発されてか、悠太も最近たまにお湯に顔をつけるようになりました。まあ、悠太の場合はそれほど思い切りがよくない、怖がりなので、きっと光太のようにはならないと思うのですが・・・どうかな?お楽しみです。

光太、潜水中。 悠太、ボクは潜りません。



11月22日はいい夫婦の日。だからどうなんだ、我が家は忘れていたのですが。
ちょっと前、いや〜な夢を見たのです。なぜか、夫が浮気する夢。何かしらの団体の会合の帰り、若い女の子を家まで送っていって、その子をたぶらかしたのです。
私の知るところとなり、私は夫を追い詰めます。「どっちが先にモーションかけたの!?」(そういう問題?)すると夫はへらへら笑いながら、しゃあしゃあと「自分が・・・」と。なんだってー!
夢の中、私、逆上です。夫の首を絞め、どつきまわし、殴りかかり。
そこで目が覚めたのですが、我ながら、自分の逆上ぶりが恐ろしくて。あー、もし夫が浮気したら、私ってこんなふうになるのね。とても冷静じゃいられないとは想像したことがあるけれど、これほどとは。
翌朝、その夢の話を夫にすると、夫は震え上がっておりました(笑)。

夫より5つ年上という負い目がある私。もちろん普段はそんなこと感じないのですが、子育てによれよれになって、どんどんオバさん化していく自分に自信がなくなると、たまに冗談で夫に「お父さんは浮気しないの?若い女の子のほうがいいんじゃないの?」と絡んだりします。
夫は「しない。エネルギーがない」
確かに、仕事と家庭とで、時間もお金も精神力もいっぱいいっぱいだもんなあ。それより何より、悠太・光太に夢中の夫ですから!
とにかく、夫よ、浮気はしないほうが身のためよ。


11月も下旬。ぐっと寒くなりました。
こんな寒い夜、子供と一緒に布団に入る幸せ。
今更ながら、子供って本当に温かいんですねえ。私は人がそばにいると熟睡できないので、今までなるべく子供から離れて寝るようにしていたのですが・・・
 子供たちも暖をとるべく、私にぴとっと寄り添います。左に光太、右に悠太。ぎゅうぎゅうでうっとうしいけれど、あったか、ほっこり〜。ああ、こういうのもいいなあ、と思っていたら。
 ほどなく眠りに落ちた二人。耳元10センチのところ、右から左からいびきのステレオ放送!んがーっ、んごーっ。うるさいっ!
 子供のいびきとあなどるなかれ。ほんと、すごいのです、この子たちのいびきは。赤ちゃんのときからひどかった。思い切り、夫のいびき体質をもらった二人。おまけに、時々呼吸が止まるのです。いわゆる、睡眠時無呼吸症候群というやつ。
 んごごっ、んごっ・・・・・・・・・(その間7秒)ぷはーっ、くかーっ。
 も気になって眠れるものかー!
 結局、二人の間から抜け出し、一人冷たい布団にもぐりこむのでした。やれやれ。




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