双子であること・その2

双子というと(特に1卵性)普通、どんなふうなイメージがあるんだろうか?
とにかく、そっくりで趣味も思考も似ていて・・・って。
私も悠太と光太を産むまでそう思っていた。「ひゃー、見分けがつかなかったらどうしよう?」って。
 実際、今まで出会った双子の人たちはそっくりだった。背格好も顔も瓜二つ。2人のうちの1人と親しくなればちゃんと見分けはつくのだが、それでも感心するぐらいそっくりだった。

 悠太と光太は1卵性のくせに、似ていない双子だ。
 それぞれ、1700グラム、1195グラムと500グラムの差を持って生まれてきたのだが、その体重差のせいで生まれたときから、見た目はまったく違った。
 今も、目・鼻・口のパーツはさすがにそっくりだが、悠太のほうが一回り大きいし、それよりも何よりも見た目の雰囲気がぜんぜん違う。なので、比べてみれば一目瞭然、親しい人は1人ずつを見ても、完璧に見分けることができる。
 見方によって、「まあ、そっくり!」という人もいるし、「あまり似てないね。2卵性?」という人もいる。「年子?」と言われたこともある。
 とにかく、似ていない双子もいるのだ。

双子って、ちょっと特別でいいな。
高校時代のクラスメートが卒業文集に、「将来は双子を産んで・・・」なんて書いていたのを覚えている。
 双子を主人公にした漫画もたくさんあった。私も双子を妊娠したと知って、中学生の頃夢中になって読んだ「サイファ」を思い出して(分かる人いるかしら?)夢をはせた。
 そんなファンタジーの部分のある、双子。

 けれど、双子妊娠のリスクは一般には知られていない。私も、双子を妊娠して初めて、双子・多胎の危険性を知った。そして、身をもって体験した。
 1卵性の双子でもっとも代表的なリスクが双胎間輸血症候群だ。
 1卵性の双子は、おなかの中で一つの胎盤を共有して成長する。そのために、「強い子・弱い子」ができてしまい、強い子は胎盤の血液のみならず、へその緒を通してつながっているもう1人の血液も受け取ってしまう。そうして、体の大きい多血の子、貧血のため栄養が行きわたらず大きくなれない子ができてしまう。

 私も、妊娠20週を過ぎた頃、初めておなかの中の2人に体重差が出てきていること、双胎間輸血症候群の疑いを指摘された。
 そのときのショックたるや、後に子供の障害を指摘されたショックの比ではない。
「無事、生まれてくるんだろうか?」顔は青ざめ、目の前は真っ暗だった。
 光太は30週を過ぎる頃から体重が増えなくなってしまった。おなかの中で大きくなれなず心配された光太だったが、へその緒の血流が悪かったことが原因だったようで、出産後、双胎間輸血症候群の症状はなかったと聞いて心底ほっとした。

 もう一つ、顕著なリスクが早産だ。
 2人の胎児がおなかの中に入るのだから母体への負担は相当なものだ。
母体が最期まで健康に過ごせて、37週以降の正期産で普通分娩で、生まれた赤ちゃんは保育器も入らず順調に・・・そんなお産で生まれた双子ちゃんももちろんたくさんいるのだろうが、その一方で、30週前後、中には27週、28週での早産、出生体重も1000グラムを切って生まれてくる割合も、単胎の赤ちゃんと比べるとはるかに大きい。

 早産で小さく生まれた赤ちゃんも、現代の未熟児医療の進歩で助かる可能性は確実に増えた。
 悠太と光太も、新生児集中治療室にお世話になった。彼らは今の時代だから生き延びることができたのだ。これが私が生まれた頃なら、間違いなく2人は生きることができなかっただろう。

 そこで、はたと思い当たる。
 私と同世代の顔も背格好もそっくりな双子の子。彼らはきっと、さほど危険な体重差もなく、外で生きるに十分な時間をおなかの中ですごして無事にうまれることができた、とてもラッキーな双子だったのだ。
 その影に、早産の末、適切な治療ができる医療技術もなく亡くなっていった命がどれだけいたことだろう。
 最近、双子をよく見かける。双子といっても、さほど珍しくなくなってきている。それは、双子自体が増えたからではないのだ。

 悠太と光太は、現在に生かされている。障害というおまけもついて。
 その、命の意味を考えている。



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