ドーナツ男


 4月に入って1週間後、広島市内の桜もようやく満開になった!・・・と思ったら雨続きの空模様。あっという間に桜の木々は無残な姿に。でも、私の心は晴れ晴れ!なんてったって、新学期が始まったんだもの〜♪
 はー。やっと一息つけます。
 春休み、長かった・・・
 
 悠太・光太の通う園では、春休み、夏休み、冬休みはそれぞれ約2週間。けど、夏も冬も、その期間の半分は夫の盆休み、正月休みと重なるので、私1人で子供の世話をする精神的負担は正味1週間ほどで済むのです。「あと○日で父さんも休みになるから・・・」とそれを励みに私も頑張れるのですが、春休みだけはそうはいきません。
 週の真ん中、水曜日には悠太・光太のおばあちゃんが助っ人に来てくれて、なんとか用事や買出しはクリアできましたが、それにしても、まるまる2週間、平日引きこもり。子供と顔をつき合わさなければいけません。

 子供もさほど困らせることはしないので(感覚が麻痺しているのか?)、実際、家の中私1人で面倒をみることはさほど難しくはありません。けど、
「もうすぐ桜咲くかなあ?」
「・・・・・」
「今日は暖かいねえ」
「・・・・・」
「早く○○先生に会いたいねえ、悠ちゃん」
「・・・・・」
 何を言っても私のひとり言なんですけどっ!ああ、耐えられない。誰か、私と会話してくれー!
 こう、精神的負担が。


 4月7日から始まった新学期。
 悠太・光太は無事年中さんになりました。悠太はどんぐり組さん、光太はさくら組さんです。クラスのお友達の顔も変わり、先生も変わり、お部屋の場所も変わりましたが、さほど混乱することもなく、楽しく通っています。

 初日こそ光太は、状況の変化にかなりびびっていたようですが、1週間経ち、少しずつ慣れてきているようです。
先生いわく、光太よりもちびっ子の年少さんがクラスに入ってきて(K学園は同じクラスに年長さんから年少さんまでの縦割り保育)、自分の目線よりも下でちょこまか動く子供の予測不可能な動きに固まっちゃうそうです。
そんな中でも、よーく周りの様子を見ていて、忙しくしている先生には決して近づかず、ちょっと余裕のありそうな先生を見つけては、すかさず抱っこをおねだりして甘えているようです。
ちゃんと給食も食べているし、園バスから降りてくるときの笑顔は「今日も楽しかったよ!」って言っている。なんの心配もありません。

 そんな光太に輪をかけて元気なのが悠太。
 悠太といえば、じーっと動かずに物に集中して静かに遊ぶ、やんちゃに走り回るのは光太、だったのですが、最近の悠太は家の中でもちっともじっとしていません。長い冬の体調不良の時期を越え、春のスイッチが入っちゃった!?
 夕食時も、以前はテーブルの上にでーんと座って、食事に集中してくれていたのですが、最近は食事時だろうがとにかく走り回って、止まらない、止まらない。
 そうなると、「悠ちゃんがいないのね。なら、ボクが」と光太が安心したように、テーブルの上の特等席に鎮座しています。ここに座っていたら、真っ先にごはんがもらえるもんね。

 園での悠太も絶好調!
 先日の給食では、ギョウザを9個乱れ食い!先生のお皿からもおすそ分けしてもらったそうです。家では遊ぶだけで決して食事にはならないロールパンも2個半食べたとか。
 前年度のクラスから引き続きの担任の先生もいらっしゃるのですが、悠太はそのT先生が大好き!T先生の後姿、背中を見ただけで駆け寄っていくそうです。ずっとT先生におんぶしてもらっていたもんねえ・・・

 
 年中さんになっておもしろいのは、前年度、光太の担任をしてくださった先生が、今年度は悠太の担任になったり、反対に、前年度悠太をよく知る先生が、今年度は光太を担任してくださったりして、悠太・光太二人の違いを先生方が目の当たりにする機会ができたこと。
 先生方口々に、「違いますね〜!」
 もちろん、二人が似ている部分も多々あるけれど(さすがにね、双子ですから)それ以上に二人の違いが、1人ずつとじっくり関わることで、これでもか!というくらい浮き彫りになります。
 ほんと、間違えようがないのです、うちの双子は。


 それはそうと、二人の性格も少しずつ変化が見られます。
 今まで、「人懐っこく、やんちゃでお調子者の光太」「(最初は)とっつきにくく、モノに集中してマイペースで遊ぶ悠太」だと親も思っていました。
 けど、「お調子者の光太」の裏には、人の顔色や状況をいちいち窺う小心者で繊細な顔が、「マイペースな悠太」は実は、でーんと構えて動じない、いったん心を開いた人にはとことん懐を預ける素直さ、鷹揚さがあるようです。
 その「裏の顔」だと思っていたものが、特に光太は最近どんどん表に出てきているような。繊細といえば聞こえはいいけど、ちょっとしたことや変化にギャーギャー泣き喚いて耳をふさいでビクビクして・・・こっちが耳をふさぎたいわ。


左:悠太、右:光太 K学園にて


 
 さて。悠太の目下のブームは、部屋の電気のスイッチをつけたり消したりすること。手が届くようになってうれしいらしく、2階の真っ暗な部屋でもへっちゃら。ちゃーんと自分で電気をつけて遊びます。大抵、そのままつけっぱなしなんですが・・・
 そしてもう一つ、大ブレークしたのがドーナツ!
 朝からドーナツをおねだり、おやつ、そして夕食の後にも、ニコニコとドーナツをしまってある食器棚の前へ手を引いていきます。
 休日などは、ご飯をストしてまで、その後親が「仕方ないなあ」とドーナツを出してくれるまでねばったりします。
 ご飯を食べないのは困りものだけど、少しずつ食べられるものが広がってきてくれるのはうれしいです。ご飯をつくるのが面倒だったりしても、とりあえずドーナツ出しておけばいいか〜なんてラクができたりするし(しないけど)。
 いつも与えるドーナツは安ものなのですが、たま〜に週の途中でなくなってしまって、違うメーカーのちょっと高級なもの、お砂糖でコーティングされていて、絶対こっちのほうがおいしい!と思うものを与えると、食べなかったりするんですよね、これが。
 まあ、味覚の好き好きなんでしょうが・・・
 安上がりな子じゃ。


 4月半ばから、光太、悠太相次いで目のトラブルにみまわれました。
 光太は「めぼ」ができ、その数日後には悠太が結膜炎に。
 光太のめぼはそれほどひどくならなかったので様子を見ていたのですが、悠太が目をこすりだし、目やにも出て、おまけに顔に蕁麻疹も出て、それがあれよあれよという間に顔が変形するほど腫れあがったのを見て、さすがの「えー、病院?いーよー。いずれ治る治る。死にゃあせん」の私も、「これはただごとではない!救急に駆け込むか!?(日曜日に発症したので)」と顔が青ざめました。

 翌日、光太のめぼも気にはなってはいたので、夫も午前中会社を休んで家族みんなで眼科へ行きました。
 悠太・光太、初めての眼科です。
 その眼科というのが、いつも二人が予防接種で利用する小児科の隣。駐車場に車をとめるや、光太は「ここ、知ってる。いやーんっ!」と泣き始めます。悠太は緊張のおももち。
 診察の順番が来るまで、車の中で待機します。
 さて、いざ診察。
 「目やにが出ていないほう」ということで、先に光太の診察。そりゃあもう、泣き喚き抵抗するのですが、なにせ初めてのことで何が起こるのか分かっていません。目薬をさされて、ショック!
悠太は、「ボクは関係ないのかな?」と余裕をかましています。君のほうが主役だからね(笑)。
悠太も診察を受け、目薬をさされました。

診察してくださったのは女医さんだったのですが、とっても簡潔な診察で好印象。
泣き喚き暴れる悠太・光太にも顔色を変えず、不快な顔も見せず(愛想もないのですが)、たんたんと、そして丁寧な説明をしてくださいました。
目薬のさしかた伝授してもらったのですが、1日4、5回入れなければいけない目薬、「寝ている間にさして、回数をかせいでください。こんなに暴れては(起きているときに目薬をさすのは)ムリです」ときっぱり!
ほー。寝ている間にさしてもいいとは、目からうろこでした。
(けど、実際子供が寝ているときに目薬さそうとしても、無意識なのにものすごい抵抗でして、結局、起きているときに夫と二人がかりでさすことになったのですが)

光太のめぼは、うつる心配のないものということで一安心。悠太の結膜炎もさほどひどいものではないとのことでしたが、うつる可能性があるので、2日登園停止になりました。
光太は通常どおり登園。悠太と二人きりの時間ができました。
まったくの二人きりでこんな長い時間過ごすのは、初めて。
登園停止の初日は、光太を送りがてら園庭で遊ばせてもらった後、帰宅。しかし、家の中にいても、光太がいないことになんだか落ち着かない様子の悠太。こう、人の気配が1人少ないというのは寂しいものなのか、私の姿が視界に入らなくなると、「んあーーーーっ!(母さん、どこー!?)」と叫びながら後追いしてきます。私が何をしていても、熱い視線で追っているのです。
後追いなんて、赤ちゃん時代にもしなかったのに(笑)。
夕方、光太が家に帰ってくると、とたんに調子が戻った悠太。光太が見ている絵本をばっと奪い、光太がお約束で「うわーんっ」と泣くと、にんまり。「やっぱり、こうでなくちゃね」という顔に、思わず笑ってしまいました。

お休み2日目も、一緒に光太を直接園へ送って、園庭で遊ばせてもらいました。
ひとしきり遊んで、「そろそろ行こうか?」と手を差し出すと、すんなりその手を握って、とことこ門扉のところへ。あまりにも混乱がないのでびっくり。
その後、ショッピングセンターでデートしました。
光太がいると、こういうお店に入るとパニックになってしまうので、家族でショッピングすることはありません。こんなことができるのも、悠太ならでは。
とはいえ、悠太もお店は苦手です。洋服売り場を通り抜けるときは、こわばった顔ですかさず抱っこを求めてきました。確かに洋服売り場って、見方によってはシュールな光景ですもんね。似たような服がずらーっと並んでて。

そんな悠太を抱っこして、お目当ての子供が遊べるコーナーへ。
ボールプールや滑り台などの遊具があるコーナーで遊びました。20分300円也。あんまり悠太は喜んでなかったけど(笑)、ま、母の自己満足ってことで。
その後、フードコートでは大喜びで走り回り、店先の提灯やソフトクリームの置物に抱きついていました。
「外食にチャレンジしてみようかな〜」ともちらっと思ったのですが、いやいや、まだそれは危険すぎる、と頭をふって。
パンを買おうとパン屋さんに入ったのですが、店頭に並ぶパンすべてをわしづかみにしそうな勢いの悠太に、すぐさま撤収。
でも、そこでも混乱することなく、「そろそろおうち帰ろうか。車に乗るよ」と言うと、納得してくれました。
おんぶすると、ニコニコ。二人して鼻歌まじりにお店を後にしました。
私はもちろん、なんだか悠太も満足そうで。
結局、何をしたといって何もしていないのですが、誰にも気兼ねのない二人っきりの時間がとても新鮮で楽しくて。
いつか、光太ともこんな時間を持ちたいと思いました。
けど、光太と二人だと何ができるかな?

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