ふたりのこども


 光太の風邪が思ったよりも長引いています。
 午前中から昼過ぎにかけては、体温も37度台に落ち着いて笑顔も見られるのですが、夕方からどんどん熱が上がってきて、寝る前には39度台まで上がってしまう・・・というのが今週ずっと続いています。セキ・鼻水もひどく、辛そうです。
 家族みんなで同じ時期にかかった風邪なので、みんな同じ風邪だと思っていたのですが、もしかしたら光太だけはインフルエンザだったのかな?と疑ってみたりもしています。そうだとしても、いくらインフルエンザの薬をもらってきたところで、薬を飲めないのはいっしょだし。

 病院に行った月曜日当日、なんとか夫と二人がかりで薬を飲ませようとしたのですが、ものすごい抵抗にあいました。「薬を飲ませる」という行為自体1年ぶりなのですが、1年前の力とは全然違う!私は指を思い切り噛み付かれてしまい、あまりの痛さに悶絶。薬を飲んでくれたら早く楽になるのに、それを伝えるすべがない情けなさのあまり涙が出ました。
 解熱剤の座薬を入れるのも、5秒で計れる体温計を脇に挟むことすら夫と二人がかり。本当に大変です。


 1人が体調不良で園をお休みすることになると、当然もう1人も、いくら元気であろうともお休み。家から通園バスのバス乗り場までは車で20分。家の目の前で乗り降りするのならともかく、体調不良でしんどい子供を送り迎えに付き合わせるわけにはいきません。
 さて、今回元気なのは悠太。お風呂で水遊びしては1日5回お着替えしたり、クローゼットの中を引っかき回して、クリスマスツリーのオーナメントを発見、部屋中にばらまいたり、キッチンの三角コーナーにあった玉ねぎ、白菜の芯を食べ散らかしたり・・・と、家の中でもそれなりに楽しく過ごしているようです(笑)。ムリに「外に行こう」とは言わないので、それだけでもありがたい。

 とはいえ、彼なりにストレスはたまるよう。
 悠太の目の前に見える主婦雑誌をすべてを抱え込み、「持てない、持てない」と怒ったり、逃げる光太を執拗に追いかけてはつねったり。
 光太はすっかり悠太におびえて、ソファと窓の20センチほどの隙間に入り込んで、悠太が「んああああーーっ!」とか「まんまんまーっ!」と叫ぶたびに耳をふさぎ、頭を抱え込んで縮こまっているのです。
 光太がかわいそうで仕方がありません。けど、こういうときに私が介入しても逆効果。いくら悠太を叱ろうと、光太は自分が怒られていると思い込んで、余計におびえてしまうのです(悠太が光太をつねったり噛んだり、実際に危害を加えようとするときにはさすがにとめにいりますが)。場の空気を読まない叱られた張本人の悠太は焼け石に水だし。

 いくら仕方の無いこととはいえ、ずっと家の中にこもっているのは、精神衛生上良くない!
 ということで、9日の木曜日、急遽、我が家から高速・下道を使って車で1時間のところに住む夫方のおばあちゃんを朝っぱらから呼び寄せ、光太の子守と留守番を頼み、元気な悠太を1日園へ連れ出すことにしました。というのも、その日は親子会という親子行事があったのです。

 本当なら、この日は夫も会社の休みをとって家族みんなで親子会に参加して、終わった後は久しぶりに夫婦でデートするつもりで、ずいぶん前から楽しみにしていました。
 が、夫も月曜日に病院に行くためにすでに休みをとっていた上、夕方から高熱を出す光太を私ひとりで看るのが不安で、その後も残業を断り早く帰ってきてもらっていました(夫も、会社と家の板ばさみでかなりしんどかったはずです)。なので、これ以上仕事を抜けるわけにもいかず、予定はキャンセル。
 でもなあ。光太は外出はムリだけど、悠太は親子会に参加させてあげたいし、私も参加したい。光太も、オニ母やいじめっ子悠太がいない家で1日ゆっくり休めるだろう。
 そう思って、光太を家に残し、悠太と私だけで園へ向かいました。

 しかし、その道すがら、久しぶりのお外に大喜びの悠太と反対に、光太のことを思うと泣けてきそうでした。いつも、悠太と光太、2人がいる後部座席。1人だけを乗せることなど、まずありません。その光太のいない後部座席の、なんと軽かったことか。
ずっと居心地の悪いドライブでした。

 親子会で悠太と一緒にリトミックをしていても、なんだか楽しくありません。ここにいるはずだった光太の笑顔が見えない。仕方の無いこととはいえ、それは予想以上に寂しいことでした。
 結局その親子会も、光太の昼ごはんの準備のため、20分ほど参加して帰りました。
 家に帰ってみると、静かな家で、やさしいおばあちゃんと一緒で光太はニコニコでした。

 いつも、「あー、子供が1人だったらまだラクなのになあ」と思います。
 実際この日も、車をとめた園の近くのスーパーの駐車場から園までの数十メートル、片手は悠太の手をつなぎ、もう一方の手には荷物を持ち、余裕で歩いていくことができました。これがもう1人いたらこうはいかない。荷物はどうする?1人が抱っこをせがんできたら、身動きもとれません。2人とも「抱っこ」と言ってきたら、もう最悪です。 
悠太1人だったらそんな心配をする必要もありません。1人なら、なんとか抱っこで移動も可能ですから。


 正直なところ、私と光太は波長が合うとは言えません。
 子供が複数いる親御さんなら分かっていただけるかと思うのですが、同じ我が子でも、「この子とはなんか、合わないなあ」と感じることってありますよね。
 私の場合、子供が生まれた日、おなかから取り出された二人との初対面の瞬間に抱いてしまった感情が、4年以上経った今でも心のどこかに引っかかっているのです。

 32週という早産で生まれてくることになった二人、宇宙人のような見てくれだったらどうしよう(もちろん、無事に生まれてくれればそれだけでいい、という気持ちが一番だったのですが)・・・そんな不謹慎なことを思いながら上った手術台で、第一子・悠太を見た瞬間、「あ、意外と普通だ。かわいい」ほっとしました。けど、続いて、悠太よりも500グラム少さく生まれてきた光太を見せられた瞬間の、あの戸惑い。
我が子を見て戸惑ってしまった罪悪感。
加えて、光太より半月早く退院した悠太との、母1人子1人の穏やかで密な時間は、さらに光太を置き去りにしてしまいました。

まあ、今となっては、いつもニコニコ・お調子者でみんなにかわいがられる光太よりも、一見とっつきにくくマイペースで、そのかわいさをなかなか理解されない悠太に、より愛情をそそがないと(笑)、みたいなところがあるのですが、それでも、どこかで悠太が私の中でウェイトが重いのも事実です。


そんなこともあり、この日、光太がいなくて感じたとてつもない寂しさは、私にとって予想外の驚きでした。
やっぱり・・・うちは、こどもが2人。悠太と光太、2人いるのが当然で、1人でも欠けるとそれは、うちじゃない。どっちか1人なんて、選べない。
自分の子供なんだから当たり前でしょ!と怒られそうですが、そんなことにもなかなか気付かないのです、私は。


熱が出始めてから6日、やっと光太の夕方からの発熱がなくなりました(まだまだセキ・鼻水はつらそうですが)。
ほっとしていたのもつかの間、「あれ?悠太、熱い?」 熱を計ると38.2度。
・・・・・今度は、お前かよーっ!
 こころなしか、私も夫も風邪の症状がぶりかえしたような。セキがひどい。喉も痛い。
エンドレスじゃん、これじゃあ!

 ああ、本当に、我が家の春は遠い。

風邪ひき光太。悠太の絵本を覗き見。


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