毎年恒例の・・・


 嘔吐下痢症に振り回された2月後半でした。ほんと、毎年恒例。流行ったら必ずかかります、うちの男ども。私は無事のことが多いのですが、夫はいつも一発アウト。このたび夫はほとんど子供と接触もしていないくせに、子供と同時進行でダウンでした。
 今回のは相当きつかったらしく(私は他人事)、なかなかゲリもおさまらず、食欲も回復しませんでした。

 かかりはじめの土曜日はすさまじかった!
 とても喉がかわくらしく、光太は5分〜10分間隔でミルクを飲みたがり、そのたびにお尻から水便をジェット噴射!パンツをはいていないので、そのまま床に水便がびしゃーっと・・・
 体調不良の夫を駆り出さないことには、とても私ひとりでは手が回りません。
 その横で悠太が一気飲みしたミルクを嘔吐、それも布団の上で。今回、吐しゃ物やうんちで汚れたシーツを何回洗ったことか。
 年明けに、洗濯機を乾燥機能付のものに買い換えていたのですが、ありがたや、ありがたや。もう、電気代なんて言っていられない。すご〜く役に立ちました。

 最初の2日間で、子供二人とも一回り小さくなってしまいました。
 やせっぽち光太はさらに肉がそぎ落とされ、そのぶん目が大きく、鼻が高くなっています。悠太も「うわーっ、小さくなってる!」肩、顔のラインが違う!
 なかなか体重が増えないのに、また減るなんて。
 昨年末に体調を崩して以降、全く体重が増えません。普段、どんぶり飯を食べる悠太でさえずーっと現状キープ。あれだけ食べてちっとも増えないのだから、食欲がなくな
ってしまうとすぐにやせ細ってしまうのです。

 この嘔吐下痢症がきっかけで、光太の「お父さん命」っぷりにさらに輪がかかってしまいました。
 光太もしんどくて、我がまま言いたい、甘えたいんだろうなあと思うのですが、夫もただでさえかなりキツイ状態。その上、光太があれやこれや要求してくるのですから、私が見ていても気の毒になるほどです。でもそこは、お父さんの事情・体調なんておもんぱかるはずもない光太、そしていくら私が助け舟を出そうと、光太はお父さんしか見えていないので、どうしようもありません。
 
 そして、また事件が。
 嘔吐下痢症のピークだった2月の第三日曜日(2月19日)のこと。
 深夜2時頃、光太が起きてしまいました。お父さんの布団を引き剥がし、お父さんの手をぐいぐい引っ張ります。光太の体調も体調。うんちされてもたまりませんから、お父さんも「どうしたの?おしっこ?うんち?」と眠い目をこすりながら起き上がります。すると、光太は「ヒーターつけて!」「掃除機かけて!」など、わけ分からない要求ばかり。
 お父さんが何度「もう寝るよ〜。お布団は入ろう」と誘っても、お父さんの布団を蹴り蹴りするわ、引き剥がすわ。最後には号泣!
 もう、何をしても無駄。
 夫も1時間以上はそんな光太に付き合ったでしょうか。けど、いくら辛抱強い夫も、さすがに腹に据えかねた様子。どんどん声音が苛立ってきます。そしてとうとう堪忍袋の緒も切れ、光太をほっぽりだして2階へ上がってしまいました(2階は普段使っておらず、私がたまに1人で寝るための布団が一組あるだけです)。

 びっくりしたのは光太よりも私。夫が2階へ上がってしまうなんて初めてだったのです。いつも、いくら仕事で疲れて深夜帰ってきても、子供と枕を並べて寝ることを楽しみにしている夫。どんなに子供が夜泣きして、ただでさえ短い睡眠時間を削られても、「よしよし、しんどいねえ」となだめる夫なのです。

 光太もお父さんがいなくなってびっくり。「うわーん」と泣きながら必死に部屋中を探します。2階にも追いかけていきましたが、夫は息を潜めて布団をかぶっていたらしく、光太はお父さんを見つけることができなかったようで、しばらくすると1階へ下りてきました。
 お父さんの姿が見えない、すると、あきらめがついたのか、あれだけ今までぐずぐず言っていたのがぴたっと止まりました。時折私や悠太が寝ているのを確認しに来るのですが、私には何も言ってきません。目が冴えてしまったのか、布団には入らず、ソファで絵本をぱらぱらめくる音がします。

 結局その夜、光太が納得して布団に戻ってきたのは3時40分。寒いから、といくら私が布団に誘ったところで、本人が納得しなければ動かないですからね。放っておきました。寒けりゃ、自分で布団に入りに来るだろう、と。とはいえ私も気が気じゃなく、光太が寝たのを見届けるまで起きていましたが。
 布団にもぐりこんできた光太の手足は冷え切っていました。ばかだなあ・・・

 翌朝、何事もなかったかのように、ケロッとした顔で早起きしてきた光太。お父さんを見るなり、「抱っこ〜」。
 けど夫は仏頂面。そりゃそうだよね。眠っているところを起こされて、あれやこれや理不尽な要求をされて。
「もうっ!お父さんは光ちゃん嫌いなの!お父さんと光ちゃんはケンカしてるの!」と光太の抱っこを求める手を振り払います。
けど、余裕の光太はにっこり、この上なくかわいい天使の微笑でお父さんを見つめます。「まあまあ、そんな強がり言っちゃって。本当はボクのことが好きなくせに」。
アテレコするならこんな感じかしら(笑)。
結局その光太の笑顔にほだされる夫。「もー、光ちゃんは〜」抱っこでギューッ。
だめだ、こりゃ。一生悠太・光太のしもべだわ。

この日はたまたま、虫の居所が悪くて夜中起きてしまった。寝られなくなってしまったんだなあ。そう思っていました。しかし、甘かった。
これが、嵐の1週間の初日だったのです。
 この日から1週間、光太は眠れなくなってしまったのです。
 正確に言うと、布団に入れなくなった。

 もちろん、眠いです、光太も。眠いけど、どうしても布団に入りたくない。布団に入れない代わりに、「おんぶで寝かしつけてくれ」というのです。眠くなると執拗におんぶをねだります。親が布団に横になっているのさえ許せないらしく、あらん限りの手をつくして布団を剥ぎ取ろうとします。それはもう、狂ったように泣き叫びながら。

 仕方なく光太をおんぶするわけですが、いくらおんぶしたところで簡単に寝付いてくれるわけでもない、うとうとしたところで熟睡できるわけではない。おんぶに疲れて、ちょっとでも体勢を変えたり座ったりしようものなら、びくっと起きて、絶叫・号泣。また振り出しに戻るのです。

 なにぶん非力な夫と私なので、おんぶを続ける体力にも限界があります。夫も私も疲れているし、眠たい。1時間、2時間とおんぶを続けて、それでも光太は眠れなくて。「ごめんね、もうおんぶできないよ」と光太を背中から下ろして、泣き叫ぶ光太に背を向けて横になる辛さ。
「一緒にお布団は入ろうよ」と言っても、もはや光太は布団を敷いた部屋に入ることすら嫌で、電気も消えた暗闇の中、泣きながらソファの上で絵本をパラパラしているのです。
 夫も私も、光太の泣き声の中、いくら体を横にしても眠ることはできません。
 結局、泣きつかれてようやく眠った光太を布団に運ぶのです。そこまでで、深夜1時。
 ほっとしたのもつかの間、明け方4時すぎにまた、目が覚めた光太の泣き声とおんぶ攻撃で起こされます。夫と交代で朝まで光太をおんぶし続けるものの、再び光太が眠ることはなく。光太も夫も私も睡眠時間3時間。
こんなに夜中寝ていないのに、お昼寝もできないのです。お昼寝の布団を敷くだけでも怒ってしまう。
 そんな日が、数日続きました。

 光太の体内のリズムが、この嘔吐下痢症をきっかけに崩れてしまったようです。そしてなぜか、どういう理由だか分からないけれど、「布団に入らない。おんぶで寝る」という光太の「俺ルール」ができてしまったらしい。

 こんな調子では到底登園もできません。下痢がいくらおさまっても、睡眠不足のせいで食欲もないのです。
 辛かった。しんどかった。
 日中はまだいい。やることがある。光太もぐずりながら、おんぶしながらでも比較的落ち着いて過ごしてくれる。
 けど、夜が来るのが恐かった。また、光太が寝ない。光太が泣く。あの泣き声、叫び声を聞かなければいけないのか。
 最初、おんぶを1時間頑張ってやってから、私はあっという間に腰を痛めてしまったので、もう長時間おんぶしてやることができなくなっていました。
 おんぶしてやれたら少しは光太も楽になれるのに、それができない。それもまた辛かった。
 
 夜が来るのが恐い、という感覚は、悠太・光太が赤ちゃん時代以来でした。そして、私は相変わらずダメな母親でした。
 眠れなくて、精神的に追い詰められているとはいえ、この現状から逃げることばかりを考えていました。
 一生こんなことが続くわけではない。それは分かっているけれど、いつまで?
 先の見えない一夜は、そのときの私にとって永遠ともとれる長い夜でした。

 もう、こんなのいやだ。この子たちの母親をやめたい。どうやったら母親をやめられるのだろう?精神を病めばこんな子育てから開放されるのだろうか?アルコール中毒になって病院送りになれば?精神科病棟で一生暮らすほうが、こんな状態よりましだ。
 そんなことを本気で思っていました。
 光太の首に手をかけないだけで精一杯でした。

 私がこんなふうに「自分が辛い」、と自分が、自分がと頭がいっぱいだったのに対して、私以上に眠れない夜を過ごしていた夫の朝の開口一番は、「眠いねえ」でも「疲れたねえ」でもなく、「光ちゃんつらいねえ・・・」だったのです。夫のこの一言を聞いて、愕然となりました。
 こんなに夫はあの子たちの「父親」なのに、私ときたら、いつまであの子たちから逃げようとしているのだろう。
 なんと、情けない母親なんだろう。


 その後、光太は予想したよりも早く、少しずつ眠れる時間が増えてきました。
少しずつ、布団を敷いた部屋に足を踏み入れるようになり、おんぶをねだって号泣しながらも、あきらめて泣き止む時間が早くなり、1週間後には布団に横になれるようになりました(掛け布団を掛けられるのはずいぶん後までいやがりましたが)。
光太が布団に横になった!
その驚きと喜び。「光ちゃん、自分で布団に横になったよね」「すごいねー!」夫と手を取り合わんばかりでした。
 ああ、これで安心して眠れる・・・


2月の終わりから3月最初の1週間、ようやく元気いっぱい、いつもの笑顔で登園できました。
悠太の体重も元通りになりました。しかし光太は、睡眠不足の時期の食欲減退もたたって800グラム減。あーあ。11月の入園当時には14.2キロあった体重が、この冬の風邪やら何やらで減り続け、今や13キロ。1年間かけてやっと増やした体重が、この何ヶ月かでパーです(涙)。そのくせ、身長はちゃんと伸びている、と。どんどんスレンダーになっていく光太です。

元気になって、やっと春が来る!と思っていたら・・・また、週末から家族全員風邪をひいてしまいました(涙・涙・涙)。
夫、私、悠太はそれほどひどくはないのですが、光太だけが・・・。いろいろあって、抵抗力も落ちていたんでしょうか。高熱を出してしまい、またもや引きこもり生活に入ってしまいました。
病院に行くのも、薬を飲ませるのも、解熱剤の坐薬を入れるのも、すべて夫と二人がかりでないと無理。結局、もらった薬もほとんど飲めないまま。

光太に付き合う形でお家生活を余儀なくされている悠太もストレスが溜まるのか、光太を執拗に追い掛け回し、つねったり噛み付いたりします。おかげで、光太はおびえて部屋のすみで縮こまって号泣です。
精神衛生上、良くないよなあ、こんなの。


我が家の春はまだ遠そうです。

早くこの笑顔が見たいな



育児なんか大キライ!目次へ
ホームへ