おんぶオバケ


 我が家には今、おんぶオバケを一匹飼っている。身長105センチ(推定)、体重15キロ。またの名は、悠太。

 まー、なんなんでしょ、この子は。とにかく、1日中おんぶなのです。冬休み前からどんどんひどくなっています。
 家の外では歩くことは皆無と言っていいくらい。「あー、(何かしらの理由で)お外がこわいのかなあ」と優しく背中を提供していたらどんどんつけあがって、家の中まで「おんぶ」を要求する始末。
遊ぶのに飽きたら、おんぶ。絵本をぺらぺらめくるのに飽きたら、おんぶ。おなかがすいたら、おんぶ。暇になったら、おんぶ。

 もちろん、親の都合なんかおかまいなし。食事中であれ、掃除中であれ、お片づけ中であれ、思い立ったらやってきて、親の手を取り、ぐいっと下に引っ張ります。悠太いわく、「しゃがんで〜」。しゃがむやいなや、背中に張り付く15キロ。
いったんお背中をモノにしたら、ちょっとやそっとじゃ下りません。10分、20分、30分・・・いつまで君を背負っていればいいんですかーっ!
無理やり背中から下ろそうとすると、眉を八の字にして「まんまんまんまんまーっ!」この極悪非道の非人情!という顔をして猛抗議するのです。

こうなると、そろって腕力のない夫と私はつらい。
まだ私は抱っこよりもおんぶが楽なので頑張れるけれど、夫はおんぶが苦手。抱っこのほうが楽なんだそうな。
悠太をおんぶして、体力増強にはげもうかしら。

このおんぶオバケ、特に夫と私二人がそろった日には、特に出没しやすい様子。
平日、私だけのときは、まあ余裕があればおんぶの一つもしてやるけれど、大概「お母さんは今忙しいのよ〜!寄るな、触るな」オーラをいつも発しているので、あまりしつこくはしてきません(いや、そうでもないかな?)。
 おんぶをあきらめた背後で、静かにやっているイタズラのほうが恐かったりしますが。

 先週の日曜日の夜。
 子供は先に夕食を済ませ、さあ次は親の番。ああ、おなかがすいた〜と一口ありついた瞬間、ニコニコ顔のおんぶオバケ登場。夫の手をぐいぐい引っ張って「おんぶ〜」
 夫は、「今、お父さんはご飯を食べているから、おんぶはできません」
 それでもしつこい悠太、「まんまんっ、まんまんっ、まんまんま〜」
 夫、「だ〜めっ!お父さんはご飯!」
 悠太は、椅子に座る夫の背中にしがみついてきました。これが首がしまって苦しいのです。落ち着いて食事なんてできません。
 とうとう夫が怒り、「もう、悠ちゃんやめてって言ってるでしょ!」と悠太を抱きかかえ、部屋のすみにぽいっと置き去りにしました。

 さすがのにぶちん悠太も、お父さんが怒っているのは分かったらしい、けどなぜお父さんが怒っているのか分からない。
ボクはおんぶして欲しかっただけなのに、なんでしてくれないの?(だから、食事中なんだってば!)なんで怒られなきゃならないの?怒っちゃだめーっ!
悠太、逆ギレ号泣。
なおも、夫の手を取り「まんまんっ、まんまんっ」
夫は怒った手前、引くことはできません。悠太の要求を無視。

こういうとき、私は他人事のように傍観しているのが常です。だって、めんどくさいし〜(笑)夫がいるときは、子供に触れることすらほとんどしない私。こっちに飛び火がくるのはごめんです。
けどこのときばかりは、夫が本気でムッとしているようで(笑)、事態が収拾つかなくなりそうな気配に、
「悠ちゃん、お母さんがおんぶしてあげるからおいで」と、食事を中断して助け舟を出しました。夫には、「私がおんぶしてるから、お父さんはご飯食べて」

結構、これはこれで夫のプライドが傷ついたようで(笑)
いつもは冷静沈着かつ寛大な夫、子供のすることに感情をあらわにして怒ったりすることはありません。
感情的にすぐ怒ったり泣いたりする私をなだめて、「子供のことはお父さんがやるから」と助けてくれるのはいつも夫。
「子供なんかきらい〜!」と休日は子供にノータッチのはずの私に助け舟を出されたことに、夫、複雑な顔です(笑)こんな顔する夫、珍しい。
ていうか、なんで子供をおんぶして、交代でご飯食べなきゃならないの。新生児じゃあるいまいし。


さて、本格的に3学期が始まって1週間。悠太・光太は元気に通園してくれています。
体調を崩してずっとお休みの続いた12月のことを思うと、天国のようです。
 少々崩れていた睡眠・起床の生活リズムも元通り。嫌がっていた朝のお着替えも、通園リュックを見せると、嬉々として協力的に。
 光太も、大嫌いなパンツ・ズボンを、ちゃんと自分から足をあげて履いてくれるようになりました。
 園に早く行きたい!という気持ちが伝わってきます。
 園には優しい先生も待っているもんね。悠太は、園でも先生の背中にべったり、おんぶオバケ状態のようです。
 そうそう、悠太はなんと、給食で出たギョウザを7個も食べたそうです。悠太、ご乱心?


 私は、子供がずっと家に居たため年末にできなかった大掃除をぼちぼちやっています。やりたいことは山のよう。でも、あっという間に時間は経っちゃうんですよね。
 押入れの中を掃除していたら、まだ整理していない、悠太・光太が赤ちゃんのときの写真が出てきました。


 こんな頃もあったんだなあ・・・
 今よりも数十倍も大変で、私は毎日のように泣き、怒り、苦しかった時期で、子供をまともに愛し、慈しむこともできていなかったはず。二人には酷いこともたくさんしてきました。それなのに・・・どの写真も、どの瞬間も、悠太・光太は幸せそうに、楽しそうに笑っているのですよ。
 それが不思議で。
 ああ、こんなふうに笑っていてくれたんだなあ。それならば、まあいいや、と。

 な〜んて、こんなふうに感慨にふけっているから、時間がなくなっちゃうのですね。
 遅ればせながら、今年の抱負。
今年は、普段の生活を楽しもうと。いらないものを捨てたり、家の中をこまめに掃除したり、食事の品数を増やしたり(?)家を守る母として、もっと家族が心地よく過ごせるようにしたいと思っています。
去年はね、子供が単独通園するようになって、降ってわいた自分のフリータイムに浮かれすぎて、消費・浪費(お金も時間も)を繰り返すばかりでした。今までできなかったことを、取り返してやろう!と。
ようやく憑き物が落ちました。おんぶオバケはまだ背中に張り付いたままですが(笑)



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