驚き!


 何をさておいても、悠太・光太の大嫌いなのは毎日1回、夜寝る前の歯磨き。
 毎日のことなのに、どうしてこんなにも抵抗するかな〜と思うのだけど、イヤなものはイヤなんだろうなあ。
 いつも、抱きかかえ膝に寝転ばせ、足で体を押さえつけ、拒む両手をガードしつつ、必死で、なおかつ「にこやかに」ヤツらの歯を磨く。夫のいるときは二人がかり。私が体を押さえつけ、くすぐったり、なめたり、そりゃあもう、「楽しい歯磨き」のためならなんでもしますよ。
 歯磨きは1日の終わりの大仕事であり、親子バトルなのです。

 そんな中、1週間ほど前の夜。
 あーあ、かったるいなあ、と思いながらも「歯磨きだよ〜」と子供に歯ブラシを見せ、「おーい。最初は誰からいくかなー」
 すると、悠太が「うへへへ、でへへへ」と笑い、やたらもじもじしながら近づいてきて、そのまま私の膝にすとんと座ったではないですか!
 「え?悠ちゃん、いいの?歯磨きするよ〜」
 悠太は大人しくお膝にごろんして、お口をあ〜ん!
 歯を磨いている間も、何がおかしいのか、「うははは、いやっはっはっは〜」と終始ご機嫌。
 何?どうしたの、悠太!なんていい子なんでしょっ!えらい、えらいぞー!
 私はあっけにとられるやら、うれしいやら。
 いや、でもただの気分、まぐれの偶然かもしれない。

 けど、次の日も、その次の日も、そのまた次の日も・・・歯ブラシを見せると、ちゃんと私のお膝に来てくれる悠太。これはもう、まぐれではない!
 ただ、やっぱり機嫌の悪いときや眠いとき、疲れているときは「イヤー!」と抵抗されてしまうのだけど、ちゃんと歯磨きさせてくれる日のほうがはるかに多いのです。
 それも、本人が納得して「歯磨きするよ」と自分から来てくれることがうれしいし、驚きであり、感動です。

 光太は・・・やっぱりまだ歯磨きはイヤなのね。でも、以前と比べると随分やりやすくなってきました。
 うーっ、絶対子供は虫歯にさせないぞー!

 さて、光太も新しいクラスに入ってはや1ヶ月。
 先月の下旬、月に一度の母子通園日がありました。
 ひとしきり屋上の遊具で子供と遊んで過ごした後、給食の前にお母さんとはバイバイ。その瞬間、光太は・・・お部屋に戻ると給食の準備が始まっていました。それを見るやいなや、すっかり気分は給食モード。自分の椅子にすとんと座り、真剣な顔で「早くごはん下さい!」と無言のアピール。
もうね、お母さんのことなんてどうでもいいらしい。いなくなるお母さんに目もくれないし。もともと、後追いするタイプでもないし・・・ま、いいんだけどね。母、苦笑いするしかありませんでした。

そんな光太、ちょっと体調のすぐれない日が2、3日続いたことがありました。
風邪の症状はないものの、疲れが出たのか、食欲も落ち、いつもの笑顔も見えません。「しんどいよ〜」と言えない光太、何よりも笑顔が健康のバロメーターです。

こういうとき、光太は私に感情をぶつけてくることはありません。「しんどいんじゃ、うわーん!」と私にぶつかってきてくれれば、まだこっちも受け止めようがあるのですが、一人でしんどそうにしています。こんなときは、大好きな抱っこも拒否で、とにかくそっとしておいて欲しいらしいです。

一緒に生活していれば、そんなことはよく分かっているのですが・・・それでも心配なのが母心。ついつい、なだめるつもりで嫌がる抱っこをしてみたり、「大丈夫?」「しんどい?」と顔を覗き込んで声をかけます。
すると、「うるさいんじゃ、あっち行け!」と足や手でぐいっと押されてしまいます。えーん。お母さんは心配なだけなのにぃ・・・

それだけならいつものこと、だったのですが。
母を嫌がった光太が、悠太の手をとって、「ゆうちゃ〜ん、こっち来てボクと一緒にいてよー」
なんと!明らかに、悠太をたよりにしています。でも、残念。悠太はまったく自分を引っ張る光太の手に気付いていません。へらへら〜と笑いながらどこかへ行ってしまいます。
その悠太をなおも追いかけて、悠太の手を引っ張る光太。「ふえ〜ん。ゆうちゃん、行っちゃいや〜!」

あまりにも光太が不憫になり、母、さりげなくフォロー。悠太を「こっちへ行こうね」とソファへ座らせます。すると、光太も安心したようにソファへちょこん。
どうやら、悠太は光太にとって、「何も余計なこと言わずに寄り添ってくれる存在」のようです。
ふ〜ん。母さんより悠ちゃんのほうがいいの。へー。
なんとなく腑に落ちない私。しつこく光太に「光ちゃん、母さんはいらない?」とにじり寄ると、「母さん、あっち行け!」だと。ああ、そうですか。

なーに、「兄弟」みたいなことやってんだか。
でも、最近光太は悠太をとても意識しているようです。悠太の顔を覗き込んではにっこり。悠太がうれしそうにしていれば、光太もなんとなくうれしくなり、悠太のまねなのか、悠太と同じように絵本をぱらぱらめくっています。
その悠太は、光太が興味を持ったおもちゃや本を、光太が手にするやいなや、いつも「それ、オレんだぞ!」とばかりに片っ端から取り上げる、母が見ていてもむっとするくらい意地悪なんですけどねえ。
それでも、悠太がいいのか、光太。こんな優しいお母さんよりも。やってらんねー。


さてもう一つ光太ネタ。
時は前後してしまいますが、先月の終わり、入園して初めての個別療育がありました。
今までも外来での個別療育を受けていたのですが、個別といっても、悠太と光太二人がワンセット。正式に入園したことで今回、初めて先生と光太一人と母での、マンツーマンでの「個別」となったのです。
私にしても、光太一人につきっきりの時間なんてめったにあることではありません。
悠太と一緒では見られない光太の姿が見えるのか。ドキドキです。

当日、その時間。
当然、光太は今から何をするか分かっていません。お母さんと一緒だから「帰ろう」って言うかな?
けど、な〜んにも分からないまま、先生に手をつながれ、ニコニコ、てくてく歩いていく光太。行き先は、個別療育用のお部屋。
部屋の前まで来たものの、今まで入ったことのない部屋に、さすがに「いや〜ん」。身を引いて入ろうとしません。しかし、先生がたくさんのおもちゃが入ったかごを持って部屋に入ったとたん、「え、なになに?なにかいいものあるの?」と、おもちゃにつられてお部屋へすーっと入っていきました。おーっ!

お部屋は、小さな机をはさんで先生と、光太・母で向き合って座るだけでいっぱいいっぱい。かなり小さなお部屋です。光太、ニコニコ、嫌がりもせず着席。
先生はすかさずおもちゃを取り出し、光太の気を引きます。しっかりおもちゃで遊ぶ光太。
先生ともしっかりコミュニケーションをとっています。自分でできないときは、ちゃんと「やって」。しっかり顔を見て、笑顔で訴えます。

いやはや、私、こんなにも集中して「モノ」で遊ぶ光太を初めて見ました。
私、光太は、モノにはまだ興味がないのだと思っていたのです。モノにじっくり取り組んで遊ぶのは悠太で、光太はただ、ジャンプしたり走り回ったり、体を動かして遊ぶことしか興味がないのだと思っていたのです。

上にも書いたように、家の中のありとあらゆるおもちゃは、悠太が独占してしまいます。せっかく光太が手にしても、悠太にすぐ横取りされてしまいます。横取りされるのにも慣れっこで、よほど欲しいもの、執着しているものでない限り、「ふーん、ま、いいか」、とあっさりあきらめてしまいます。
気持ちの切り替えが早いといえば聞こえはいいですが、その、モノに対する執着心のなさが、光太の世界を狭めている気がしてなりませんでした。

家の中、一人にじっくり向き合う時間はありません。
子供の世界は子供の世界、私もよほどのことがない限り(悠太が光太を噛んだりとか、やってはいけないこと、危ないことでない限り)、二人の間に介入することはありません。それって、普通のことですよね。

でももし、じっくり光太一人と向き合っていたら、もっと光太の可能性は早くから広がっていたの?もしかしなくても、光太も、いろんなおもちゃで遊びたかったの?悠太がいなかったら。光太一人だけの時間があったら。
なんだか、複雑。

30分近く、光太はおもちゃで集中して遊んでいました。
おもちゃにあきたら、母に抱っこされたり、先生に甘えたり、光太も「ボクだけの時間」を満喫!

この日、もう一つ驚いたことがありました。
個別療育の途中、光太がお部屋の戸を開けて、外へ出ようとしました。お部屋の外には、大好きなトランポリンのあるホールもあります。大好きな園庭にも行きたいと思ったら行けるのです。「もうおしまい。ボクはお外へ行きます」と光太が思ったら、もうそれを止めることはできません。
「あー、ここまでかなあ。でも、よく頑張ったなあ」と思っていると。
光太、お部屋の外を覗いて、キョロキョロ、ニコニコ。そしてそのまま、すーっとお部屋へ戻ってきて、自分の椅子に座ったのです。
え?光太、お外へ行ってもいいんだよ。好きなところに行ってもいいんだよ。
けど光太は、先生がいて、お母さんがいるこのお部屋にとどまることを自分で選んだのです。なんとなく、ボクはここにいるほうがいいのかな〜、なんて思ったのでしょうか。

光太といえば、「脱走」です。
今まで何度、まわりの状況も目もくれず、思いのままに脱走したことか。去年まで参加していた双子サークルでも、最初の自己紹介のときに、「うちの子は脱走癖があって・・・」と説明したくらいです。
脱走、逃走、逃亡・・・何度それを追いかけ、探し、肝を冷やしたことか。

結局その日は、1時間の個別療育の時間ずーっと、その小さなお部屋で光太は過ごしたのです。自由への扉も開いたまま。

この日の個別療育の前、先生方から「今まで(悠太と)二人のときには見えなかった姿が見えますよ」と言われていたのですが、私は、「うーん、そんなもんかなあ」と思っていました。二人のときと、一人のときと、そんなに違うものだろうか、と。
いやはや、違いました。この違いには驚くばかり。
この4月から集団生活が始まって、そしてそれからの光太の成長を見せ付けられた気がします。


悠太も12月から正式に入園して、早速先週の金曜日、悠太も個別療育の時間が設けられました。
光太との時間の感動が覚めやらず、さあ、悠太はどんなふうだろう?とワクワクしていたのですが・・・こちらは、まあ、ボチボチでした(笑)。
まあね、光太のように、新しいクラスに入ってほぼ一月経って、先生にもすっかり懐いてから始まった個別療育とは比べてはいけないのですが。

シーツブランコに喜ぶ悠太


悠太、まだまだ新しいクラスにも緊張している様子で、新しい先生にもまだ警戒心が残っています。
基本的には悠太も甘え上手なので、新しいクラスの先生にも、抱っこしてもらったりおんぶしてもらったりニコニコしているのですが、甘えるのと「心を開く」のはまた別のことのようです。
光太は、「遊んでくれる大人はみんないい人!みんなボクのことが好きなんだ!」とばかりに、くったくのない笑顔で、ぽーんと相手の懐に何のてらいもなく飛び込んでいく子です。
その光太との、対人意識の差が浮き彫りになったというか。
最初に、ヒトがあって次にモノがくる光太と、まずはモノがあって、そして次にヒトがくる悠太。
それは、悠太・光太のそれぞれの個性なんですけどね。

こんな二人なので、やっぱり光太のほうがとっつきやすく、いろんな人にかわいがられます。悠太は、一見気難しく見えてしまう。でも、いったん相手に心を開けば、光太にも負けない笑顔を見せて、信頼してくれる。これがまた、うれしかったりするんですよね。誰にでも愛想を振りまく光太とは違う味が、悠太にもあるのです。

そう、悠太も、新しい環境の中、緊張感の中、よく頑張ってくれています。
先週一番の驚き。なんと、悠太、給食のスパゲティを2杯半、食べたそうなのです!
いつもは、悠太の食べられそうな、ごはんにかけて食べられるおかずを持たせて、それを食べているのですが・・・
この日、おなかがとてもすいていた悠太、悠太のおかずを先生が温めてくれている間待ちきれなかったのか、目の前にあったスパゲティをぱくっ。
きっと、おいしかったんでしょうね〜。そのままパクパク食べ続けて、おかわり、パクパク、おかわり。スパゲティだけではなく、ロールパンも食べちゃった!

麺類もパンも苦手なはず。でも、それをおいしく食べられたのだから、すごい。そしてきっとそのスパゲティは、悠太の感じるところの「適温」ではなかったはずで・・・
なんだか、すごいなあ。
いろんなこと、どんどん自分でクリアしていってしまう。(まあ、次にスパゲティを食べられるかどうかは別にして)
悠太の頑張り、光太の頑張りが、私に元気をくれるのです。


さて、もう一つおまけの驚きは、初雪、どっかーん!
15日の月曜日、広島地方でも初雪となりました。天気予報でも雪マーク。でもまあ、それほどでもないだろうとたかをくくっていたのですが、朝起きてみてびっくり、窓の外は積雪15センチはあろうかと。
まだ車のタイヤもスタッドレスに替えていないし、身動きがとれません。
で、悠太・光太は園をお休み。ちょうど、夫も体調不良で会社をお休み。
子供にはスキーウェアを着せて、みんなで雪遊びをしました。子供は、融けかけのべちょべちょ雪に微妙な顔・・・
今度は、スキー場に行って、しっかり遊ぼうね!

雪の中でもジャリ遊び。悠太。 散策中の二人。
雪の中にたたずむ光太。 雪にダイビング(転倒?)悠太。




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