悠太と光太の食のこだわり、そして2月の大事件

 悠太と光太はとにかく食に関心が薄い。それは離乳食を始めた頃からの悩みのタネだった。2歳半の今でもスプーン、フォークはおろか、コップも使えない。「自分で食べたい」という気がさらさらないのだ。「食べさせてくれるんなら食べてやろうか」ってな雰囲気ぷんぷんの中、私がせっせと2人に食べさせている。

 2人とも、食事の温度にとても敏感だ。温かいものしか受け付けない。飲み物も温かい牛乳かフォローアップミルクのみ。真夏でもこうなのだから、そのこだわりたるや、相当なものだ。
もちろんアツアツなのもだめだが、ちょっと冷めてしまうともうダメ。「べーっ」と毒でも盛られたような顔をして口から出してしまう。適温の幅がせまいのだ。
 なので、私も食事の温度には神経をつかう。やけどしそうなぐらいアツアツの状態で準備して(そうしないと食事の後半には冷めてしまうので)、それを必死に適温まで冷ましつつ、一口、また一口と2人の口へ運ぶ。

 そんな温度のこだわりがあるので、プリン、ゼリー、アイスクリーム、ヨーグルトなんて見ただけで顔をそむけてしまう。
 光太はそれでも、たまにティラミスやレアチーズケーキなど冷たいものでも、ちょっと口にしておいしいと感じると食べることもある。
 が、悠太にいたっては、口にするものは温かいごはんだけ。温かくないのでお菓子類はいっさい口にしない。ビスケット、チョコレート、ケーキ、スナック菓子など、子供なら喜んで食べるものもいっさい口にしない。

 そんな鉄の意志の悠太に、大事件が起こった。
私が、昼食後にヨーグルトを食べていたときのこと。何を思ったか、悠太がにこにこしながら近づいてきて、むんずと私からスプーンを奪い取ると、そのスプーンをヨーグルトにずぼっとつけて、そのスプーンを自分の口に持って行きヨーグルトをなめたのだ。
 驚きで私の目は点になった。
 自分でスプーンを持って何かを口にするということも初めてなら、ごはん以外のものを口にするのも初めてなのだ。それも、冷たいヨーグルトを。
 ヨーグルトをひとなめして、微妙な顔をしていたが、どうもおいしかったらしい。何度も何度も繰り返しスプーンを口に運ぶ。
 もちろん、うまくすくえないので、あっという間に口の周りも手も服も床もヨーグルトでべとべとになってしまった。けど、そんなことはどうでもよかった。悠太が自分の意思で「食べたい」と思い、ヨーグルトをなめているのだ。
 びっくり、興奮、拍手喝采である。

 昼食後のヨーグルトはすっかり定番になった。悠太もうれしそうにヨーグルトをなめている。
 そして、最近では食事も「自分で食べたい」という意思が出てきつつあるようだ。
 いつもはよく食べる夕食時に、なぜか機嫌が悪くむずがって食べようとしない。そして、私が持っているスプーンにしきりに手をのばしている。
 ためしにスプーンを渡してみたら機嫌も直り、しきりにそのスプーンを自分の口にもって言ったり、私に「あーん」と食べさせるまねをしたりしている。
 少し前の悠太からは考えられない行動に、驚きの連続である。
ヨーグルトおいしい? 珍しく寄り添う二人

 今年に入ってから、ぐんぐん伸びている悠太。
 「気持ちが育つ」というのはこういうことなのか、と思い知らされる毎日だ。
こうしたい、という気持ちが育って、そして行動にでる。親ができるのは、ただそれを見守るだけだ。そして、ちょっと手助けするだけ。
 子供は、ちゃんと自分の力で成長しようとしている。ちゃんとその力を持っている。たとえそれが亀のあゆみだとしても。
 親って、子供の成長しようとする力を前には結構無力なのかもしれない。
 そんなことを、近頃感じている。




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