ブランコ記念日


 11月1日から、光太がK学園に正式に入園できることが決まりました!
 今年4月の入園はかなわず、待つこと7ヶ月。ようやく定員に空きが一つできたのです。
 空席は一つ。悠太と光太、どちらを先に入れるか・・・は、迷うことなく光太でした。君なら安心して手放せる。給食もちゃんと食べられて、通園部のクラスにも馴染んでいるし。悠太は・・・もうちょっと、お母さんと一緒にいようね。

 ただ、光太にも不安はあります。
 今まで、単独通園のときにお世話になっていたクラスとは別のクラスに変わってしまうのです。
 今までのクラスは、小さい子も多く、のんびり、まったり。先生もやさし〜い、おっとり、やわらかいあたりの先生ばかり。
 しかし。
 今度入ることになるクラスは、園でも選りすぐりの、やんちゃで元気なお子様が多いクラスなのです。子供たちに対応する先生方もシャキシャキ。
 光太もやんちゃとはいえ、それはあくまで悠太と比べて、であって、基本的にはおとなしい性格。
 果たして、光太はあの元気なクラスのペースに合わせられるか!?
 私のほうがドキドキ。11月が楽しみです。


さて、先週1週間は、母子ともに風邪をひいていました。熱は出なかったものの、セキ、喉の痛みは尋常ではなく、うー、辛い。
もともと月曜日あたりから、子供はふたりとも軽〜くセキやハナが出ていたのですが、駄目押しは火曜日。この日、子供は園をお休みさせて、光太の入園に必要な健康診断書と検便証明書を小児科に取りに行ったのです。
小児科の待合室は、風邪ひきさんでいっぱい。あー、これはきっと、風邪菌をもらっちゃうなーと思っていたら、案の定、光太と私が思い切り風邪をひいてしまいました。
(悠太は、家でおばあちゃんとお留守番をしていたので、それほどひどくならずにすみました)

 もー、のたうちまわるほど、喉が痛い。
 これ、大人の私でもこんなに辛いんだから、子供はもっと辛いんだろうなあ。「痛い」「しんどい」と言えない光太と悠太。機嫌が悪かったり、ぐったりしていたり、表情からしか、状況を推し量ることはできません。
 「どこが、どんなふうに」痛いのかが分からない。分かってやれないのが辛いです。「ゆっくり休んだら、治るからね」と慰めも彼らには伝わらない。
 子供にとっては、つらい、しんどい状況がいつまで続くかわからない、不安だろうなあと思います。
 その不安を取り除くすべが分からない、何もしてやれないのが辛い。

 結局、火、水、木と3日間園をお休みしました。
 火曜日はまだ、体調もそれほど悪くなく、おばあちゃんも来てくれていたので、ちょっと公園に行ってみたり、と余裕だったのですが、水・木の2日間は。
 子供と私、3人で家の中。どーしよー・・・

 熱もないので寝込むほどではない。かといって外にも出られない。夏場だったら、家の中にいても、お水遊びを適当にさせておけば間がもったのですが、さすがにもう水遊びはさせられない。
 私が家事をしているうちはいいのですが、それもひと段落して、よっこらしょ、と腰を下ろすと・・・うーん、何しよう。
 子供も、「絵本も見飽きたし〜、おもちゃも別に興味ないし〜」と、なんとも暇を持て余しています。
 光太はまだ「寝ときんさい」と放っておく、いや、静かにさせておけばいいのですが、問題は悠太。悠太も少し風邪ぎみとはいえ、体力、気力、食欲とも十分で、園に行っても支障はないはずなのに、母と光太のまきぞえを食って家の中にいなければならないのです。

 結局、シャボン玉を吹いたり、小麦粉で粉遊び&粘土遊びしたり。小麦粘土で集中して遊んでくれたのはいいけれど、あまりに気に入って手から離さず、ひからびた小麦粘土のかけらが家中にちらばって、めちゃくちゃ。片付ける気力もない。

 それでも間がもたず・・・
 困ったときのスキンシップ遊び(笑)。スキンシップ、悠太も光太も大好きです。
抱っこ〜、おんぶ〜、飛行機ぶーん(腰が痛くなるのであまりできないのが難点)、お布団に寝転がった子供の体をくすぐったり、赤ちゃん体操もどきをやってみたり。いまだに、喜んでくれるんですけどね。
ほんと、こういうとこ、まだまだ赤ちゃんなんだなあと思います(体はでかいけど)。
体をさする私を、ニコニコ、うれしそうにじーっと見つめてくれます。

こんな遊びを思いつきました。
私の人差し指を立て、それを蚊に見立て、「ぷぅ〜ん」と言いながら指をあっちこちへやりながら、最後に子供の体へちくり!
これだけでキャッキャッと声をたてて喜ぶのですが、この遊びの目的は、子供が私の人差し指を見ること。指を見て、その動きの行方を予測する楽しみを感じて欲しいのですが・・・自分と向き合う私の顔ばかりをうれしそうに見つめるばかりで、なかなか指先を見てくれない。うーん。
ふと、私の視線を悠太の目から、私の人差し指の指先へと移してみました。私も、自分の指先を見つめながら「ぷぅ〜ん・・・」と人差し指を動かすと・・・おおっ!悠太も私の人差し指を見ている!
母の視線の先にあるものに気付いてくれた!「お母さんは何を見ているんだろう?」と思ってくれたんですねえ。
これも、共感する力。
ちょっとした感動でした。


変に体力を持て余した引きこもり2日間を経て、金曜日、やっと子供を園へと送り出しました。
まだまだ体調は万全ではなく、しんどそうなセキも残っていましたが、もー、私も子供も引きこもりは限界。すっきりした顔をして起きてきた子供に、「よし、今日は行くぞ!」

園バスを見るなり、「キャーっ!」物凄い勢いでバスに向かって走り、目の色を変えて意気揚々とバスに乗り込む悠太・光太。よほど、園に行きたかったんだね・・・(笑)
いつ、「迎えに来てください」と連絡があるかドキドキしていましたが、結局帰りのバスからニコニコ笑顔で降りてきた二人を見て、ホッ。
少々しんどいながらも、楽しめて、給食もちゃんと食べられたようです。
よかった!やっぱり元気が一番!


久しぶりに夫もお休みをとれた土曜日、大芝公園交通ランドに行ってきました。普通の公園ですが、ゴーカートに一周150円で乗れるのがうれしい。
以前は、ゴーカートのエンジン音におびえていた悠太・光太も、すっかり乗る楽しみを覚え、やる気まんまん、頬を切る風にニコニコです。
2回乗った後は滑り台で遊んだり、お気に入りの交通標識を見たり。

ひとしきり遊んだ光太、じーっとブランコを見ていました。光太もやりたいのかな?でも、ブランコは人でいっぱい。光太の気持ちを計りかねていました。
すると、人がいなくなったのをちゃんと見てから、光太、ブランコに近づいて行きました。

光太は、ブランコにまだ一人で乗れません。でも、ブランコは大好き。いつもは、私か夫がブランコに座り、その上に光太が座る形でブランコの揺れを一緒に楽しんでいました。
何度も、「一人でやってごらん」と試してはいたのですが、なかなかこれが難しい。
普通の子供なら、2歳や3歳にともなると、当たり前のようにブランコに乗れるようになるのですが、悠太や光太のような子供を見ていると、この、ブランコに乗るということがいかに難しく、実に複雑なバランス感覚のもとで成り立っているということがよく分かります。 
チェーンを握る手の力、腕の力、背筋、腹筋・・・それらの力の絶妙なバランスによって、あの、背もたれもない、お尻が半分も乗るか乗らないかの小さな板の上に座ることができるのです。

きっと、普通の子なら、そんなバランス感覚は自然に育つもの。
けど、基本的に脳機能の障害である自閉症の子供にとっては、長い経験とチャレンジの上でようやく獲得できる力なのです。

さて、この日の光太はひとりでやる気まんまん。
そうだよね。みんな一人で乗ってるもんね。それをちゃんと見ていたものね。ボクも一人でやってみたい!って思うよね。
ブランコにまたがる光太。
それを、「ほら、こうやって座って。お手手で握ってごらん」とチェーンを握らせます。すると、いつもは背後にひっくり返りそうになって、どうしても座れなかった光太が・・・ちゃんと、バランスをとって座っているではないですか!


恐る恐る、「光ちゃん、いくよ〜」とその背中を押します。
大丈夫。ちゃんとチェーンを握って、揺れるブランコでもバランスをとっています。
「やったー!!お父さん、見て、見てーーー!!」
もちろん、夫はその光太をカメラで激写。

半ば緊張した面持ちですが、ニッコリ、うれしそうな光太。光太のすぐ横のブランコで、ちょっと大きなお姉さんが立ちこぎをしているのを「うわ〜、すごいなあ」と羨望のまなざしで見つめています。
いつかはああやって、自分の力でしっかりこげるようになるといいね。

また一つ、光太の「できること」が増え、世界が広がりました。
やったー!できたー!という感覚は、光太の中で大きな自信になったことでしょう。光太、めまぐるしく進化中です。そのスピードに母は追いつけません(笑)。「できない、できない」ばかりだったことが、「あれもできる、これもできる」に。
なんだか、うれしくて、うれしくて。

ちなみに、悠太は・・・夫いわく、「(ブランコに乗れるのに)あと3年はかかるだろう」(笑)確かになあ。
まあ、それはそれでいいとして。悠太は悠太、光太は光太。それぞれの成長のスピードがあり、できることも、得意なことも違うのですから。
ともあれ、4歳3ヶ月の光太、10月29日は人生初・ブランコ記念日となりました。

「ボクは滑り台。」悠太

最近、自分の以前書いたものを読み返してみて、「ああ、こんな(些細な)ことを、やった、できた!と大喜びしていたんだなあ」と思います。今となっては当たり前のことでも、そのとき、そのときは大きな感動だったのです。その気持ちをすっかり忘れてしまっているんですね。
きっと、このブランコ記念日も、あと数ヶ月もすれば日常のなかに埋もれて忘れてしまうかもしれません。
けど。だから。こうやって記録に残しておきたいと思っています。
これからまだ先の長い光太の人生の、大切な一日、幸せな一日に感謝をこめて。



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