小さな運動会



 10月ももうすぐ終わり。めっきり秋らしくなってきました。道行く人がジャケットを着ている日も、子供と私は半袖で過ごしていたのですが、10月なかばを過ぎ、ようやく長袖が登場するようになりました。
 最初、子供たちは久しぶりの長袖に戸惑っていましたが、今ではすっかり気に入った様子。袖が長いから、とせっかく袖をまくってやっても、「やめてください!」とばかりにまくった袖を元に戻し、あまった袖口をはむはむ、くわえています。
 これ、なぜか二人ともやるんです。おかげで、袖口がいつもびっしょりです。


 秋は、どうにも切ない気持ちになりますよね〜。何かが物足りない、というか。ぬくもりが恋しくなる、ときめきが欲しい。あ、うちは「ぬくもり」は十分ですけどね。抱っこ坊やが二人。十分すぎて暑苦しいくらいです。
 足りないのはときめきかー。
 ときめき・・・ないなあ。ときめいたり、何か夢中になれるものが欲しい。子供のことを9割方占めている頭の中、からっぽにできるほど、何かに夢中になりたい。
 だもんで、できもしない編み物を無性にしたくなったりします。あれほど無心になれるものもないと思うのですが。

 韓流ブームもまだ続いていますが、ヨン様にああも夢中になれる人たちがうらやましくて、私もヨン様にとち狂えるかしら、と「四月の雪」も観に行ったけれど・・・だめでした。素敵な人だとは思うのですが、それだけ。およびでない。

 夫にときめいたのは遠い日のこと。
 夫のことを愛しているし、私のことを一番理解して、愛してくれているのもまた夫だと思うのですが・・・夫にときめくか?と言えば、ひゃーっひゃっひゃ。片腹痛いわ。
 夫は、恋する相手ではなく、もはや親友であり、同志。子供のうんちやしっこにまみれた生活の中に、ときめきなんてありえないのです。

 それまでラブラブだった夫婦が、子供をもったとたんに所帯臭くなってしまうのは、絶対にこの「うんち・しっこ」のせいだと思うのです。恋する二人にとってはタブーだった下の会話が、赤ちゃんが生まれたとたん、生活の中心にどーんとおかれてしまうのですから。
 「あー!おしっこかけられた!」「うんちが手についた〜」
 そんな中で、ときめき、って言われても、ねえ。
 お互い名前で呼び合っていたはずが、いつの間にか「おとうさん」「おかあさん」になっていたり。きっとそれが自然の流れで、私も夫と「おとうさん」「おかあさん」と呼び合うのは決してイヤではないんですが、ちょっと、それだけでは寂しいかも。
 
 夫と結婚する少し前、高校3年のときのクラス会がありました。
 そのとき、すでに結婚して子供もいた一人のクラスメートが言っていました。「結婚して何が一番つまらないかって、次の恋ができないこと」
 夫と結婚直前・ラブラブ絶好調だったその当時は、「なんでー?!一番好きな人と結婚して、ハッピーエンドなのに、次の恋なんて必要ないじゃん!」と思っていましたが、今なら、彼女の言っていた意味がよ〜く分かります。
 夫以上の人はどこにもいない、っていうのは十分承知なんですけどねえ・・・


 ま、そんな私のひとりごとはおいておいて。
 21日の金曜日、悠太・光太の初めての運動会がありました。
 運動会といっても、悠太・光太が在籍する、プレ園生・待機児さんのうさぎ組さんだけの小さな運動会。それでも、園庭には万国旗がはためき、テントも張られ、10組以上の親子が参加して、なかなかのものでした。

 しかし・・・
 普段とは違う雰囲気を察して、しょっぱなから現実逃避の悠太。砂場に張り付いて、延々と砂遊びをしています。大好きな砂遊びですが、いつもはそこまで執着することなく、「抱っこしようか〜」と手を差し出すと、すんなりおしまいにできます。
けど、この日の悠太は鉄の意思にて、誘いの手を拒絶!きっと、「何かわけの分からないことをやらされる」と思っているんでしょうねえ。
何度か「強制撤収!」と抱きかかえて、みんなの輪の中に入れようと試みたのですが、「ギャーッ!」と泣き叫んで嫌がり、抱っこの手をすり抜けて砂場に戻ってしまいます。
 みんなが楽しくリトミックしているのに、悠太だけぽつんと一人。私もそのそばでぽつん(光太は先生におまかせしていました)。
あーあ。

ボクは砂場にいるよーだ


プログラムは進み、かけっこです。
10メートルもない距離を、ゴールにお母さんが待ちうけ、子供はお母さんめがけて走っていきましょう!というもの。
趣旨どおりに無事ゴールできた子もいたのですが、なにせ、ひと癖もふた癖もあるK学園の子供たち。元気いっぱいに力走して、ゴール!と思いきや、目の前のお母さんではなく(わざわざ見比べて選んで)先生の胸にとびこんでいった子や、まるで闘牛士と牛のように、お母さんのすぐそばを全力疾走ですりぬけてしまった子など、爆笑もののかけっこでした。

さて、うちのお二人さんはというと。
ぐずる悠太をなんとかスタートラインに立たせたものの、名前を呼べど、手をふれど、まったくわけがわかっていません。「よーい、どん!」と先生が手を離すと、その場に座り込んでしまい、動く気配がまったくなし。
結局、先生に抱きかかえられゴール。そしてそのまま砂場へ直行。
あまりの参加意欲のなさに、すっかり私は気分がブルーです。

けど、その後の光太は頑張ってくれました!
スタートとともに先生に手をつながれて(わけも分からず)走り、ゴールの3、4歩前で先生が光太の手を離すと、一瞬動きが止まったものの、目の前の母に気付き、そのままトコトコ歩いて母のもとへゴールしてくれました。
初めてのかけっこ、光太、花マルです!

次のプログラムは「アンパンマンにタッチ」。
園長先生が、アンパンマンのかぶりものをして、赤いマントをはおって登場。
小さなカートに子供が乗って、親がそのカートを引っ張りアンパンマンのところまで行って、子供はアンパンマンの手にタッチしてお菓子をもらい、そのままUターンしてゴール、という競技です。

キャラクターの認識がまだない悠太・光太、アンパンマンにも喜びません。家の中にもアンパンマンはあふれているのにねえ・・・
と、光太がアンパンマン・園長先生に気付き、何を思ったか、ふら〜っとアンパンマンの真正面に立ち、お顔をさわさわ。「何ですか、これ」といった感じ。
よし、アンパンマンに気付いて興味を持ったぞ!
そのまま光太、競技に参加できました。

砂場の悠太は自分の世界に入り、もう、らちがあきません。
それでも何とか参加させたい私、またもや泣き叫ぶ悠太を強制撤去、カートに乗せます。すると、悠太の顔が一変。乗り物好きの悠太の出番です!
ニコニコでカートに乗って参加。ゴールすると、今度はカートから降りるのを拒否!もっとやれ、もっと走れ!と・・・
もう、イヤ。あんた。

次は、大好きなパラバルーン(カラフルな大きな布。それをふわーっと持ち上げてドームをつくったり、揺らしたりします)が登場。
またもや、悠太の出番。あの仏頂面はどこへやら、ニコニコ、ゲラゲラと笑いながら大はしゃぎです。
光太も好きなはずなのですが、それよりも、そろそろ疲れた〜、おなかがすいた〜、といった感じで、みんなと距離を置いて、クラスのお部屋を覗きに行っています。光太は、いつも単独通園のときに入るクラス・たんぽぽ組さんが大好き。けど、この日は母子通園日で、みんなお外の公園に行ってしまっていて、誰もお部屋にいません。
光太、困惑顔。
おなかすいたなあ。そろそろお昼ご飯なのになあ。みんなはどこかなあ・・・

午前の部は終了。
家から持ってきたお弁当を、お外でみんなと食べる、ということだったのですが、ちょっと外で食べるのは、悠太・光太にはハードルが高いかなあ、ということで(遊具や砂場に気をとられて、食事どころではないだろうし、第一、電子レンジが側にないと。お弁当の冷めたものなんて食べられません)、我が家だけ、お部屋で食べさせてもらいました。

カートに乗る光太 シャボン玉にウキウキ悠太


お弁当、といっても、光太はお弁当箱いっぱいの白ごはんに、ふりかけのみ。日の丸弁当以下です(笑)。だって、これしか食べないんだものー!そりゃあ、喜んで食べてくれるのなら、ミートボールやウインナー、玉子焼きも入れますよ。けど、食べられないものを入れても仕方ないし。
悠太のお弁当も、お弁当箱いっぱいの白ごはんに、別の容器に入れて持ってきた大好物のマーボー豆腐(前の晩の残り物)。それをレンジで温めて。
もはや、お弁当とは言えない気がするのですが・・・
ずっとお外にいて、さすがにおなかがすいていた二人。一心不乱に食べます(笑)。食べられてよかった、よかった。

午後からは、のんびり、まったりシャボン玉を見て、自由に遊んで、小さな運動会はおしまいです。
最後に、とってもかわいいアンパンマンのメダルをもらいました。
ご褒美、という意味もわからない悠太・光太。首にかけられるのを嫌って、外し、しげしげとメダルを眺めて、がじがじ噛んで、もういい、プイッ。
ま、いいか。いつかメダルをもらう意味がわかるといいね。
悠太・光太の人生初のメダル。私のほうがうれしくて。
大事にとっておくからね。

がんばりました アンパンマンメダル 


ちょっとおまけの話。
この日の運動会に参加したかったけど、どうしても仕事が忙しくて来られなかった夫。
普段は夫のお弁当は作らないのですが、この日は気持ちだけでも一緒に、と私のものとおそろいのお弁当を夫にも作って持たせました。

 その夜遅く、帰宅した夫。
「あのね、お母さんのお弁当、さっき食べたの。(家から持たせた)お弁当があるの忘れてて、いつもどおり会社のお弁当食べちゃったの。」
 と悪びれもせず言うのですよ。
 なに、それ。
 お弁当に何を入れようか、何日も前から考えて、愛情も手間ひまもいっぱいつまったお弁当だったのです。
 それを、あっさり「忘れてた」、と。立ち直れないですよ、ほんと。
 最悪。最低。
忘れてた、ごめん!と本気で平謝りするのならともかく、それを笑い話にできちゃう夫の人間性を疑います。

夫にとっては単なる腹につめこむだけのご飯、腹がいっぱいになればそれだけでいいのかもしれません。作り手の気持ちなんてちっとも分かっていない。夫にとってはそんなの、どうでもいいことなんでしょうね。
いつものご飯も、普段会話をろくにする時間もない毎日、私からの愛情やメッセージがいっぱいつまっているのです。それを感じてくれているんでしょうか?
(もう、復讐ですよ。みんなにばらしてやる!)
 ほんと、男ってのは・・・悲しいです。
 
 こうして、どんどん「ときめき」から離れていくのですね、夫婦って・・・




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