凄惨な光景


 1週間の単独登園は、子供も混乱することなく、無事終わりました。毎日、園バスに乗れるのがうれしいのか、ニコニコでした。
 けど、これも先生方の協力があってこそ。
 食事の心配だった悠太のためには、本来の給食のメニューとは別に、悠太の食べれそうなもの(カレーなど)を用意してくださいました。
 そのおかげで、食べようとしない日もあったものの、ちゃんと食べ物を口にできた日もありました。口にした量は少なめだけど、家とは違う場所で食べられたことは、大きな進歩です。なぜか、家では食べさせたことのないにゅう麺を口にした日も。

 自分からお皿の中に手を突っ込んでなめてみたり、食べ物で遊んで、手についたものを服や自分の頭になすりつけ・・・たりしていたんだろうなあ。服はカレーのしみがいたるところにつき、全身から焼きソバ臭がただよっていることもありました(笑)。
髪についたカレーの匂いは強烈で、シャンプーをしたくらいじゃ落ちないの。
ゆうくん、くさ〜い!と言いながらも、食べ物に見向きもしなかった悠太を思えば、食べ物に興味を持ち、たとえ遊びでも手を出すようになってくれたのは、喜ぶべき進歩なのです。

(悠太の食事のことを気にかけてくださって、わざわざ、自閉の子の食事の対応についての本のコピーを送ってくださった、東京のAさん、ありがとうございました!一緒に考えてくれる仲間がいるのは、ほんとに心強いです)

 さて、いつもより時間のできたこの週、私もめいっぱい楽しみました。
 まず、子供たちの秋物の服を買って。もう、毎年毎年、新しいサイズを買わなくてはいけないのです。予想以上に大きくなる子供たちに、財布がいたい。
 とか言いながら、「あれもかわいい、これも欲しい〜!」と、買いまくりました。
 その秋物を、衣装ケースに整理してみると・・・あれ、こんなに買わなくても良かったかも(汗)。まだ着れそうなものあるじゃん・・・えへへっ。

 とまあ、フリータイムを楽しませてもらい、子供をお迎えです。
 最悪の事件は、火曜日のこと。
 バスから降りた子供を車に乗せ、家へと向かっていました。
 すると、後部座席で、「う、うーーーーーんっ」と、光太があやしい声を。「や〜だ、光太、うんちー?くさ〜い」と笑いながら運転する私。しかし、くさい。くさすぎる。なぜだ!?
 はっと後ろを見ると、マットの上、そこには、どーんっ!と「ブツ」が転がっているではありませんか!
 え、なんで!?とそこで初めて光太を見ると、光太、なんと、ご丁寧に靴・ズボン・パンツを脱いでいたのです。
 うんちの次は、おしっこでしょう!とばかりに、光太、引き続き放尿!
 しゃーーーっ、びちびちびち・・・車の中で描かれる放物線。
「うあああああーーーーっ!」
 排泄の失敗は怒ってはいけません。けど、けど。神様、叫ぶことはお許しください。
 
油断していました。最近は紙パンツをはいたままでも、おしっこできることがあった光太。けど、こいつの基本は、排泄時にはズボンもパンツも脱ぐ!
いつも、家に帰るまで、うんちもおしっこも我慢して、我慢して、そこまで我慢しなくていいよー、紙パンツの中にしてもいいよー、と言っても我慢していた光太。
今日は・・・我慢できなかったんだね(涙)
うう、いいよ、いいよ。

しかし、ここからが本当の地獄。
信号待ちのすきに、とりあえず手の届くうんちを、ティッシュでつかんで前方へ持ってくる。子どもが踏んづけたら、大変。
でも、ああ、手が届かないところにも・・・
と思っていたら、そのうんちの上に、悠太がどっかり座っちゃったーーーー!
ああああああーーーーっ!
「悠太、なにやってんの!うんち踏んでるよー!」
もちろん、そんなこと言われても悠太は分かりません。
うう、くさい、くさいっ!

道端に転がっている犬のうんちを、誤って踏んづけちゃったことがありますか?
私は自慢じゃないですが、3度あります。犬のうんちって、そこに転がっているぶんには、それほど匂わないんですよね。けど、踏んづけた瞬間、その匂いが、ぷわーーーっ!と広がるのです。あまりの臭さに、涙が出そうなほど。
実際、私も泣きながら、犬のうんちのついた自分の靴を洗いました。

人間のうんちを踏んづけちゃう人ってのもあまりいないと思いますが(あ、いた。うちの夫・笑)、その匂いもまた強烈、猛烈、激臭です。
悠太のまあるいお尻で踏みつけられた光太のうんち。そこに、悠太のぶちまけたサッポロポテトがミックスされて、撤去不可能な状態に。うんちの匂いと、サッポロポテトの油っぽい匂いがまざった車内は、まさに毒ガス室。
窓を開ければ、片側3車線の交通量の多い道路からは排気ガスがなだれこんで、さらに状況は悪化。
やばい。やばい。まじで、死にそう。

悠太のズボンのお尻には、うんちがべっちょり。そのお尻で、ああ、今度はシートに座っちゃったー!シートをあっちこっち、移動する悠太。うんちが、シートのあちこちに付いていく。
ノーーーーーーーッ!やめてくれ、ゆうたーーーっ!

光太は、神妙は顔つきでうんちから離れています。って、あんた、やりにげかい!
悠太、悠太。なんであんたは、自分のうんちは隠そうとするくせに、自分に身に覚えのないヒトのうんちには、そう無頓着なの!

息も絶え絶え、帰宅。ほんと、吐く寸前。
うんちまみれの悠太の服を玄関で脱がせて、まず、車をどうにかしなきゃ。
後部座席は、足元のマットも、シートもうんちだらけ。あまりにも凄惨なその光景は、気力を萎えさせます。
泣きそう。いや、泣いた。涙ながらに、掃除しました。
うう。なんで、こんな一瞬でストレスのレベルがマックスになっちゃうの。

やっぱり、子供なんか大きらいだー!!


さて、キタナイ話はここまで。
やっぱり最後はさわやかにきめなくちゃね。
ということで、週末・土曜日は、母の大好きな倉敷チボリ公園へ行ってきました。
真夏の遊園地は暑い!ので、秋が来るのを心待ちにしていたのです。しかし、10月初日のこの日は、暑かった!福岡県などでは、10月としては史上最高の33度を越えたそうですね。
広島でも、午前中家を出た時点で、車の温度計は30度を越えていました。

この日のチボリ公園、土曜日だというのに、とてもすいていました。
おかげで、乗り物に乗る待ち時間も全くなし。好きなものに好きなだけ乗ることができました。「並んで待つ」ことが理解できず、抱っこやおんぶ、果ては押さえつけて待つという苦痛の時間もなく、ラクちん!いつもは、これで親はへとへとになるのです。
子供の念願だった、人気のチボリ鉄道二度乗りも難なくこなせませした。

光太はニコニコしながらも、早起きだったせいか、お疲れモードでしたが、悠太は乗り物を満喫!ひとつの乗り物が終わって、「おしまいだよ」とシートベルトを外すと、「まだ乗るの!」と自分でシートベルトをはめようとします。
ある程度体を拘束するシートベルトですが、ベルトをしたら乗り物が動く、という順番がちゃんと分かっているんですね。賢〜い!
自分でちゃんとはめれないと思うと、隣に座っていた母や父に、「ベルトして!」と泣いてせがみます。思わず笑っちゃう、かわいい。
でも、同じものを二度乗れば納得だったようです。

暑かったので、二人の大好きなお水遊びも存分にさせました。もちろん、着替えも準備万端です。さすがに10月ともなると、お水遊び用の着替えを持ってくる人もいないようで、悠太・光太を見たほかの子供が、「ボクも遊ぶ〜」とねだっても、「着替えがないからダメよ!」と言われていました。

お水遊びスペースには先客が一人いるだけで、悠太・光太と同じ年頃の女の子でした。
その女の子、最初は服が水に濡れないように、スカートを両手でたくしあげ、慎重に遊んでいました。
けど、後から来た二人が、それはダイナミックに遊んでいくのですよ。四つん這いになり、水を口に含んでぴゅーっ!白鳥のオブジェのくちばしから出る水を抑えて、撒き散らすわ、とても楽しそうに見えたのでしょう。
女の子の遊び方がどんどんダイナミックになっていきます。
悠太・光太のまねをして、ざぶんっ!四つん這いになって、お水に口をつけます。
もちろん、女の子の服はずぶぬれ。
あああーーーっ。心の中で叫ぶ私。
あなた、さっきまで濡れないように気をつけていたじゃないの〜!女の子の親御さん、ごめんなさい。着替えは大丈夫かしら?

最初は「○○ちゃん!」と注意していた親御さんも、最後にはあきらめたのか、子供の楽しそうな顔にほだされたのか、温かく(?)お子さんを見守っていました。

子供の世界ってこんな感じなんですね。
周りの楽しそうな雰囲気に、「あたしもやってみたいな〜、やってみようかな〜」って。
すっかり、その女の子にとって、悠太・光太は「お友達」なのです。なにかと、悠太・光太とコミュニケーションをとろうと近寄ってくれるのですが、残念ながら二人にはそれがわかりません。
けど、私と夫にとっては微笑ましい光景でした。

夫と私は、少し離れたところから、水遊びする悠太・光太を眺めていました。
存分にお水遊びを満喫した悠太が、ずぶ濡れのまま、ニコニコしながら夫と私のもとへ戻ってきました。
「悠太、おしまい?よくおしまいにできたね。えらかったね〜」
悠太の体を拭き、着替えさせます。

悠太、私たちのところに、ちゃんと戻ってきたのです。
戻ってきてくれたのです。
分かってもらえるでしょうか?この意味。

きっと2年前なら、ずぶ濡れのまま脱走してしまったことでしょう。まるで、糸の切れた凧のように。それを追いかけて、親もずぶ濡れになりながら捕まえなければならなかったでしょう。
きっと1年前なら、ずぶ濡れのままその場に立ちすくみ、「おしまい」の様子を察した親が迎えに行って、着替えるように促したことでしょう。

今年は、まるで、「おとうさーん、おかあさーん。おしまい。楽しかったよ〜。お着替えさせてー」とでも言っているかのような顔で、私たちのもとへと戻ってきてくれたのです。

離れていても、ちゃんと私たち親の存在が悠太の中にある。きっと、光太の中にも。
乾いたタオルと、着替えと、心地よい抱っこが、そこにあることを、ちゃんと知ってくれている。
きっと、普通の子供なら当たり前のことかもしれない。
でも、我が家は4年かけて、ようやく辿り着いたこと。


その夜、4人で川の字になって横になっていると、夫がしみじみとつぶやきました。
「悠太、戻ってきてくれたねえ」
「そうだねえ」

こんなことが、至上の幸せに感じる夜。



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