耳ふさぎ

 映画「マラソン」見てきました!
 水曜日、レディースデー千円とあって、シネマコンプレックスの中では小さめのシアターではありましたが(120席程度)、満席状態。韓流ブームから流れてきたと思われるおばさまたちも数多く見受けられました。(夫が見に行った金曜日の夜は、がらがらだったそうですが・・・)

 いい涙をいっぱい流してきました。
 母親と子供のお話だけに、自分とあまりにも重なる部分が多くて・・・冒頭の幼少時代は、まるで私と子供をスクリーンに見ているようでした。
 母親の気持ちのゆらぎも苦しみも、自分そのもの。手に取るようにわかります。(ただ「父親」の立場でこの映画を見た夫は、韓国人女性特有の直情ストレートな物言いに、少々引いていたようです。私も直情ストレートなんですけどね。ということは、私の言うことにも引いているんでしょうねえ)

 「好きなことを見つけてあげたかった」母親が言います。
 好きなことを見つけてあげたい。それはまさしく、今私が願っていることでした。
けど何を好きなのか分からない。我が子の気持ちが読めない、分からない。表情を読み取るしかありません。
映画の主人公は、走っているときに一番楽しそうな表情をしていました(さしずめ、悠太・光太は水遊びをしているとき、ですかね)。この子はマラソンランナーになれるかも。そんな期待を胸に、我が子と2人3脚で歩んできた母親(悠太・光太がスイマーになれるとは今のところ思えませんが)。
良くも悪くも一心同体でやってきた親子の、子離れ、親離れも映画のモチーフとなっていました。

私も考えさせられました。
悠太・光太が自立しようとするとき、子供の手を離せるのか?
意外と思われるかもしれませんが、なんだかんだ言いながら、私は子供に関してかなり過保護です。だって、着替え一つをとっても、「立って」と言っても通じない、「座って」と言っても通じない子供です。今の段階では、私が立たせたり座らせたり、手をかけるしかないのですから。

実際に手取り足取り世話をすることもそうですが、感情的にも超過保護です。
私も普通の親ということなのかもしれませんが、我が子が痛い思いや辛い思いをするなんてとんでもない!
子供同士で叩いた、叩かれた、つねった、つねられたの状態になったとき、我が子がよその子に叩かれたりつねられたりしたのをその場で見たら、カッとなって「うちの子に何すんのっ!」と駆け寄りたい気持ちでいっぱいになります。もちろん、それでは単なるバカ親なので、努めて冷静を保つようにしていますが(笑)。

健常児から蔑みの言葉を浴びせられた日には、悲しくて苦しくて、胃が、しぼられた雑巾のようになります。
きっとこの先、こんな場面は日常茶飯事になるんだろうな。けど、それに「私が」耐えられるかどうか自信がありません。
イバラの道なんてとんでもない!必要のない苦労なんかしなくていいから。
そんなふうに、子供を手元に囲いたい自分がいます。

それだけに、
「辛いことなんてしなくていいから。家へ帰ろう」と、マラソン大会会場へ勝手に来てしまった息子を説得する母親が、それでも走りたがる息子の手を最後の最後に離すシーンには胸が熱くなりました。
きっと、こんなふうに私も悠太・光太の手を離さなければならないときが来るのだろう。でもそれは、喜ぶべきことなんだろうな。

ま、とりあえず今のところは・・・手をつかんでいないとね。離しては危険、危険。

さて、今週の悠太・光太です。
しばらく前からのことなのですが、悠太、光太におびえています。なぜなら、光太は悠太を噛んでしまうから。特に、光太が興に乗っているときは要注意。わーっはっは、ゲラゲラと大笑いしながら、悠太やお父さんをかぷっ、かぷっと噛むのです。
悠太は、興奮状態の光太が近寄ってくると、すかさず逃げています。

お風呂の中でも大興奮の光太。浴槽のへりから湯船に飛び込んだり、ばっしゃばっしゃと湯船の中で暴れまくり、悠太の迷惑を顧みず水しぶきをあげています。
「やめなさい!」と怒っても無駄です。通じませんからねえ。
悠太は、そんな光太におびえ、とうとう一緒にお風呂に入るのを嫌がるようになってしまいました。悠太もお風呂で水遊びが大好きなのに・・・
ま、いくら悠太が嫌がっても、二人別々にお風呂に入れるのは面倒ですからね。とりあえずお姫様抱っこでお風呂に連れ込みます。光太が占拠する湯船には入ろうとせず、もっぱら、洗い場の蛇口から出るお湯で遊んでいます。ううう、もったいない・・・
(ちなみに、前回請求があった水道代、自分で蛇口を回せる前と比べて、軽〜く2倍になりました。2倍で済んで良かったとほっとするべきか・・・)

 そんな、迷惑極まりないマイペースな光太ですが、K学園のクラスでこんなことがありました。
いつもは他の子みんなが椅子に座っているなか、部屋中を走り回っている光太ですが、その日は珍しく、椅子に大人しく座っていました。隣には同い年の女の子が座っています。普段からその女の子を意識しているふうは全くないのですが、この日はなぜか手を伸ばし、その女の子の肩をさわったり、髪を触ったり、ほっぺをさわったり。女の子は特に気にしていないようですが、なにせ、噛み癖のある光太です。いつ、かぷっと「親愛の情」を示すか、気が気ではありませんでした。
すると、光太が女の子に自分の顔をすーっと近づけました。
「やばい、噛むか?!」慌てた私の目の前で、光太が女の子のほっぺにチュッ!と軽くキスをしたのです。
・ ・・・・・
光太は何食わぬ顔で椅子に座っています。女の子も何が起こったのか気付いていないようでした(笑)。
いえいえ、こんなことでやきもちなんて!そこまで盲目ではないですからね。

別の日のこと。毎週木曜日には、お姉ちゃんの付き添いで来る1歳の男の子の赤ちゃんがいます。ハーフの赤ちゃんで、それはもうキュートです。
この日は光太、その赤ちゃんが気になって仕方の無い様子。頭をぽんぽん触ったり、頻繁に手を伸ばしています。力加減の分からない光太なので、私はまたもやひやひや。そして光太、またもやすーっと顔を近づけ、赤ちゃんのほっぺにチュッ!
チュッとしたら、それで満足のようで、何事もなかったような顔をして去っていきました。
赤ちゃんと、女の子と、共通しているのはまあるい、やわらかそうなほっぺかな?

単独通園の日は、連絡帳にその日の園での様子を先生が細かく書いてくれるのですが、子供をお迎えに行った後、何よりも先に連絡帳を見ます。何をして遊んだか、機嫌は良かったか、そしてご飯をちゃんと食べられたのか。
光太は、コンスタントにふりかけご飯を園で食べているようです。そして、たま〜に、意外なものも口にしているようです。ある日は、餃子の皮、ぱりぱりの端っこの部分を「おいしそうに」4つ分とか(笑)、先日などは、サラダのきゅうりをたくさん食べたそうです。

きゅうりにはびっくり!もちろん、家では「温かいもの」しか提供していないので、きゅうりなんて与えたことはありません。
まあ、お花の茎を好んで食する光太ですからね。家でもよく、捨てようと思っていたキャベツの芯や、調理の準備中の生のたまねぎを台所から奪ってかじっています。
光太自ら手を出して食べるぶんには、食べ物の温度のこだわりは随分うすらいでいるようです。
しかし・・・光太の食の好みは良く分からん。

悠太は、園では食べることはほとんどありません。それでもたまに、おひつからご飯を一口つまんだり、ふりかけをなめてみたり、ひやむぎをつまんで口元に持っていき、なめてみたりと、悠太なりに給食の時間を過ごしています。
以前は、給食の時間になると身の置き場がなく、パニックを起こしたり辛そうにしていた悠太ですが、最近ではそんな姿も見なくなりました。
先日は、「シャケのパン粉焼き」が大ヒット!パン粉の衣の部分をそれはおいしそうに、うれしそうにつまんで食べていました。自分のぶんがなくなると、光太のお皿、母のお皿、先生のお皿、と巡業してはパン粉の部分をもらっていました。

最近は家でも、お皿から自分でつまんで食べてみたり(ごくたま〜にですが)することもあって、与えられるのを待っているだけじゃない、自ら手を伸ばして食べようとする意欲が出てきつつあるように思えます。

母子通園の木曜日、その日新しいお友達がクラスにいました。そのお友達の付き添いは、珍しくお父さん。そのお父さんに、悠太がなつく、なつく!1日中そのお父さんにべったりで、おんぶ〜と背中にはりついたり、抱っこをせがんだり。
これには私も「???」
そのお父さん、明らかに夫とは似ても似つかぬ風貌。自分のお父さんと間違えるはずもありません。
もともと人懐こく、先生にも甘えておんぶや抱っこをせがんだりしますが、よその「お母さん」にそこまですることはありません。たまにお膝に座ったりしますが、せいぜい、「(扉を)開けて」とかお願いをするときに手を引っ張るくらい。

そんな悠太の様子を見て、先生が、「家でお父さんがよほどかわいがってくれるのね」

悠太・光太は自分の父親以外、大人の男の人に接することがまずありません。悠太のなかで、「男の人=お父さん」「お父さん=優しい人・遊んでくれる人」という図式があるのかもしれません。
この日の様子を夫に話すと、ちょっとやきもちを焼いていた夫なのでした。


母子通園の日には、私も子供と一緒にプールに入って遊ぶので、かなり疲れます。
疲れて帰ってきて・・・私は横になりたいのに、子供はなぜか元気いっぱい。
「お昼寝は?寝ないの?・・・もう、知らんわ」キャーキャー遊ぶ子供を尻目に、うとうと。すると、私の目の前に悠太が飛び込んできました。
う、うわっ、くさいっ!
慌てて飛び起きると、布団の上に座り込んだ悠太の足から、手から、うんちがべっちょり。
ひーっ!何これ!どこでしたのっ!

家に帰ってきて、お風呂での水遊びの後にパンツを履かせておかなかった私が悪い。
とはいえ・・・なんてアンラッキーなゆるゆるうんち。
最近、うんちがしたくなったらパンツをもってきて教えてくれるから・・・なんて期待は甘かった。パンツを持ってくる余裕もなくもよおしたらしく、部屋のすみっこにでろ〜ん。カーテンの裾にもべっとり。
また、うんちを足で踏んで、それを手でさわって、そのまま布団になだれ込んだものだからさらに被害は拡大。
シーツは二組取り替え、枕カバーも私のGパンもTシャツも、洗濯機直行。
さっき、水着やバスタオルを洗ったばかりなのに、また洗濯かよ。
ここんとこの雨続き、いつ雨が落ちてもおかしくない天気に、洗濯物は全部部屋干し、もう干す場所もありません。

もー、どうしてくれるのよー!!
光太なら、こんなへまはしません。万が一うんちを踏んでしまっても、「気持ち悪い、拭いて〜」と固まってしまいます。
もー、悠太はーっ。悠太のバカーっ!せっかく寝てたのに。疲れてたのに。
後始末をしながら、泣けてきました。カーテンの裾についたうんちが、なかなか落ちません。これ、かわいいカーテンなのに、お気に入りのカーテンなのに。臭いよう、臭いよう。
そう思った瞬間、ぷちっと何かが切れました。

ああああああああーーーーっ!
大声で叫びました。
もともと私は短気なので、よくキレます。もちろん、なるべくは我慢して、子供に当たらないように気をつけてはいるのですが、まあ、爆発してしまうこともたびたびです。

腹の底からの大声で、「もうっ、勘弁してよ!どうして教えてくれないのよ!汚いなあ、臭いなあ!」と怒鳴り散らしながらうんちを片付け、ふっと子供の顔を見ると。
悠太と光太、二人ともが耳を両手でふさぎ、泣きそうな顔で私を見ているのです。まるで、「母ちゃん、怖いよ、うるさいよ、やめてよー」とでも言うように。

二人の顔を見て、はたと我に返りました。
こんな耳ふさぎ、初めてだったのです。
聴覚過敏で、色んな音を「いや〜」と耳ふさぎをする悠太・光太ですが、今まで、いくら私が怒鳴ろうと泣き叫ぼうと、まるで私の声など聞こえていないかのように、表情一つ変えることはありませんでした。
「いやだなあ」と思っていたのかもしれませんが、とにかく、何事もないかのように振舞う二人。それがまた腹立たしく、私の気持ちも声も届かないことに、虚しさでいっぱいでした。

初めての二人からの抗議に、なんだか新鮮な気持ちになりました。
そりゃあ、イヤだよね、怖いよね(我ながら、私が本気で怒ると震え上がるくらい恐ろしいのです)。
感情まかせに「怒る」ことから、「叱る」に変えなくてはいけないなあ。自らを戒めた一件でした。

 それにしても・・・ぐずぐずとうっとうしい。面倒なことばかり「あれやれ、これやれ」と要求してきます。
 日曜日の朝から、二人けんかをしつつ、元気にお風呂場で水遊び。脱衣場まで水浸しです。
 平穏な日はいつ訪れることか。




育児なんか大キライ!目次へ
ホームへ