- 池木屋山から大台ヶ原への縦走も四日目になった。父ガ谷高北側の幕営地で前夜9時頃から降り出した雨は朝になっても降り続いていた。ラジオの予報では、雨は朝のうちだけで昼には天候が回復するとの事だった。出発を遅らせ、最後の一袋のコーヒーを飲んでテントの中で手持ちぶさたの時間をつぶした。雨は7時頃にようやくやんだ。
- 父ガ谷高への登りは紅葉がきれいだった。父ガ谷高は霧に覆われていた。次の1094m峰で霧は晴れたものの、風は相変わらず強かった。西側が開けていて、前日は通じなかった電波が、ここでは久々に通じた。メールを送り、ブログを投稿した。電波状態が今一歩だったので30分ほどかかった。強風のため、体はすっかり冷え切り、手もかじかんでしまった。
- 次の杉又高は尾根の中間部に出た所に有った。尾根の反対側は桧植林になっていた。杉又高からは、左側が植林、右側が広葉樹の稜線歩きになった。広葉樹の方は紅葉がきれいだった。振子辻からの下りで尾根を間違えてまっすぐ進んでしまい10分程ロスしてしまった。正しくは植林と広葉樹の境に沿って下る道だった。
- 登り下りの多い尾根を進んで行った。風は相変わらず強かった。引水サコへの下りになると左側の植林が終わり、両側が広葉樹になった。紅葉がきれいだった。
- 引水サコは稜線の鞍部で、西側は鋭い谷になっていた。東側には涸れ沢が緩く流れていた。東側の20mほど下に一張り分のテントスペースが有りテントを張った。ゴーゴーと強い西風が吹いていたものの稜線東側のテント場は無風で快適だった。コーヒーは飲み尽くしていたので代わりのお湯を飲み、余ったチョコレートを食べながら夕食までのひとときを寂しく過ごした。水は涸れ沢沿いに標高20m程下ると得られた。
- 最終日の朝は冷え込みテント内の温度は2.7度だった。今回の縦走で一番の冷え込みだった。昨日の風はすっかり和らいでいた。
- 歩き始めるとすぐに「御座クラ」の岩場に着いた。岩の上からは大峰の山々がシルエットになって見えた。「御座クラ」からはなだらかな稜線になった。周囲はブナの森で、ブナの落ち葉がたくさん落ちていた。夜の寒さのせいで、落ち葉は霜で白く縁取りされていた。大台辻に出る手前に岩峰が一つあり左側を巻いた。
- 大台辻の先、コブシ峠で登山道を離れ、尾根の踏み跡を登って行った。色あせた赤テープが有った。やがて木が無くなりミヤコザサの笹原になった。見晴らしが良くなった。開放的で別天地を歩く感じがした。大台ヶ原の一角にこんな笹原が有るとは知らなかった。笹原のてっぺんが三津河落山で古い石の標識が有った。快晴でそよ風が吹いていた。海が青々と見えた。休んでいるとどこからともなくキツネがやってきた。物を取られてもまずいと思って追い払った。かまってもらえなかったキツネは、寂しそうにとぼとぼと歩いて行った。
- 県境沿いに川上辻へ下り、車道を歩いて大台ヶ原の駐車場に着いた。車が30台ほど停まっていた。山頂の日出ヶ岳への道では登山者20人ほどとすれ違った。どの顔も快晴に満足した様子だった。
- 日出ヶ岳山頂の展望台で展望を楽しんだ後、稜線を正木ヶ原を経由して一周した。途中で身長ほどもある大きな三脚を持った年配の単独行者とすれ違った。額に汗を流し三脚が重そうだった。「写真ですか」と声をかけると「天気が良すぎて」と楽しそうに答えてくれた。