- バスは高校生達を下ろすと他の乗客は誰もいなくなった。終点のスメールから歩き始めた。曇り空だった。
- 蓮(はちす)ダムからは、ダム湖の南岸を歩いた。前方から軽トラックがやって来た。年配の運転手に「今から行くのか? どこまで行くのか?」と尋ねられ、「池木屋山の方まで」と答えた。更に歩いて行くと猿の群れがいた。
- 中間橋から今度はダム湖の北岸の道へ渡った。湖の底では砂利の撤去作業をしていてダンプが時々通った。砂利撤去の作業現場への下り口に着くと年配の男性誘導係がいた。男性は手持ちぶさただったのか「ここの住所は何と言う所ですか?」と聞いてきた。「分からない」と答えた。後で地図を確認すると、この付近は猿山という地名らしかった。
- 更に歩いて行くと江馬小屋谷出合に若者3人組がいた。「どこまで行くんですか」と声をかけられた。大台ヶ原までと答えるのはためらわれたので「池木屋山まで」と答えた。
- 林道終点のポストに登山届を入れて登山道を歩き出した。橋や桟道、階段の多い険しい道が続いた。紅葉がきれいだった。にわか雨が少しだけ降った。高滝から先では、これが道かと思う険しいトラバース道が続いた。ロープは切れかけているものも有った。ロープ2本を掴みながら緊張して進んだ。渡渉が2回有った。足が滑って靴の中まで水が入ってしまった。
- 幕営予定地の奥の二俣の着いて、ようやくほっとした。左手の台地にテントを張った。平坦で良い場所だった。周囲の紅葉がきれいだった。これからの縦走に思いをはせながら、眠りについた。
- 二日目は良い天気だった。池木屋山へ続く尾根に出ると風が強かった。紅葉がきれいだった。
- 池木屋山山頂は西風が冷たかった。紅葉は終わっていた。展望を楽しんだ後、踏み跡状の縦走路を南へ向かった。
- ホウキガ峰先の水場は稜線から35mほど下った所に有った。この先の水場が不安だったため水を汲んで3リットルにした。
- 弥次平峰へはヒメシャラの多い紅葉のきれいな森の登りだった。弥次平峰は樹林に囲まれてスッキリしない展望だった。
- コブを何個か越えると、この日のテント場、霧ノ平に着いた。すぐ近くに水場が有った、水を担いできて失敗したと思った。付近は紅葉がきれいだった。
- 三日目も良い天気だった。朝のテントの室温は6.5℃だった。1時間程歩くと下り15m程のロープの岩場が有った。注意して下った。下りきるとキレットになっていて、今度は岩場の登り返しが有った。登った所で右手の尾根を間違えて50m程進んでしまい。5分程ロスした。馬ノ鞍峰を過ぎるとブナ林が多くなった。黄葉がきれいだった。
- 地池越への下りは広々とした尾根だった。ブナやミズナラの大木が多かった。気持ち良く下りていくと、がさがさと音がして、50m程先を熊が左から右へと走って行った。以後、声を出しながら歩いた。
- 山ノ神ノ頭付近では狭い岩の稜線を進んだ。標高1050m地点からの下りは急だった。ストックをザックに付けて下り始めた。少し下ると左手にロープが見えた。急斜面だったので、いったん登り返してロープの所を下り直した。
- 再び稜線が広くなって下って行くと、この日のテント場、父ガ谷高の北側の鞍部に着いた。水場は下り5分、標高差30mの所に有った。落ち葉の敷き詰められたブナ林で別天地のような場所だった。夜は熊が気になり物音がする毎にラジオをつけて音を出したので、眠りは浅かった。