- 初日は晴れだった。松本電鉄車内ではヴァイオリン生演奏のサービスが有った。上高地には大勢の観光客がいた。観光客の間を歩き始めた。明神を過ぎると、ほとんどが登山者になった。横尾で幕営した。テントは約100張りだった。
- 二日目の朝は霧雨だった。レインウェアを着て出発した。コマドリが鳴いていた。やがて雨はやんだのでレインウェアを脱いだ。曲沢付近ではシシウドが咲いていた。天狗原の分岐まですれ違いの登山者が多く煩わしかった。
- 槍ヶ岳への道と分かれ天狗原への道に入ると登山者が減った。天狗池は半分雪に埋もれていた。槍ヶ岳はあいにくと雲の中だった。
- 横尾尾根のコルへの登りでは雨になりレインウェアを着た。降りのひどさに登るのをやめようかと思った。青いレインウェアを着た35歳位の細身の女性が下りてきたので稜線の様子を尋ねた。「稜線は風はそれほどは強くはない」との事だった。「槍ヶ岳から南岳小屋まで行って、コーヒーを飲んでから下りてきたけれど、南岳小屋では土砂降りでした。台風が心配で一日早くしたけれど、来る日を間違えましたね~」と話していた。休むうちに小降りになったので出発した。
- 遠くで雷が鳴っていた。霧の中、鎖場と梯子を登り稜線に着いた。稜線も霧だった。南岳には登山者が一人いた。南岳小屋まで下りテントを張った。テント設営後に土砂降りになった。テントは約20張りだった。
- 三日目は、薄く雲がかかる好天だった。ヘルメットをかぶり「大キレット」の名前を意識して少し緊張しながら歩き始めた。最初は階段状の下りだった。前方には登山者が8人ほど下っていた。すぐに三点確保が必要な岩場になった。梯子を下った所が小さな広場になっていたので一休みした。
- 次の梯子の後は緩い下りになった。ようやく落ち着いてきた。少し風が吹いていた。鞍部を過ぎて登って行くと長谷川ピークに着いた。逆方向に向かう登山者5-6人とすれ違いになった。手も使って四つん這いになってすれ違った。長谷川ピークからの下りで後続者がザックのポケットに入れていたペットボトルを落としてしまった。ペットボトルは奈落の底に消えていった。
- 次の鞍部は岩に「A沢コル」と書かれていた。ベンチが有り50-60歳の男性登山者が二人座って休んでいた。「どうぞ座ってください」と言いながら場所を詰めてくれたので座って一休みした。3人座ると満席になる小さなベンチだった。
- A沢コルから登って行くとボルト頼りの登りが有った。剱岳カニの縦ばいのような感じの難所で腕力も必要だった。これが「飛騨泣き」だろうと思った。難所を登ると平坦地が有った。上から下りてくる人がいたので待つ間を利用して一休みした。
- やがて「展望台」と表示の有る所に着いた。登ってみると滝谷が見えた。岩の名前になじみが無い上に暗かったのでよく分からなかった。上に北穂高小屋が見えたが、なかなか着かなかった。最後まで急登が続いた。出発したばかりの登山者5-6人とすれ違った。小屋の直下まで登ると槍ヶ岳が見えた。
- ようやく北穂高小屋のテラスに着いた。緊張感から解放され、歩き通した達成感を感じた。コーヒーを飲んで一休みした。
- 北穂高小屋からの南陵の下りは霧になった。南稜の最下部で、ようやく霧が晴れて涸沢が見えた。涸沢でテントを張った。テント設営後、小屋のテラスでビールを飲んでくつろいだ。少し夕立が有った。
- 最終日も良い天気だった。上高地までゆっくり下った。