- 山上ヶ岳からの縦走も二日目の後半になった。阿弥陀ヶ森の分岐で女人結界門をくぐり女人禁制の領域を脱出した。大峰奥駈道を更に南へ向かった。緩い登りが続いた。シラビソ、ブナ、カエデの森だった。シャクナゲの木も少し有った。少し曇って来た。
- 最後の急坂を登ると大普賢岳山頂に着いた。眺めが良かった。山頂の周囲の木々は少し紅葉していた。
- 山頂で休んでいると、今回初めて登山者に会った。いずれも20台前半らしい三人組で、小柄でスポーティな感じの女性一人と、一人は小柄、もう一人は少し背が高くてストックを持った男性の三人組だった。女性は「高校生の時に来ているんだけれど、全然覚えていないなあ。確か8年位前なんだけれど」と言っていた。3人はクライミングが趣味らしく、ビレイがどうのこうのとかロープの扱いはこうだとか言っていた。三人は登って来た道とは反対側へ「こっちの道は良いね」と言いながら下って行った。三人が下りた方向を覗くと稲村ヶ岳をバックに紅葉がきれだった。
- 大普賢岳で縦走路を離れ、和佐又山へ向かった。険しい道が続いた。スチール製の階段や桟道がたくさん有った。濡れていて滑りやすかったので注意しながら下った。笙ノ窟などの岩屋がいくつも有った。
- 険しい道が終わり、ブナやミズナラ、ヒメシャラが生えるなだらかな道になると、和佐又のコルに着いた。コルから一登りで和佐又山山頂に着いた。白い石灰岩らしい岩が多かった。振り返ると下りてきた大普賢岳が見えた。
- 和佐又山から樹林帯をジグザグに下って行くと、和佐又ヒュッテに着いた。テント場は2段になっていて、下のヒュッテに近い方の段にテントを張った。芝生が生えて広々としていた。下の段には他のテントは無かった。
- 翌朝、朝露で濡れたテントを撤収し、林道を下って行った。
- 和佐又口からは一日一往復のバスに乗った。10人ほどの乗客が乗っていた。顔なじみの客ばかりらしく、乗ってくるとお互い「おはよう」と挨拶をしていた。後の席に座っていた丸顔で愛想の良さそうな60歳位の男性が隣りの客と話をしていた。「今日の試合は大事やね。5連勝だし、このまま行くと優勝するかも知れない」と言っていた。どこの高校野球の話かしらと思っていたら、プロ野球の話だった。どうやらこれから阪神の試合を見に行くらしかった。こんな山奥から甲子園球場まで行くのは大変だ。しかも帰りのバスには間に合わないので泊まってこなければならない。阪神ファンの底の深さに驚かされた。