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■セブンアイ 「松下」
コインパーキングのインターホンの向こうで、警備会社の男が次々に質問をしてくる。 女性の五輪と呼ばれるアテネ五輪日本代表にあって、とびきりの快挙である。男子卓球の日本人プロ第1号、36歳の松下浩二(ミキハウス)がバルセロナ以来4大会連続の五輪出場を果たしたことは、大きな注目を集めてほしいと思う。上京中で、会うチャンスをもらい、昼食と取材を同時にすることにした。 彼が大学生のころから取材をしているから、思いもよらずずいぶんと長い付き合いとなった。このコラムでも紹介したことはある。97年、日本で初めてドイツのトッププロであるブンデスリーガで契約をし、3年間単身でドイツに暮らした。言葉が不自由なころ、車の事故で濡れ衣を着せられた。完全な「アウエー戦」に、しかし松下は裁判に訴える時間と費用と知識をかけて、最後に潔白を証明した。 卓球には未来がないので早く辞めます、とドライだった人が、初のプロ選手となり、初の海外移籍をし、五輪4大会連続の偉業を果たして、「チーム松下」の社長となるのだからおもしろい。会社の会見で、「目標はメダル。取れなかったらペキンを狙いますので」と言い、場内は大笑いとなったが、私は笑わなかった。彼ならどんな困難でも本当に乗り切ると思うから。 結局、私は「監視カメラに車番は見えているはずで、自分でインターホンに向かってプライバシーを発表することはない」と粘り、ゲートを開けさせた。遅刻した理由を松下に伝えると、「やりますねえ」と笑われた。 (東京中日スポーツ・2004.6.25より再録) |
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