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■セブンアイ 「内なる敗因」
良い教育とは、こういうところから始まるのだ、と感動した。園長先生が言った。 5月21日、日本代表のキャンプが始まって以来滞在している森町(静岡県周智郡)で、報道陣と保育園との交流会を持つことになった。「ようこそ、メディアセンターのみなさん」と書かれた旗まで庭に飾ってもらって、私たちは妙に照れながら、自分のひざまでしかないような小さな木の椅子に座った。 30人ほどの園児たちと、床に画用紙を広げる。彼らの愛用のクレヨンを持ち出し、さあ代表を応援する絵を書こうというとき、自分がどうしよう、何を書こうと悩んでいるのがわかった。子供たちは逆だった。 「ボールは緑色で、ゴールは水色だよね」 ああ、そうか。子供のイメージとはこういうものなのだと思う。今回のボールはアイボリー地に赤とゴールドだが、そんなことは「目に見えた」ものであって、彼らの心の中にあるイメージは、こんなにも柔軟で生き生きしているのだと、改めて気がついた。 「何が原因か? わからない。しかし、私にはプレーのいいイメージが湧かなかった。勝ちたい気持はあった。でも、90分を通じてプレーのイメージが湧かなかったんだ」 グループリーグで敗退し、すでに帰国したジダン(レアルマドリード)がフランステレビ局のインタビューに答えていた。怪我はあった。しかし、サッカーにおいて最も重要なイメージの描写と、それを実現するスキルが伴わなかった、と、ジダンは「内なる敗因」、もしかするとサッカーの根本というものを、ふと、口にしていたように思う。 子供が心の中に、サッカー選手が頭に、描くイメージという名の自由は似ている。子供たちが書いてくれた素晴らしい絵を眺めながら、なぜ自分が真っ白な画用紙を前に困っていたのか、その理由がわかるような気がした。 (東京中日スポーツ・2002.6.14より再録) |
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