Bi-Weekly Column 1/8「Eye from the SHOT
2つの圧力に耐える ベテラン流の「待ち方」


 この連載も10本目になる。
 初回に、昨年得点王を取った中山雅史(ジュビロ)のポジショニングについて触れ、その中で、「ベテランとは単に年齢を指すのではなく、年齢とは関係なく、常に技術を極めようとする人々を指すのではないか」と書いた。
 今回の選手は、その中山よりもさらに歳が上、32歳である。
「若い頃っていうのは、本当にちょっとしたことでイライラしてたからね。味方にも、自分にもイラ立ってついには何にイライラしてるのかわかんなくなったりして……」
 10日のベルマーレ戦で、FW福田正博(レッズ)が2得点を挙げた。試合後、久しぶりに話ができた。
 ストライカーの宿命は、とにかく「待つこと」である。味方からのパスを、絶好のチャンスを、常に待たなくてはいけない。攻撃の最前線にいながら、実は、精神面においては非常にディフェンシプな戦いを強いられるという、逆説的なポジションでもある。
 福田は、待つための秘訣を、「外圧と内庄、その両方に耐えること」と、表現した。
「最初にそのことを教えてくれたのはオフト(94年米国W杯予選日本代表監督)でした。そして、次はオジェック(元レッズ監督)。彼には今思っても一度もテクニックのことは教わらなかったように思う」
 2人の監督は、得点できない時にチームの仲間やサポーターや、あるいはメディアからかかるプレッシャーと、自分で自分にイラ立つこと、あるいは自信を失いかけること、その2つの圧力ヘの対処法を常にケアしてくれた。スポーツではよく、「ポジティプ・シンキング」などというが、これも簡単なことではない。
 2人の監督によって、自分にかかっているプレッシャーの種類を冷静に分析できるようになった。そうなると待つことは少しも苦ではなくなる。95年に日本人初のリーグ得点王を取った頃から、ポールよりも、自分をコントロールすることに熟練してきたようだ、という。
「ストライカーは、気から」なのかもしれない。
 最後に無礼を承知で聞いてみた。
 歳を取ることは怖くないか、と。
 福田は笑いながら首を振った。
「正直なところ、今は、年齢を重ねることは全く怖くないですね」
 レッズの大逆襲が始まりそうだ。

(週刊サッカーマガジン・'99.5.5号より再録)

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