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[INSIDE REPORT] 2002年11月17日、東京国際女子マラソン 肋骨骨折で高橋尚子欠場。
日本陸達は、五輪連覇という偉業を目指す高橋尚子(積水化学)に、アテネ五輪代表権の「シード制度」を検討するべきだ。無論、五輪金メダル、世界最高をマークしての6連勝を専門家として正当に評価し、支援しようと望むのならば、の話であるが。
一方、9月のベルリンマラソン以後、中50日でこのレースに臨む予定だった高橋は、米国ボルダーでの高地合宿中に肋骨を疲労骨折。全治3か月の診断で欠場し、世界陸上出場のチャンスは残る2003年大阪、同名古屋となる。 「何としてもパリでアテネを決めてしまいたいと思っている。シドニーのときのように、国内選考で最後の最後まであんなに苦しい思いはもう味わいたくない。現時点でも世界陸上を視野に入れて再起を考える」 小出陣営だけではない。現在、世界でもっとも底辺が広い日本女子マラソン界にあって、強豪の出場が必ずしも100%ではない「世界陸上でのメダル」の条件は、アテネへの最短距離といえる道筋となる。国内選考1本でアテネを狙う選手もいるが、1年前に決定すれば、心身に負うリスクも少なく本番に挑む計算が立つ。まして30代になる高橋に、1年の準備期間は大きな魅力だ。2時間20分を切る(世界最高はラドクリフの2時間17分18秒)トレーニングはすでに限界一杯一杯のもので、体脂肪を10%切った状態を維持し続けたことも疲労骨折の要因だと考えられている。 「マラソンは、肉体的なメンテナンスをしっかり行い準備しなくてはならない。世界陸上に仮に出場しなくとも、高橋は国内選考(2003年と4年の)で、代表になれる力を十分持っているだろう」と、陸連強化委員会の沢木啓祐理事は世界陸上で最短距離を取ろうとする陣営に自重を促す。だとすれば、もう一歩踏み込んで、五輪連覇のために、例えば選考会免除は難しいとしても、「五輪選考レースのうちどれかで調整を行うこと」等シード制度を導入してもいい。高橋の安定感を知る現場で、批判は出ないだろう。事実、過去4大会の金メダリストは皆、故障でない隕り、タイム、レース選択などで優遇措置を得ている。 逸材の連覇をどう実現するかと同時に、現状では選考そのものの基準もまたもや取りざたされかねない。
高橋の連覇、史上最強とされる日本女子の選考を縦軸に、横軸には、新聞社、テレビ局の高視聴率獲得、激しい選手争奪戦が絡む現状に、彼女の肋骨のひびは、何かを訴えかけていたのではないか。財団である責務は当然としても、陸運が今、柔軟に再考すべきは、選手にとってベストの選考であり、世間に示す基準ではない。五輪前になると必ず「曖昧だ」と批判されながら、結果的には3大会連続でメダルを獲得しているのだ。求められるのは、専門家としての確固たるプライドと知識の方である。 (「SPORTS Yeah!」No.056・2002.12.6より再録) |
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