この人を見よ! HOMO IN SPORTS
大竹奈美(女子サッカー)
●おおたけなみ/1974年7月30日生まれ。東京都町田市出身。中学1年の時、双子の妹の由美とともに読売サッカークラブの女子チーム・ベレーザに入団。東京・山崎高校卒業後、西友に入社。'94年、広島アジア大会で銀メダルを獲得。'95年、世界選手権ベスト8、'96年アトランタ五輪代表。'98年バンコクアジア大会では3位決定戦で先制ゴールを決め、銅メダル。ここ一番での勝負強さには定評がある。166センチ、53センチ。
世界選手権期待の
エースストライカー
「大竹さーん、今から本番入りまーす!」
世界選手権で五輪出場権獲得を目指す(六月十九日から米国)サッカー日本女子代表のFW・大竹奈美(24歳、NTVベレーザ)に、仲間たちから冷やかしの声が飛ぶ。
本番、とは試合でも、もちろん番組収録でもなく、試合前の、ある儀式の方を指す。
大竹にとって、ピッチに入る前の重要な儀式は、日焼け止めを紫外線指数に合わせて入念に塗ること。あまり入念に塗るものだから、まるで本番入り前の舞台役者のようになる。
だから、からかわれる。
小学校三年からサッカーを始め、中学からは名門読売ベレーザにいたというのに? 国際マッチも69試合も戦ってきたというのに?
何を今更日焼け止めなんて……。仲間でなくてもからかいたくなる。
「ピッチではトコトンやります。へこたれるものか、って自分に言い聞かせて。でもね、ピッチを離れたら普通の女性でいたいじゃないですかあ」
チャーミングなソバカスを耽ずかしそうに隠しながら、そう言って笑い出した。
よくある原稿パターンなら、「男子顔負けのFWも、ピッチを離れれば、素顔はお肌を気にする普通の女の子」となるところだ。
しかし、大竹の「素顔」が果たして、お肌を気にする24歳なのか、それとも、自分よりも一回りも二回りも大きな外国選手に立ち向かっていく勇敢なFWなのか、これは少し検討の余地がある。
男子以上に女子は体格の差が大きい。しかし、FWは相手に激しいファールをされても、倒されても、平気な顛で立ち上がらねばならない。大竹はそうやって、国際マッチで12得点をあげるなど、女子チームをリードしてきたストライカーである。
自ら「どうしようもないくらい超マイナス思考派なんです」という自分の性格も、この1年に味わった2度の敗戦で少しずつ変わってきたのだという。
最初の痛い敗戦は、昨年12月のアジア大会、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に敗れた試合だった。そして今年四月には、開催国の米国に遠征し、惨敗を味わった。
「勝負は勝ちたいではダメ。勝ちたいではなくて、その上に絶対に勝ちたい、オリンピックも行きたい、ではなくて絶対に行く、そういう思いが必要でした。今は、相手がどんなに強くても、怖じ気づくもんか、と自分を叱咤するんです」
男子ではW杯に相当する世界選手権は、五輪代表権を争う大会である。今回もベスト8がシドニー出場の最低条件となる。
代表でレギュラーをつかめなかった頃、試合前、ピッチではなくベンチで聞く君が代に、悔しさのあまり大泣きした。
サッカーには徹底的に負けず嫌いであり、その強い気持ちは日炊け止めでは隠せない。
「奈美、きょうはどのくらい塗ればいい?」
仲間の声に、「だめだよ、手を抜いて塗ったら」と切り返す。
目指せ、オリンピック!
がんばれ日焼け止めの奈美!
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