2003年11月29日

※無断転載を一切禁じます


Jリーグ

2ndステージ第15節
横浜F・マリノス×ジュビロ磐田
(神奈川・横浜国際総合競技場)
キックオフ:14時2分、観衆:43,283人
天候:雨、芝:全面良芝/水含み

横浜 磐田
2 前半 0 前半 1 1
後半 2 後半 0
50:マルキーニョス
89分:久保竜彦
グラウ:2分
 

 この試合に勝てば第2ステージ優勝が決まる磐田は、立ち上がりの前半2分、ゴール前でジヴコヴィッチのパスを受けたグラウが、落ち着いて左足でシュート、ゲーム最初のシュートがゴールとなり先制、これ以上ない優位な展開で試合をスタートさせた。
 一方、流れを変えたい横浜だったが、グラウがGK榎本哲也に対して遅延行為を行った際、これに怒った榎本が、すでにファールが出されていたにもかかわらずグラウに突進、胸で突き飛ばす「報復行為」でレッドカードを受ける。前半15分で早くもGKが退場し、攻撃の起点となるべきMF佐藤由起彦を下げ、GK下川健一を投入せざるを得なくなってしまった。磐田は、この圧倒的な優位を持って、前半を慎重に進めて1−0のまま、ハーフタイムを迎える。

 磐田は後半もボールを回し、2点目を取りに行くよりは逃げ切ろうかという流れで試合をスタート。しかし後半、注意をしていたというセットプレー(コーナーキック)でゴール前の混戦となり、最後はマルキーニョスにヘディングを決められ同点。しかし引き分けでも、優勝当該チームとなっている鹿島が浦和を2−0と引き離しており、優勝はほぼ磐田の手中にあると思われた。
 結果的に、この「ほぼ」といった考えがチームを支配し、そのことで油断よりもさらに選手の動きが硬くなってしまう。数的優位、ゲームの優位に立ちながら、攻めのパス、ドリブルといった縦の攻撃ができずに、ゴール前に放り込んでは、結果的にマリノスの術中にはまるようにボールを返される。柳下監督は後半残り20分を切って、西野泰正、川口信男を投入。スピードと、サイド突破で流れは磐田に傾きかける。しかし、試合終了間際のロスタイム、ゴールキックからスタートしたボールが磐田のDFに当たり、これが前線に詰めて走っていた久保の絶好の位置に上がる。久保は体を寄せてこれをヘッディング、ボールがゴール右隅に入って1−2、と逆転される。この時点で優勝は消え、磐田は残り数秒の戦いで、ステージ優勝を逃がしてしまった。

試合データ
横浜   磐田
11 シュート 6
10 GK 6
1 CK 1
31 FK 17
0 PK 0
 横浜が首位に立って完全優勝を果たすためには、鹿島が浦和と引き分けなければならないという条件付きだったが、埼玉スタジアム2002では浦和が鹿島に追いついて試合終了。横浜のメンバー、スタッフはピッチでこの結果を知って、そのまま優勝の歓喜の輪ができあがる、劇的なクライマックスで第2ステージも優勝。これで年間完全制覇を成し遂げ、チャンピオンシップはなくなることになった。横浜はステージ終盤5試合中4試合で退場者を出すという、ひどく荒れたゲームをしながら、最後の最後に勝利をもぎ取る勝負強さを見せた。

横浜/岡田武史監督「選手は本当によく、最後まで諦めないで戦ってくれた。(退場した)榎本は、あの場面で若さが出てしまったのかな。ただ、それでもよくチーム全員が諦めず、よく粘って同点にし、逆転した。優勝できるとは思わなかったが、最後まで全力を尽くさないことには何も起きないと信じていた。これで年間勝ち点でも磐田を抜いてトップに立つことができたのがうれしい。監督になってから後期の予定を見た時、リーグ最終戦が磐田とわかり、ああ自分はここまで監督をやっていられるだろうか、と思ったこともある。うちらしい攻めはできずカウンターになったが、それも人数が少なければ仕方ないと思う。本当に選手に感謝している」

磐田/柳下正明監督「立ち上がりの早い得点で、逆に選手は硬くなってしまったと思う。普段の選手とは明らかに違っていた。後半、相手は必死に来るから絶対に油断をしないようにと送り出したし、選手はそれをわかっていたはずだが、最後のゲームで磐田本来のサッカーができなくて残念だ。川口、西野の投入で流れがうちに戻ったと思ったし、中山はこのコンディションの中で(足を思って)できれば使いたくなかった」

視察に来ていたジーコ日本代表監督「Jリーグでこんな戦いになったことは初めてで、本当に大変な、素晴らしい最終戦だった。こんなことはサッカーだから起きるものだ。笛が鳴るまでわからない、とはよく言うが、今日はその手本のような試合で、笛がなった後にも何かが起きる。普段から言うように、これがサッカー、これこそサッカーとしか言いようがないし、私もブラジルで、イタリアで何度もこういうことを味わっている。マリノスの戦いは素晴らしく称賛に値する。しかし、磐田と鹿島に対しても、私は彼らによくやった、と声をかけたい。
(明日発表の日本代表について)チャンピンシップがなくなったことで、8人ほどの選手が選べることは本当に助かった。海外からは多分1人しか呼べないかもしれない。どちらにしてもリストは明日、もう協会には預けてあるので(事前に知りたければ)それを見てください」



読者のみなさまへ
スポーツライブラリー建設へのご協力のお願い


BEFORE LATEST NEXT