2003年11月17日

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陸上

高橋尚子、東京国際女子マラソンレース後会見

 高橋尚子(31歳、スカイネットアジア航空)が東京国際女子マラソンから一夜明け、小出監督とともに会見を行った。高橋は、東京国際でアテネの代表権を狙ったが、2時間27分21秒で2位と、内定を得ることは困難な状況となった。残る、大阪、名古屋の2選考レースの結果を待つことになるが、もう1レースで代表を確定させる走りをするか、異常気象の中での27分、日本人1位の最低ラインクリアで陸連に下駄を預けるか、現時点では結論は出ていない。

──一晩あけてレースを振り返って
高橋 もっと一人になってみれば悔しさ、悲しさは込み上げてくるのかな、と思っていたんですが、テンションのせいかな、と思ってました。でも一日過ごしてみても、ああ終わったな、とすっきりしています。これだけ6月から練習を何千、何万と走ってきたことを考えると、それが出せなかった、もったいなかったな、という、自分に悔しいという思いはある。

──まだ終わったばかりだが今後は
高橋 昨日からまだ変わっていないですし、何も具体的には……。ただ、スポンサーの方とか周りの方とかに話しをしているうちに、どこかのレースにまだ出てみたいなという気持ちにはなりました。
小出監督
 昨日終わって飲むのが精一杯でしたね。色々と聞かれるのは当然ですが、高橋は引退とか、走るのを辞めるとか、そういうのはないでしょうね、走るのが大好きですから。今はゆっくり休めよ、と。大会はひとつではないんだから。何も1回の、あれと思うようなレースだけではない。みなさんの期待に答えることはいろいろとできるだろう。(自分としての後悔は)キュウちゃんはもうベテランになってきた、そういうところに落とし穴があった。一生懸命やるんだけど、あれと気が付いたときには、脚も絞りすぎで貧血かな、と思った。体重なんか気にせずに食べろ、というようなことにもちゃんと注意してやれなかったのが、自分の手抜きだった。生意気になった部分もある。自分が思ったよりも体重が1キロ少なかった。取り返しはつかないが、今後のためには教訓にはなる。

──プラスになる材料は
高橋 今回のレースの辛さは初マラソンや練習でも味わったことはないものでした。振り返っても仕方がないので先を見れば、今もう一回初心に戻れるような経験をさせてもらったことが、陸上でも人生においてもいい経験をさせてもらったかな、と思う。

──ほかのライバルがいなかったが
高橋 いいえ、人が、とか周りが、とか、そういうのは気にしてなかったです。昨日のレースをスタートした状況から自分自身を攻めていく感じで、周りの方は関係なく、自分で行って、自分で自滅しただけです。最後までたどりつけないと思った、良かったねと家族には言わましたね。夜は、もう「おやすみ3秒」で(あっという間に)眠りました。夢は見たんですが、陸上の夢ではなくて、ああこんなもんかな、と。

──アテネへと期待していいんでしょうか
高橋 今は決められないです。どの大会に出るか、などは決めないし、出てる、出てないか、は決められないです。

──続けるのか、引退するのか
小出監督 ずっとかけっこやるタイプ。一生やるだろう。ゆっくり休めよ、とにかくうーんと食って、とにかく休めよということだけだ。ここまで6月から、一日も手抜きなくやってきて、これまでのマラソンでもポカなくやったはずだったのに、もったいなかったなあ、という思いはあるだろう。そういう考えで取り組んできたんで、辞めないだろう。

──レース後、食べるものが欲しい、というコメントがあったそうだが。
高橋 もう何を食べたか思い出せないですね。まず走り終わった控え室で2個の弁当をたいらげ、食事をして、ずっとしゃべっていた3時くらいまで何かしら食べていましたね。

──原因はなんだと、今思いますか
高橋 普段通りやってきて、いつもと同じように調整してきたんで、細かくどこがと反省することはないですね。ただ、何かが足りなかったからああなったんで、それはこれからゆっくり考えたい。けれども、あれをやればよかった、こうすれば、といった後悔や反省点はスタートの時には思ってません。走れなかった去年を思えば、結果は2番でも何かをつかむチャンスにはなった。

──アテネへの思いは
高橋 そうですね。アテネオリンピックに行きたいな、という思いはずっと持っているけれど、あらためて現実的になって、あれをして、これをして、という思いはまだ別の道にあるんで気持ちはそこには向いてないですね。同じ方向は向いていると思いますが、同じ道にあるわけではない。

──あらためて、ファンへの心配に
高橋 昨日多くのスタジアムだけではなく、沿道途切れることなく声をかけてくださったみなさんに感謝しているし、申し訳ないとも思っています。ただ元気な姿はこれからも見てもらいたいので、報道陣にも暖かい言葉をかけてもらいました。そういう言葉に感動しました。

──励ましになるの曲など、何かありますか。
高橋 練習では世界水泳のテーマをかけてましたが、昨日、大黒摩季さんとか、福山雅治さんとか、お忙しいのに直筆の手紙を下さった。大黒さんは沿道を走り回ったといってくださった。お礼を伝えてください。

──小出監督、一夜明けての何か後悔は
小出監督 タイムも何も言わなかったが、あれが必要だし、これもいる、と言ってやらなかったこと、レース後も、レース中も、今もずっとしまった、と思っている。体を見ていて、ちょっと痩せすぎだ、と、思った、うなぎや肉を食って体重を戻せ、といったけれど、1週間では戻らない。もう3週間前にそれを言っていれば、と思っている。食事も、ちょっと(食が)細いな、と思った。

──アテネは
小出監督 チャンスがないわけではない。もし行けたら、昨日の分までと思って走ってくれるだろう。アテネにはつれていきたいねえ。鈴木(博美、現姓伊東)が優勝したとき、彼女は5000メートルを走ったが、このコースはお前のものだと言った覚えがある。ラドクリフさんのタイムが出ても、17から18分で競り合うことができると、普通なら2分の差があるが、暑さで30秒から短縮する、くだりが得意だからそこでキュウちゃんは1分縮める。マラソンはベストでスタートにつくのは難しい。だからそこでまたラドクリフさんと1分縮めることができる。だから全部で2分半は短縮できる。それから運がいいんだ、走る前からそう思っていたからアテネはずっと行けると思っていた。だからそこに落とし穴があった。

──ではやはりもう1本
小出監督 もうしばらくはそういうことを抜きに、休んでジョッグしてほしい。白紙からのスタートでいい。高橋を100%で走らせることができなかったことは反省している。終わったことを振り返ったってひとつも得にはならない。まあお灸は据えられたと思っている。

──体力が回復するには2か月と言われる。今後国際大会には出られるのか
小出監督 マラソン1回で2ヶ月なんて必要はない。ただ3週間から1ヶ月で風邪をひいたり、体重が増えたり、マラソン1発走ってそんなに疲れるものではない。筋肉のダメージがあるわけではない。まあ今はわけがわからなくなっているだろうが、3、4日すれば飛び出していくだろう、ね?
高橋 確かに練習ではレース以上にハードなトレーニングをやっていますんで、これが2か月もひきずるようなダメージではない、とは思う。ただ、この東京を走り終わって、さあ次とは思っていません。私はまあ100%力を出し切ったと思っている。この後、大阪、名古屋で誰かがいい記録を出しても、それはがんばっている方に、おめでとう、ということでしかない。昨日も、(優勝の)アレムさんと終わって、ありがとう、いいレースができたと抱き合って言うことができた。ほかの人にどうこう、とは思わない。

──マラソンの王者ですよね。ほかの選手からのプレッシャーは大きくなっていくのか
高橋 追われるとか、王者とか、周りの評価で、そうですかありがとうございます、という気持ちしかないですね。自分は高校駅伝で47県中45番だった、特別な才能なんてなかったということが、自分の気持ちの中では大きいですね。今もひとつのレースを終えてフラットの状態です。



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