7月22日

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サッカー

ジーコ日本代表新監督就任会見
(日本サッカー協会)

 日本サッカー協会は22日、東京渋谷区内のホテルで20日の理事会ですでに決定していた11か月の契約について、ジーコ新監督との調印を行った。川淵三郎協会新会長とジーコはこの日、昼食(フランス料理)をともにし、大筋について合意。スタッフの人選などは今後つめていくことになった。

ジーコ監督の就任挨拶(通訳はエジソン氏)

 こんにちは。正式に代表監督として就任でき、この場にいられることは光栄であり、誇りに思う。11年間のサッカーでの仕事を認めてもらい、川淵会長から任務を預かった。みなさんの期待にこたえられるように精一杯がんばっていきたいと思う。

 最大の目標は、常に日本が前進、発展すること。予選突破が最大の目標であり2006年の舞台に日本を導きたいと思う。人生にも常に挑戦が私の生き方だ。この挑戦を通して、日本のサッカーに少しでも貢献できればと思う。

(代表質問)

──引き受けた最大の理由は
ジーコ これからも少しでも日本のサッカーの発展に協力できれば、と思ったことだ。来日してから10年以上になる。その間、蓄えたノウハウを活かして貢献できれば、という思いと、鹿島を通して、名誉ある話は断ることはできない事実でもあり、光栄なことだと思う。ここ近年素晴らしい発展をしている。日本の発展の過程を見続けている。日本代表の監督としてさらに貢献できると思った。日本の国民の私に対する暖かい声援もある。それに応えたい。

──具体的にどんなチームを作りたいか
ジーコ 信念を持ったチーム作りをしたい。選手一人一人が、代表のユニホームを着ることに責任、誇りを持てるような、闘志あふれる、常に勝利に向かって戦っていけるようなチームにしたい。

──日本サッカーの発展をどう見ているか。
ジーコ めまぐるしい発展を遂げてきた。現在はアジアの、頂点とは言えないかもしれないが、韓国とともにアジアをリードする2か国にはなっただろう。選手を輸入国から輸出国と言えるほどに上達している。これからまでの道のりよりも、これを維持していく難しさのほうがある。世界の中の日本という形で、日本のサッカーを世界に発信していかなくてはならない。アフリカもそうだったが、今はアジアというか、世界に新勢力を知らしめていくことが必要だ。そのためにもこの位置を維持していくことが必要になる。

──W杯における日本の戦いぶりはどう思ったか
ジーコ ベスト16について、素晴らしい結果だと思う。グループ1位で素晴らしい結果だった。それ以上を目指す力はあったが、サッカーはあくまでも勝負ごとだから、こういう結果になることもある。常に強くなりたいという気持ち、一歩でも前に進むんだという形にならなくてはいけない。
 前回は予選がない。しかし今回は予選がある。だからこそ、予選をどう戦うかを考えながらチームを作らなくてはいけない。予選を突破してからどう戦うかを決めなくてはならないし、今回なかった予選をどう突破するか、これが重要なことになる。

(個別質問)

──日本には個人技がないように見えるそれはどう思うか。どう解決するか。
ジーコ ブラジルを例にあげること、比較はできないのではないか。(ブラジルは)5度のタイトルを獲得した国、プロとして70年の歴史のある国、日本はプロ化でわずか10年だ。ブラジルは多くの人に愛されて国技でもある。10年と70年以上の歴史は比較できない。ただ日本の現状を見れば、若い世代に才能をもった数多くの選手がいる。彼らの才能が、日本のこれからの力になる。日本の若い世代は、本当にすばらしい才能を秘めた選手が多い。彼らが日本代表の基盤となり、彼らが代表を背負っていくことになる。例えばブラジルには同じポジションに3R(ロナウド、リバウド、ロナウジーニョ)と言われる才能がそろっていたが、(そんな国は)世界中にブラジルだけだろう。恵まれているということもある。しかし日本は十分に予選を突破することが考えられるし、私は彼ら(日本の若い世代)が十分に伸びていけることを考えている。

──五輪チームにどう関わっていくか
ジーコ 常に近くで見守りながら、テクニカルディレクターとして関わっていく。実際には監督はやらないが、連携を取って、近くから五輪代表に力を貸せるような関係でやっていく。2つの代表を監督として兼任するのは、本当に大変なことで、トップだけでも重役である。お互い集中していい仕事をするためには近くからサポーートをしっかりとしたい。

──エゴイスティックなFWについて、個の力のあるFWというものへの印象は
ジーコ その点については、実際に選手たちと話す時間があれば、弱点は伝えながら補っていくことができると思う。鹿島では常に、そのあたりのことを伝えてきたつもりだった。W杯期間中は、うちのFWがレギュラーであったわけだ。エゴイストであってはいけない。FWとしてゴールを狙い続けなくてはならないということだ。監督になれば、彼らに直接的に指導できると思う。

──監督の経験がないことは不安ではないか
ジーコ いいえ。なぜかといえば、自信がなければ、また不安があったら、この大役は受けていない。自分には自信があるから受けたのだから。現場で監督はやっていないといわれるが、別の立場ではあるが、以前の鹿島、常にどのような現状であるかは把握して日々を見てきた。実際には、3度、日本では2度、ブラジルで1度やっているし、監督業は現場の経験以上に、サッカーの現状、今の情報を入手することが大事ではないかと思っている。自分の経験を生かせるという自負があったからこそ、この仕事を受けた。素晴らしい結果は一人で得ることはできない。仕事を分かち合いながら、全員で成し遂げるものだと思っている。常にこういう方針を持ってやってきた。

──輸出国という話しがあったが、中田、稲本がどう貢献したか、中村にどんな期待を抱いているか
ジーコ 海外でプレーすること、これは違う環境で文化も言葉も違う、リーグも違う、こういう険しいところでサッカーをすることは、経験と同時に得るものは大きい。それが日本のサッカーに反省し、彼らが代表に持ち帰ってくれて発揮してくれる。3人だけではなく、海外で活躍している選手もいる。彼らはすばらしいチャンス、環境を得ていい経験をしている。ただし、海外でプレーしているからといって、代表に招集されるわけではない。呼ばれるためには、彼ら一人一人がいいパフォーマンスをしてくれなくてはならない。日々彼らのプレーを見守りながら選んでいかなくてはならない。フィードバックして欲しいし、常に応援している。ひとつだけ彼らに願うのは、常に活動すること、プレーをすることゲームに出ること。これが彼らにとっていかに大事か。常に試合に出ることでコンディションを保ち、アップすることもできる。ピッチで動きまわっていることが一番大事なことで、海外に行くことだけのために海外に出るのは、使ってもらえなければマイナスの影響を与えることもある。チャンスを生かして、常にピッチでできることを願いたい。

──どんなサッカーをイメージしているか
ジーコ 今の時点で弱点、長所など見えないし、言いづらい面もある。指揮をとることによって、どんな選手を使っていくのか、それを見てみないことには、弱点長所が見えてこないと思う。私のサッカー人生では哲学として、サッカーの最大の目的は得点であり、この目標に向かってより攻撃的なサッカーをしていくことだ。これは絶対に変わることがない。それにプラスして、喜びがいつでも伝わるサッカーを、常に展開していきたい。

──今後のスケジュールを。アルゼンチン戦(11月20日)以外では。またコーチングスタッフはどうなるか
ジーコ 現段階では特に決まっていない。唯一決まっているのは、アルゼンチン戦だけだ。ほかには月1回くらいでフレンドリーマッチを行いたいと思う。希望は伝えたが、まだ決まっていない。10月くらいにも親善試合ができればと思う。実際には代表の活動はあまりない。今年は日本のスタッフで望みたいと思う。代表は、いろいろな人たちが集まって、お互いを知りながら、いい環境を作りあげていくもので、別にあせって決めてもいいことはない。特に何を要求するとか、こうしなければならないというものもない。何が日本にとってベストであるか、そこにたどりつけていけばいい。今年は、そういう形でいければと思うが、試合は、W杯の勢いを続けたいので、できれば(希望する試合数を)かなえて欲しいと思う。ただし日本サッカーのカレンダーが決まっているので、ほかのスケジュールに影響を与えてまでやることはないので、それは避けたい。以前まではチーム側の立場として、代表のスケジュールに関して、泣かされたこともある。大事な選手を連れていかれてチームが泣いたこともある。反対側の立場にたったからといってそれを無視することはよくない。いい仕事をするために、気持ちよく選手をクラブが送りだしてくれることが大事だ。今年はそういうことでいい。

──どういう基準でどういう選手を選ぶのか基準はあるか。
ジーコ 実際に名前をあげていうのは次の代表招集までに。ひとつだけいえるのは、W杯を戦った選手がベースになることは間違いないのではないか。しかしW杯以降、常に活躍をしていなければならない。サッカーは過去が良かったというのではなく、必要としているときにベストな状態であるかどうか、それが大事な基準になる。呼ぶときに、どれだけベストな状態であるかどうかで、ブラジルでも長い経験をしたが、その時点でのパフォーマンスがあったからこそだ。メンバー発表は今日明日ではないが、W杯代表をベースに3、4人を加えるだけだと思う。

──親善試合予定以前に合宿はありますか
ジーコ 合宿をやる予定はありません。このことに関しては、協会の技術委員会とも話しているが、方針としては、明確な目的がないことには、選手を呼んで合宿だけを、合宿のためにやる意思はない。試合がないのに、呼んで合宿をやるよりも、各クラブでしっかり練習をしてくれたほうが、私にとってもいい。あくまでも試合という大きな目標があって、そのための合宿であるという考えだ。ただし、大きな大会があり、準備合宿、トレーニングというのなら、十分に必要なものだろう。これは別のもの。試合もなく、目的なく、選手を集めてトレーニングするのは賛成ではない。



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