6月3日
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サッカー
トルシエ監督がW杯初戦に向け会見
(埼玉・浦和市内ホテル)
Hグループ初戦のベルギー戦を前に、トルシエ監督が浦和市内のホテルで会見を行い「突破には最低でも勝ち点4が必要になる」と、具体的なプランを明らかにした。日本代表は、この日夜、試合会場となる埼玉スタジアム2002で前日の練習を行う(冒頭15分のみ公開)。
◆トルシエ監督のコメント(一部抜粋):
「大会の目標は、勝ち点を得ること。このグループは極めてオープンな(どの国にもチャンスがある)グループだ。せめて勝ち点4は必要である。ベルギー戦は、このグループのオープニングで、お互いの知識、研究もあって、完璧に相手の戦術をわかっている。もちろん日本はひとつのダークホースとしてこの試合に臨まないといけない。私はこのチャレンジャーというポジションに満足している。言うまでもなくベルギーは、6大会連続でW杯に出場し、欧州の強豪国だ。日本との初戦をうれしく思っているだろう。このW杯では、ご覧なっているように、きわめてレベルの高い、展開の難しい、大変な試合になるでしょう。日本はベルギーを恐れてはいない。自分のサッカーにおける価値観をしっかり守って、勝ちにいきたい。この4年の長いプロセスに、しっかりした準備もある。そして、これをホームで迎えられることは、アドバンテージでもある。選手はしっかりと準備した。選手はそのときを待っている」
──グループH全体の評価と、(予選を)突破できる可能性について
監督 もちろん、このグループのオープンな性質があって、4チームともが突破するチャンスがあると考えるはずだ。自信を持って日本もチャンスがあると考えている。過去の歴史では、まだまだ一番小さな国でしかない。勝ち点は3でも突破できるし、6点を得ても突破できないケースもある。やはり、勝ち点を持って進むことが大事。初戦は何よりも大事な試合になる。
──明日の試合、勝つ自信は何パーセントか
監督 もちろん100%信じること。同時に、各選手もきっと自信を持っているだろう。最初には、その気持ちが必要になる。従って、ひとつの試合の、細かい展開で決まる。結局、どのチームが突破をするかは、小さいことで決まるはずだ。パーセントで自信を言い表すことはできない。初戦を孤立させて考えるのではなく、トータルで考え、最初は勝ち点を得ることが大事だと思う。
──なぜ、ベルギーは日本と対戦できてうれしいのか
監督 欧州にとって、もちろんベルギーにとって、日本は小さい国であるからです。知っているのは、“中田”でしょう。でもそれが、“ヒデ”なのか“浩二”なのかも、本当は知らないでしょう。簡単に言えば、ベルギーに「初戦の相手として、メキシコかカメルーンか日本かを選べ」と聞けば「日本」と言うでしょう。こちらは、成績としてはアジア杯しか優勝をしていないし、欧州の認めるようなタイトルも持っていない。しかし、ベルギー代表を尊重しながら、イングランドより、ポルトガルより、ベルギーのほうが私たちにとってやりやすいでしょう。ただし、これは理論的なものであって、精神面のことでしかない。今になれば、ベルギーのほうがイングランドと試合をするよりも難しい。ベルギーにも、カメルーンより我々のほうが難しいでしょう。
──積極的な姿勢でベルギーはここまで進んでいる。特にスコットランドでは0−2から反撃した。こういうメンタリティーをどう思うか
監督 私は最初からタフなゲームを想像していた。特にフィジカルの面で。90分で極めて高いプレッシャーでやらなくてはならない。これは自覚している。サッカーにおける価値観をしっかり守っていたい。
──選手の目を見て先発を決めたと話したことがある。明日はどうするのか
監督 今回、選手の目、そして口を見たい。歯を磨かない選手は絶対に使わない。コンフェデ杯の話はイメージでした。実話ではなく、監督は小さなところを見て感性を張り巡らせなくてはならないということだ。選手は常に最後の最後までスタメンになるかどうかを疑いながらいることが大事。前の晩、自分が先発だろうと思っても、もっとがんばらなくてはならないのではと思わなくてはならない。
──西澤、小野は
監督 明日は100%の力で出るだろう。出ないとすれば戦術的な問題だ。
──ミッションは終わったか
監督 確かにひとつのミッションは終わっている。選手の準備も、メッセージもしっかり伝わっている。私のミッションは長い過程を通じての結果。日本は本命。4年仕事をして、やっと日本とベルギーとロシアを平等に扱うようになった。20%の日本人は、W杯に優勝すると思っている。自信を与えたことが私の仕事だった。これからが一番難しい道のりになる。4−0で負けて、サウジのようにアジアの現実を突きつけられるか、もしくは抵抗して日本のサッカーの進歩を示すか。明日は歴史的な勝ち点1を得ることです。
──チームの雰囲気はいいと言っていたが、本当か。個人的にどんなアドバイスをしたか
監督 選手とメディアの関係をしっかりと絶ち切ること、これが私の最初の仕事だった。テレビやマスコミのサーカスのような番組を選手に見せないことは大正解だった。日本のテレビ、メディアはサッカーを扱わない。これはサッカーの大会であって、ほかのものではないことを選手には自覚させることができた。個人的には、秋田、中山の役割は大きい。中田の態度も積極的で満足している。グループは落ち着いてやっているし、アジアを代表し、日本を代表し、とてもポジティブに臨んでいる。今の番組(批判)、というのは、川平さんの番組以外です。
──三都主はどれほど大事か
監督 とても重要な選手であり、特徴を持っているということで非常に重要でもある。ただ、先発か途中からなのかということは大きな問いになる。日本の守備における文化のなさを受けて、どこまでこういう戦いができるかわからないが。
──大会の目標は?
監督 もちろんホストの国として、フランスのように優勝をしたいと思う。しかし目標は3つある。まず勝ち点1を取ること、第二は1勝すること、そして4年のプロセスを注いだことを考えれば、セカンドラウンド(決勝トーナメント)に進むこと。トーナメントは何があるかわからない。ほかの3か国の経験と、私たちの経験のなさを思えば、グループリーグ突破は偉業だ。
──小野のコンディション、ベルギーは非常にタフであること、この特徴に関する解決方法。監督自身の睡眠は
監督 ブラジルのエメルソンの例をとっても、肩に怪我をしてすぐに交代した(交代者がいないのだから万全だという意味)。ベルギーは特にセットプレーに関して極めて高い身体能力を発揮する。これによって、あらゆるアプローチも変わってくる。明日の試合は厳しい展開になる。サッカーは、ラグビーでも柔道でもない。審判の新しいルールに関してもガードするはずだ(接触プレーが度を過ぎることがないだろう、ということ)。ここまで3日間、ゴールの7割はセットプレーから決まっている。残念ながら睡眠はとっていない。W杯への準備をしているから。赤ちゃんのように5分寝たり、泣いたり、しかしこのW杯を迎えることはうれしく思っている。監督である名誉もわかっているし、大切なのは監督よりも選手が眠っているかどうかだ。
──ゴールよりも勝ち点が大切。ただ、グループを突破するにはゴールがいる。今得点しているのは、西澤しかいない。
監督 この時点では(日本の得点力を)心配することはない。西澤は(J2で)2点、中山、鈴木、柳沢もそのくらいしかとっていない。ゴールを決めるのは個人の仕事ではない。自信がある。チーム一丸となって、いつもの積極的な姿勢をもって前進すれば我々のパフォーマンスはチームから、80%は組織から来ると思っている。20%がその上の各選手の特徴です。
──ピッチに出る選手に最後にかける言葉は
監督 このW杯は夢で待っていた。仕事をしたみんなにお返しをしなくてはならない。私はみんなを信頼しているし、選ばれない選手への敬意として自分の全てを犠牲にして、すべてを出し切って戦ってくれ。何の後悔もないように。
小野伸二(フェイエノールト)「2度目のW杯なので、とにかく初戦のベルギー戦で勝利を目指し、日本のW杯初勝利のために全力を尽くしたい。チームメイトのトマソン(デンマーク、対ウルグアイ2得点)が点を取っているので、僕も点を取って喜びたい」
三都主アレサンドロ(清水)「チームの雰囲気もよく、フィジカルでもメンタルでも全員が集中して、試合に出られる準備をしていると思う。夢があって、出場するだけではなく、1試合1試合を大事にしてベルギーに勝って、W杯1勝をあげたい」
中山雅史(磐田)「選手みなが生き生きとトレーニングをしているし、雰囲気もいい感じだと思う。初戦が重要だと、各選手が理解しているし、そのプレッシャーに負けるような選手はいないと思う。強い意志を持ってピッチに立ちたい」

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