5月13日

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サッカー

Special Column
「超・一人時間差攻撃」
(ノルウェー・オスロにて)

 日本サッカー協会が13日、オスロと現地で発表したところによれば、17日、都内ホテルで日本代表23人の発表については、資料配布のみ、あとは監督のコメントを協会が読み上げるだけにすることに決定したという。
 リリースに書かれた“表向きの”理由は、「18日に行われる、フランス対ベルギー(サンドニ)の親善試合を視察したいという要望を強化推進本部が了承し」(原文まま)たことになっているが、「18日の視察は、もうずっと以前から予定されていたものだったのでは?」「17日の夜、もしくは18日の朝に日本を立つフライトならば、試合に間に合う予定のはず」とメディアから指摘されたことで“本筋”が崩れ、結局「発表には出席したくないから」と、強化推進本部・加藤部長も認めざるを得なくなってしまった。

 そもそも4月22日の会見(スロバキア、ホンジュラス戦)で、「代表の発表は、私のラッキーナンバーである17日に繰り上げる」と自ら発表したのは、トルシエ監督である。
 登録期限一杯の21日では、欧州遠征の帰国後時間があり、選手への負担になる。多くの雑音を避けたいとの希望からで、「17日選択」は、協会もメディアへの(悪い意味ではなく)「カウンター」として賛同。第一に、監督が会見に出席することは暗黙の了解の上での選択だった。
 ところが欧州遠征が始まり、レアル・マドリード戦後のマドリードでの合宿で、現場の事務統括である加藤部長に「17日の会見には、出席したくない」と監督が伝え、岡野会長、強化推進本部・木之本興三副本部長と国際電話で慰留、説得などやり取りを試みたが、13日発表された、監督が会見に出席せずプレスリリースのみといった、「欧州遠征から間髪を入れずに発表してなおも海外への視察に出かけられる日」として選んだはずの17日案は脆くも崩れ、「視察したいから出られない」と、まるで整合性に欠けた結論に至ったわけだ。

 この日のブリーフィングで加藤氏は「世界中の監督がさまざまなやり方でさまざまな発表をしている」とした。
 しかし、ここ1週間でもアルゼンチンのビエルサ監督、ブラジルはフェリペ監督、イタリアのトラパットーニ監督、イングランドのエリクソン監督、そして共催のパートナー、韓国のヒディング監督もそれぞれリストをもって会見を行っている。
 さまざまな方法があることは認めるとしても、会見の日に代表監督が出席しない理由を、「どこかの親善試合を見たいから」と母国に帰る監督も、それを認める(少なくても拒否はしていない)協会も、そう多くはないだろう。

 ブリーフィングでは、さらに、「それでは18日にパリで会見すればいいではないか」「試合後、帰国してすぐに成田で話せばいいはず」と報道陣から指摘された。しかも21日には、スウェーデン戦(25日、国立)に向けた会見が行われることになっており、この際には「W杯のメンバーについての質疑はしない可能性が高い」というから、監督が選手を選んだことについては、監督の口から説明されることはほとんど不可能のようだ。
 最初から、「混乱を招きたくないから発表はリリースのみ」、とするならまだわかる。またこの日も、「17日としたが、視察もあるので、21日に発表を再度変更する」とするのであっても、これもまだわかる。しかしいちいち人を集めては、もっともらしい理由をその度に説明し、それを変更するのでは、日本バレーのお家芸「一人時間差攻撃」さながらであり、もはやブロックに飛んでいる時間もなくなっている。

 ブラジルのフェリペ監督が代表発表の会見で「たとえどれほどの批判を受けても、私が決めた代表で戦い、それで負けても、私は私の責任は取れる」と、百戦錬磨の監督がじつに緊張した顔で話していたのを見た。
 監督にとって、代表の発表がどれほど世間に対して選手に対して辛く、他国に対してもプレッシャーのかかるものか十分理解はできる。しかし、本番前最大のプレッシャーと向かったときにわかる、監督の底力ともいえる「度量」もあるだろう。問題は、リリースのみの発表の是非ではないこと、とにかく、17日は会見を行いながら会見はない、ということだけは間違いないのだが。


続報
トルシエ監督会見より

 ノルウェーとの親善試合(14日、午後5時45分キックオフ)を控え、11日に甥の事故死のために代表合宿を離れフランスに帰国していたトルシエ監督が午後になり会見を行なった。この日午前、監督が17日の発表はリリースのみで会見に出席せず、フランス対ベルギーの親善試合を視察することが発表されたが、「監督から会見はやりたくない」とされ、説得し妥協したとする協会に対して、監督は会見で「そもそも会見などやるつもりは最初からまったくなかった」と発言。矛盾ばかりを生む、さらに訳をわからなくする会見だった。

(冒頭、甥の亡くなったことについて、記者から哀悼の意が伝えられる)
監督 明日の試合を通じて、欧州遠征最後の試合を迎える。繰り返しになるが、第一目標は、国内の環境を切って、一度離れた国内の圧迫を避けた中での準備をすることだった。スペイン合宿に関しては、天気も悪く、孤立していて、環境は悪くないし、経験になった。みなさんはホテルを見たかわからないが、ひとつの船のように外は海しかない、出られない、そんな状況だった。そのお陰でもともとあった連帯、人間性を磨くことができたともいえる。コンディションに関しては、予測していたより暑くはなかったし回復はできた。頭も精神的にも選手の状態には満足している。ノルウェー戦では海外の3人も集合しており、彼らは4つのトロフィーーを獲得して彼らに限らず、4つのトロフィーのおかげで自信をつけた。そして日本人のイメージに対しては、重要な4つのトロフィーとなった。前進しかない。明日の試合は、前の試合に負けない重要な試合になる。W杯の99%はここ(明日の試合)にいる中から選ばれるので、明日が最終テストといった意味はまったくない。怪我人が出ないようにすること、また明日の試合の意味合いは、警告の累積など、W杯のシミュレーションをきちんとしたいということになる。23人については5月17日に予定通り発表をします。もう一度はっきり申し上げます。明日の試合には23人の決定は関係ない。4年のロジックを含めて考えたもので、特徴、バランスをもったものになる。このリストについて頭の中にあります。

質疑応答
──なぜ発表はラッキーナンバーとした17日に、自分でやらないのか
監督 他の国とまったく同じやり方であり(?)普通のロジックの普通の発表であり、その日を特別な日と扱うつもりはない。他のものと同じスタンダードでやりたいと思う。何度も言うがその日を特別な日だとは思っていない。

──前回の監督(岡田監督)は、自分の口から発表したが、監督にとって、17日と18日の試合ではどちらが大事なのですか。
監督 繰り返しますが、18日の試合だ。17日の発表はとくに驚かせるものはありませんし、ロジックの結果に過ぎない。とりわけひとつのグループができていて、安心して彼らを見守るだけで十分だし、私がいなくても問題ない。それよりもグループリーグの対戦国を私が見ることのほうが重要で、発表はひとつのロジックでしかないし、特に新しいことはありません。

──欧州遠征も最後になるが
監督 チームの団結に関しては成熟していた。グループは落ち着いていたし、4つのトロフィーを通じて、こういう国際大会のタイトルを獲得できる自信をつけた。こういう努力をすれば、こういう人間として人生を送っていければ、成功できるとのという確信をつけている。

──今まで交代枠が多い(親善試合で)やっていたが、もし3人の場合は不自由がないか
監督 いや特に問題はない。まず親善試合はシミュレーションとか、グループリーグのシミュレーションに使っているということではない。残りの10%、W杯に参加するチャンスがない選手に試したいということで、1つの完璧なリハーサルとして考える試合ではないのだから。

──先ほど、ほとんどの国がリスト発表だけでやっている、と言うが主要国はほとんど、監督が会見を行なっている。
監督 情報は明らかに(記者と)違うが、イングランドもフランスもイタリアも、ブラジルもリストだけでやっている(エリクソン、トラパットーニ、フェリペ、それぞれの監督が会見を行っているので勘違いか)。フランスの例をあげれば、23人のリストは特別なイベントでもない。大体こういうグループになるでしょう、とメディアも世間も思っているものであって、このグループで、このロジックでいくと思っている驚きのないものだ。フランスでは発表の日がいつなのか、とは誰も言っていない。

──18日の試合はずっと前から決まっていたことのはずで、いつ会見をしないと決めたのか。
監督 リストは21か20日に発表するつもりだったが、選手の精神状態を思うと欧州の帰国後4、5日あると早く決めるほうがいいと思った(ので17日に早めた)。会見に関しては、最初から開くつもりはまったくなかった。それに関しては会見を開く必要がないと思っているし、私にとって選ばれた選手だけが大事であって、どうせ日本にいる評論家やマスコミが色々と言うだろうし、それは彼らに任せたい。今後にとって必要な議論だとは私は思わない。私は、新しい大統領として、大臣を選んだのであって、この大臣について、一々大統領が発表することはないのが普通だ。

──怪我人については
監督 右もも痛の松田は、今日の夜から合流する。柳沢はずっとチームとやっているし、西澤と中村は完全にチームと別で練習はできない状態にある。西澤は、しっかりと我々の代表のメディカルな情報を得て、17日の選択をしたい。代表としてイエスと言いたいが、ドクターの報告をもらってからの選択になる。そのリカバリーに関しては、ベッカムのように、17日に治らなくてもW杯の初戦に間に合うのなら選ぶという考えもあるだろう。



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