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※無断転載を一切禁じます ★☆★欧州遠征 現地レポート★☆★ レアル・マドリード×日本
序盤は、雨のために芝が滑り、早いボール展開の中、レアルの左サイド、ロベルト・カルロスを起点とした攻撃、また中盤での正確なパス回しに日本は立ち上がりのプレスがきかず苦戦をする。攻撃では常に先手を奪われ、ボールが中盤でうまく回らず、単調な展開に終始してしまいシュートまで打つことができない。 前半13分、稲本潤一(アーセナル)がファールを誘い、ゴールほぼ正面からフリーキックを三都主アレサンドロ(清水)が蹴る。しかし大きく外れてしまい、その後も稲本のロングシュート、またオフサイドラインを抜けた、負傷中の柳沢 敦(鹿島)が30メートル近いループシュートを試みるが、これは失敗。 27分、左サイドからのフリーキックを与え、ここでロベルト・カルロスがキッカーとなる。ゴール前では、曽ケ端 準(鹿島)が森島寛晃(C大阪)と柳沢の2枚の壁に対して直接狙う可能性を示唆して声による指示を出すが、ゴール前でオフサイドをかけた瞬間、宮本恒靖(G大阪)のマークをすり抜けたコンゴに飛び込まれ、オフサイドポジションながら、スネのあたりで決められてしまった。 この後、レアルは「出場30分まで」と、事前に言われていたフィーゴ、ロベルト・カルロスが見事に30分で交代。雨は激しくなる一方で、序盤には滑っていたボールが今度は水たまりに引っかかるようになって、ボールが動かなくなってしまった。 前半は日本のシュートわずか3本、コーナーキックもなく、レアルにボール支配率でも70%を占められて、試合をさせてもらえなかった。 後半、日本は、西澤明訓(C大阪)の急性虫垂炎での緊急手術による離脱のために、負傷しながらギプスをつけて強硬出場をした柳沢が久保竜彦(広島)に、三都主が服部年宏(磐田)に、明神智和(柏)が市川大祐(清水)と、森島が小笠原満男(鹿島)と交代して挑む。 しかし後半も、悪化するピッチコンディションの中で圧倒的にボールは支配され、またファール数でも(後半15分時点で)レアルの12に対して、日本は25と、反則で止めるケースが目立つ。 さらに、昨年4月のスペインとの親善試合以来となる中澤佑二(横浜FM)が出場し、また、今季開幕から絶好調の山下芳輝(仙台)は昨年のキリン杯パラグアイ戦以来となる出場を果たしたが、追加点は奪うことはできず、「フェスティバル」と監督も位置つけていたゲームは0−1のまま終了した。 代表は11日まで現地で合宿(すべて非公開)を続けたあと、ノルウェーに移動。14日の親善試合に備える。 ◆試合後のコメント: トルシエ監督(抜粋)「(オリンピックの父である)クーベルタン公爵の名言ですが、(今日の試合は)参加することに意味があった。ノルウェーは雪になると言われ、1。2万キロの長旅があり、今日はきちんとした試合ができなくてとても残念です。私は説明ができないが、日本には解説のスペシャリストがたくさんいるので、論評は彼らに任せる。 曽ケ端 準(鹿島)「(失点の場面について)ディフェンスがラインを上げてオフサイドを取りに行った。オフサイドではないかと思いましたが、アウェーですし、レフリーがそう判断したんですから仕方ありません。壁の位置を調整していたのは、ロベルト・カルロスが左足で直接狙ってくるように見えたのでニアを切っていこうと思った。ピッチはいいに越したことはないけれども、こういう中でできるだけ落ち着いた試合ができたし、今の自分にとっては試合をこなしていくことが本当に大事になると思う。難しい試合でした」 松田直樹(横浜FM)「昨年のサンドニでの試合(対フランス、5-0)に比べれば、下は硬いけれども滑っていた。こんな状態の中でも試合をできたのは慣れでしょうね。もっとも、レアルは本気ではないし、ロベルト・カルロスもあんなもんじゃないでしょう。失点の場面は、僕はオフサイドじゃないと思う。流れの中で失点したのではなくてよかったと思う」 三都主アレサンドロ(清水)「もっとやりたかったけれども、グラウンドの状態がひどくてスピードに乗ることができなかった。前半にチャンスを作っていたけれど、難しい試合になった。(フィーゴと対面した場面は)コウジ(中田浩二)がカバーしてくれていた。レアルは個々の技が非常に高くて、こういうチームとできたことはよかった」 稲本潤一(アーセナル)「こちらに来てからコンディションがすごく上がってきている。試合そのものはいい経験になったと思う。ただ、向こうのモチベーションはあまり高くはなくて……。もっと自信を持ってプレーをすればいいと思うし、今日は90分できたのがよかった。最後は足がツリかけていた。また1週間挟んですぐもう1試合ノルウェーとやらなくてはならないから、しっかりと体を整えていきたい。ディフェンスはもう少し修正点があるように思えます」 宮本恒靖(G大阪)「立ち上がりは攻撃のほうで落ち着きがなく、ディフェンスラインと、ズルズル下がり気味になってしまっていた。レアルは、日本の弱点のどこをつけばゴールが奪える、とわかるのが非常に早い時間帯だった。サイドから崩す相手の場合のラインの上げ下げ、セットプレーでの弱点を克服していきたい」
明神智和(柏)「こういう悪い状況の中でもなんとかできることがわかった。それは収穫でした。ただ、プレッシャーを前からしっかりかけていけなかったことは残念です」 市川大祐(清水)「途中から入ったので、攻撃に参加していっていいのか、どこに残ればいいのか、それがよくわからない部分もありました。芝生も芝生でしたし、いいところでやりたかったという気持ちはあります。ただ、今日は自分なりにアピールできたと思う。疲れがたまっているような感じがするので、明日からもうまく調整していきたい」 柳沢 敦(鹿島、ハーフタイムでの交代後に、カゼによる発熱でチームとは別行動で帰宿)「とにかく疲れた。手は大丈夫です。交代して、ロッカーに戻ったときに熱が出始めた」 日本サッカー協会/岡野俊一郎会長「まず、亡くなった宮本征勝さんにご冥福をお祈りいたします。彼はドイツのクラマーさんからプロフェッショナルというあだ名を付けられていたほど素晴らしい選手だった。ホンダへ行って鹿島へ行って初めての優勝を果たして、指導者としても力を発揮していた。63歳で死なれるのは本当に耐えられない。これで本当に、東京、メキシコ(の代表)で4人の選手が亡くなってしまった。何事も順番があって、若い選手が先に逝ってしまうのは本当に残念だ。
「ストレス性疾患」 ハーフタイムにロッカーに戻った柳沢は、身体のだるさを訴え検温をしたところ発熱していたという。その後、体調が回復しなかったために、「窮屈なバスとは別に、広い車に乗せて眠らせていきます」(広報)とのことで、別行動で宿舎へ戻ることになった。このため、ミックスゾーンを通過しなかったので表情はわからない。ギプスをつけたまま、転倒のたびにひやひやしたであろう手の甲は「大丈夫」とのことだったが、広報を通じて発表されたコメントは、「とにかく疲れた。その一言です」というものだった。選手は普通、手を変え品を変え、さまざまな表現を使って自分が無事であることを伝えようとするもので、本気で「疲れた」と言ってしまうようなことはあまりないだけに、本人不在ながらインパクトのある言葉に聞こえた。 柳沢のコメントを、何を軟弱なことを、プロのスポーツ選手ではないか、と叱咤もできる。気温が一気に9度まで落ち、北風が吹き荒れる中で取材をし、雨が激しく吹き込むミックスゾーンで、取っているメモのボールペンのインクさえにじんでしまうような状況の中、体力を使い果たし、約1時間半バスに揺られて今、ようやくホテルに到着。食事もしないまま、また、8日の午前7時にはホテルを出発しなければならない記者もたくさんいる。しかし、原稿を書き上げるためにロビーで打ち合わせをし、パソコンを打ち続けなくてはならない。今、午前2時である。 この日の試合を分析やコメントするのは、監督も「非常に難しい」と話したが、その通リのはずだ。柳沢のコメントが象徴したのは、日本代表の精神面的な負荷である。“内的ストレスの形”である。国内でコスタリカ、スロバキア、ホンジュラスと戦い、その間、カップ戦があり、合宿をこなし、みな疲れている。チームコンディションでは、今日はドン底だったと思う。 一方、チーム戦術、テクニックといった面でも“外的なストレス”が大きなひずみを生んでいる。前半27分の失点のシーンである。 中田英寿(パルマ)、小野伸二(フェイエノールト)もまた、彼らの勤勉さと欧州リーグの困難のために、シーズンを通して大きなストレスと戦い、それをようやく終了してノルウェーで代表チームに合流する。彼らの存在がいい状態を導くものであってほしい。
西澤選手が緊急手術 日本代表のマドリード遠征で、西澤明訓(C大阪)が市内で急性虫垂炎の手術を受けたことを7日午前、サッカー協会強化推進本部が発表した。
「離脱者続出の理由」 もしそれがわかれば、トルシエ監督も何としても知りたいのではないか。
高原、柳沢、西澤、中村、さらに遡れば今年に入ってから、1月にはDFの上村健一(広島)がひざの靭帯損傷で手術、森岡隆三(清水)の肉離れ、服部年宏(磐田)の急性腹膜炎、伊東輝悦(清水)のひざ靭帯損傷、川口能活(ポーツマス)もひざ靭帯損傷と、非常事態である。 2年前の同時期、前回フランス大会の際を見返すと、中田英寿(パルマ、当時は平塚)が5月中旬、最後の国内合宿(御殿場)で軽いアレルギーで発熱した(1週間でチームに戻る)ことと、井原正巳(浦和、当時は横浜)がスイス・ニヨンでの合宿中、練習の接触からひざを痛めアルゼンチン戦への出場が危ぶまれた(結局は出場)ことだった。 国内でのW杯を前に、何故こういった状態がおきるのか不明で、偶然も重なってはいるだろう。 しかし、西澤が3週間ほどの回復期間を必要とすると診断された現時点で、最後のテストマッチとなる25日のスウェーデン戦に、ベストメンバーが揃うことは難しい。選手はこの日、西澤の病状について説明を受けることになっているが、マドリードは気温が13度と、この季節では珍しく一気に冷え込んだ。風邪、体調不良などを訴える選手が、今後ノルウェーの遠征でも心配される。 望みは、選手個々の、復帰への懸命の努力以外にない。選手はW杯絶望、ピンチといった表現とは別の次元で回復に努力を続けており、その力だけが「奇跡」と言われるものを起こせるのかもしれない。彼らにとってこんな苦しいこともないはずだが。 日本代表は試合を直前に控えた現地午前11時、入院中の西澤を除いて選手全員、スタッフが揃って約1時間の散歩をした。
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