4月20日

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サッカー

J1 1stステージ第7節
ジュビロ磐田×横浜F・マリノス
(静岡・ジュビロ磐田スタジアム)
キックオフ:15時05分、
観衆:16,765人、天候:曇り

磐田 横浜FM
1 前半 0 前半 1 3
後半 1 後半 2
46分:服部年宏


ウィル:2分
中澤佑二:55分
ウィル:87分

 W杯前最後のリーグ戦となった、全勝の磐田と1分けながら負けなしの横浜FMとの首位攻防戦は、横浜FMが前半開始2分、中村俊輔のフリーキックからウィルが決めて先制し主導権を握った。
 組織力、運動量、個々の力、どれもが拮抗している対戦の中で、横浜FMは中盤の上野良治、古巣との対戦となる奥 大介の2人が早い守備からボールに集まり、磐田の前線と中盤を寸断。スタートからスピード感あふれる試合展開をラストまで続ける、集中力とフィジカルの充実ぶりを見せた。
 前半2分、1週間前まで風邪をひき、一時は39度の発熱を出していたウィルが中村からのフリーキックを受け、DFを抜いたところで左足でシュート。ファーストシュートがゴールとなって勢いに乗る。
 中村を攻撃の中心として、大きなサイドチェンジ、ロングパスと、この日の磐田がコンパクトなパス回しを軸としたのとは対照的に、磐田DFを動かす。前半は磐田のチャンスもあったが、これをしのいで後半へ。
 後半開始1分、立ち上がりに猛攻をかけてきた磐田の攻撃から、奥が服部年宏にボールを奪われ、これをそのままゴールされて同点となる。この後、積極的にボールを奪いに体を張っていた中村が、服部と衝突した際、左ひざを打撲。バンテ―ジを巻いて、ピッチですぐに痛み止めの錠剤を飲んでゲームに戻る気迫がチャンスを呼びこみコーナーキックのチャンスを迎える。10分、またもセットプレーのチャンスに、DFの中澤佑二が、磐田のゴール前の鈴木秀人、田中 誠、福西崇史の3人の間を見事に抜けて飛び込む高いヘディングでゴールを決め、2点目をものにした。
 また、横浜FMは開始からまったく運動量が落ちない驚異的な底力で、チーム全体が機能し続けた結果、終了間際には、左サイドから奥がゴール前に高いロングボールを上げて、これをウィルがヘディングで決め、磐田を完全に突き放した。横浜FMはこれで勝ち点を18として、中断前にトップの座へ。中村は、レアル・マドリー(スペイン)との移籍を前提として、これが国内での最終ゲームになる。この日も2アシストと決定的な場面で仕事をし、これで今季3得点6アシストと、代表のメンバー争いにも、好調の波を持ち込める結果となった。
 一方、磐田は、名波浩が故障復帰から初めてフル出場を果たして順調な回復振りを示した。

ウィル「2得点はもちろんうれしいが、もっと大事なのは勝ったこと。今週は風邪からの病み上がりで息をするのもちょっと苦しい状態だっただけに、心配もあった。中村が最後の試合だということは聞いていたし、知っていた。チームとしても個人的にも、彼が離れるのは寂しいが、いいプレーを目指し、成功してほしい」

服部年宏「お互い、いい形で、いい試合ができたと思う。負けたといっても、これで優勝が消えたとかそういう話ではない。ちゃんとサッカーはできていたと思うし、セットプレーで2失点したのは、反省材料としては非常によかったと思う。こういう日もあるでしょう」

中山雅史「(GKと接触した際、ポストに激突ししばらく治療を受けた場面について)バランスが崩れてポストに当たってしまった。何でもない。中断前の状態としてはまずまずで、悪いわけではないでしょう。自分の出来は最悪だった。チームの一員として仕事をしていなかったし、もっと積極的にやらなくてはいけなかった。(代表について)別に。組織的な攻撃ができるように、ここでもう一度、自分たちのサッカーを見つめ直していけばいいと思っている」

◆短信:試合後、今月上旬からチームを離脱し肺炎のため入院治療を行っていた高原直泰についての発表が行われ、「肺動脈血栓塞栓症(はいどうみゃくけっせんそくせんしょう)」との新たな診断結果が発表された。22日に退院することが決まったが、症状が安定するのには時間がかかるために、治療を続けながら練習の再開、代表復帰を目指す。→ 関連コラム


「解放感」

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 代表の合宿、ゲームでは、多くの選手が機能や役割、さらには代表に選ばれたいと願う当然の欲求、そして監督の視線に、ミスをしたくないと思う消極的な姿勢、これらによって良くも悪くもがんじがらめになる。コスタリカ戦の小笠原満男(鹿島)も、試合前指示されていた役割とは別のものをピッチで求められて混乱したに違いない。

 中村はこの2、3年、トルシエ監督の代表下で、左サイドをこなし、トップ下をこなし、自らのプレーのアイデンティティを築くことが非常に困難だったはずだ。さらにチームに戻れば求められる役割は決まっている。両方の川岸を行き来するたびに、体力を消耗し、時間を消耗し、精神力をすり減らしていただろう。
 しかし、今年の中村の変化は、自分の岸についたときの強さだと、この日の試合を見ながら理解できた。開始から、持ち味だった持久力にさらに磨きがかかって、90分フルに走り、以前は常に指摘されていた「試合から消える」ことが一切なかった。

 自分の居場所への自信と技術、それを支えるフィジカルの充実ぶりによって、がんじがらめだった自分とプレーを解き放った感じがする。後半の得点になったコーナーキックは、実際2分で蹴った「3部作」ともいえるものだった。うち左からの2本はほぼ同じ地点にあげている。3本も、正確に、しかも厳しいところを突かれれば、DFはどんなに辛抱しても嫌なものだ。同じところには来ないだろう、と読んでいた左からの2本目、福西が前に出られ、鈴木は別のマーク、田中は前に、と3人のちょうど等距離に、中澤が飛び込んでいる。
 パスの種類も多彩だった。守備でも最大限の力を発揮した。服部との衝突でドクターが心配したときにも動けないなか、「出ます。戻れるから」と先にアピールしていたという。

 これが最後のリーグ戦になる。従来、それがホームでもアウェーでも、選手は必ずお別れセレモニー的なことを行なってきたが、この日中村は一切そうした「行事」はしなかった。まだ詳細が決定していないからでもあるが、むしろ新鮮だった。

「1点目はいつも練習通りのパス。2点目は、佑二(中澤)がデカイんで(よく飛び込んで決めた)。あのファールは、僕は(服部を)抜けきれずに、引っ張ってしまった形。名波につけ、と言われたんですが、中盤の前同士の選手なのに……。大ちゃん(奥)と、良治さん(上野)と3人でマークした。個人的には、去年の2ndステージの磐田戦のほうがもっとよかったと思う。この流れのまま代表に行きたい。公約(全勝する)果したか? いや全勝じゃないからね。これがJリーグ最後の試合って? 全然、意識してなかった」

◆短信:左ひざ打撲について、横浜F・マリノスの平沼ドクターは、「試合後ちょっと痛みが出ている。ひざのお皿のちょっと上くらいを打撲していて、今日は様子を見て、明日もう一度連絡を取って相談する。精密検査などは、靭帯がどうかなっているわけではないのでしないでいいと思う」


「エコノミークラス症候群」

 9日に緊急入院し肺炎とされていた高原直泰の病状が、この日改めて発表された。「肺動脈血栓塞栓症」とは、わかりやすく言えば、ここ2、3年、飛行機で注目されている「エコノミー症候群」に端を発したものだという。
 エコノミー症候群は、長時間狭い空間でじっとし、さらに水分の補給が十分でないことから、血液の循環が滞り、下肢に血栓ができ、そこから、血管の抹消に血栓が飛ぶ「抹消型」と、臓器の中枢に飛ぶ「中枢型」両方がある。中枢の症状で、肺から心臓を直撃した場合には死亡するケースもある危険なもので、航空会社では、これらを防止するために水分の補給と、ストレッチ体操などで関節を動かすよう飛行機内でアナウンスすることを義務づけるなどしている。

「一般的には中年の方に多く、高原選手のような若い選手がなるのは極めて稀なケース。急性の疾患で、最初は、下肢深部静脈血栓があった(足に血栓ができていた)が、これが肺まで飛んでいった結果、肺の抹消に血栓を作り、これがかさぶたのような状態となって、肺炎の症状を出していた。肺に影があるため検査を再度行った結果、第一要因は判明した。血栓が解けるような薬を投入して、今は肺周辺の血栓を溶かして消す治療を続け、これが回復しているので一応は退院できるが、どれくらいで治る、とか、どれくらいなら支障がない、と、血栓が消えない限りはいえない状態で、欧州遠征に間に合うとかW杯はOKとは、今言う段階ではない」
 横地チームドクターはそう説明する。

 もっとも、熱もなく、本人は非常に元気で、見た目もまったく普段と変わりがないという。自転車をこいだり、軽いトレーニングは可能で、「自覚症状が全然ないので、早く動き回りたい」と話しているそうだ。食事も普通にとれるが、血栓を溶かすための薬物投与のために、出血した際には止血しにくい。これだけには注意するように言われている。
 退院後は、クラブハウスで別メニューでの調整に入る予定だが、検査と平行しながらで、どういったリハビリになるのかは未定。厄介な病気で、「本人には辛いが我慢することだけが最善策」と、ドクターは話している。
 高原にとって、もどかしい、辛い日々になってしまうが、我慢なら誰にも負けないだろう。克服して復帰することを祈るばかりだ。



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