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※無断転載を一切禁じます ★☆★ Special Column ★☆★ ウクライナ戦翌日、関空(関西国際空港)からイタリア・ミラノに飛び、翌日、サルバトーレ・スキラッチ(元磐田、90年イタリアW杯得点王)に会うためシシリア島に渡った。1週間の出張は短く楽なものだが、毎日移動をするのはなかなか苦しい。移動の時間を考え、この間、時差に合わせて原稿を書かねばならないとなれば、シビアな状態にならざるを得ない。しかし、物事にはレベルがある。さらにはるか上を軽快にかけて行く人もいる。 ユーべ戦でフル出場した翌朝、つまり試合直後の深夜にパルマからミラノに移動し、早朝の便に乗っていたのである。シシリア島ではパルマ戦をテレビで観ることはできず、しかも朝5時半に出たために、あのどぎついピンクの新聞(ガゼッタ・デッロ・スポルト=イタリア最大のスポーツ新聞)もまだスタンドになかった。
書いてしまえばたった1行で済んでしまうような「日常」である。 27日のポーランド戦(ウッジ、2−0)で、多くの記者たちが驚いたのは、もちろん彼のプレーそのものの品質であり、それを支える彼のコンディションであった。試合に出ない、しかもベンチに座らないゲームさえある今シーズンでありながら、ぬかるんだピッチを誰よりも力強く駆け回り、90分をまるで「いつものように」使い切ってしまう。代表にはフィットしていないと言われ、今のコンディションでどこまでできるかはわからないと監督は試合前、指摘していた。 しかし中田が水面下で何を、どうしていたのか、なぜ高いパフォーマンスを維持できるのか、それは出ない試合が多い今だからこそ、如実に浮かび上がってきたのではないか。維持しているのは、コンディションではなく、高い意識、ただその1点だ。常に評価と重責にさらされる緊張の日々に挑もうとする、彼のサッカーへの畏れだ。 もちろん中田だけではない。しかし彼は日本を出てもう4年、文章にしてしまえば1行ほどの、しかしとてつもない移動や環境の激変に耐えて「結果」を出し続けてきているのだ。腕を組み、座席を少しも倒すことなく目だけをつむり、もちろん一睡もしてない姿を見ながら、あらためて考えた1行では、もちろん何十枚書いたとしても伝えられないリアリティがそこにある。 28日、ワルシャワからまた同じ便で会い、ミラノで別れた。
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