3月10日

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サッカー

J1 1stステージ第2節
東京ヴェルディ1969×ジュビロ磐田
(東京スタジアム)
天候:晴れ、弱風、気温:19.3度、湿度:20%
観衆:23,152人、15時04分キックオフ

東京V 磐田
2 前半 0 前半 0 3
後半 2 後半 3
56分:マルキーニョス
82分:オウンゴール
高原直泰:75分
金沢 浄:80分
藤田俊哉:84分

 試合の前半、東京Vは中盤でもたつく磐田の連携ミスを拾って、前線のマルキーニョスにボール出すなど優位に攻撃を展開した。無得点で折り返した後半11分、ハーフライン付近で磐田の大岩 剛が一瞬、トラップに戸惑った隙を見逃さず、マルキーニョスがこれを奪って一人ドリブルで持ち込む。磐田のDF3人をかわしてゴールを奪って先制をした。しかし、この6分後、前半に警告を受けていた長田道泰が2枚目の警告を受けて退場。この不用意な警告によって、情勢は一気に磐田側に傾くきっかけとなった。
 数的不利から中盤のマークが緩み、攻め上がる磐田のFW高原直泰、中山雅史に再三の突破を許す。75分、中山から藤田俊哉に出たボールは流れたが、ジブコビッチに拾われ、中に走り込んできた高原にシュートを許してしまう。これで同点に追いつかれ、磐田に勢いを与えてしまった。5分後の後半35分には、高原が持ち込んだボールをまたも藤田にシュートされ、これがDFにあたって結果的に「アシスト」に。金沢 浄がこれを右足で決めて、東京Vは先制点をものにしながら負け越す。
 ドリブル突破で磐田のDFを翻弄してきたマルキーニョスが直後の37分、またも鋭い突破からオウンゴールを誘って同点にし、試合を振り出しに戻したものの、最後は、ハンドからPKを与えてしまい、これを藤田に決められ2−3。東京Vはエース、エジムンドを欠いたまま、開幕2連敗を喫してしまった。
 磐田は、本来の華麗なパス回しで展開する中盤が機能していないものの、泥臭い勝利でこれで開幕2連勝。結果で前進する形で、帰国した高原も国内復帰後、初ゴールを奪い、観戦していた日本代表トルシエ監督も満足気だった。

試合データ
東京V
磐田
8 シュート 16
11 GK 7
7 CK 5
17 直接FK 16
3 間接FK 6
0 PK 1
中山雅史
「(機能していたのは)最後だけです。先制されて慌てたこと、さらにロングボールばかりで偶然性に頼ったサッカーになってしまった。もっと意図をもたなければいけないと思う。高原ともトップとしてスペースを狙っていくような動きをしたが(高い位置にいて、中盤との)間があいてしまって独り善がりのプレーになってしまった面もあったと思う。藤田とは試合後話しあって、FWが高い位置にいるので、フォローしようにもフォローできない、と言われた。これからこういう材料をプラスに変えていかないと。結果が出なければ、みんな不満が噴出するわけですから」

高原直泰「全体的なバランスにはまだまだ修正しなくてはならない点が非常に多いと思う。開幕戦と同じように、ロングボールの多用で、かなり距離が開いたサッカーになってしまっている。(得点について)あそこまでは何か落ち着けない感じだったが、(個人的にもチームとしても)あれで、少し落ち着きを取り戻したような感じですか。(トルシエ監督の話を聞かれ)試合は集中してやるだけです」

ミスから相手に得点を許した大岩 剛「チームに申し訳ないし、もし負けていれば、どんな言い訳も通用しなかった。みんながフォローしてくれたことをありがたいと思った。ああいうプレーは、DFにとっては命取りとなるし、1本のミスが全評価になるのはぼくらの(DFの)宿命です。試合中、切り替えて行くことだけを考えた」

マルキーニョス「前半から得点を狙っていたので、どんなチャンスもものにしたかった。ミスを狙うこともFWとしては重要で、あのシーンでは(大岩のミス)トラップの瞬間を狙っていたので思い通りだった。前半はドリブルでの突破、後半、人数がかけてからはカウンターとしたが、常に前を向いてプレーをすることを心がけた。今、ヴェルデイに足りないのは、ゴールと運だと思う」

観戦したトルシエ監督「いい試合だった。今はシーズン始めでもあり、(得点した)高原の動きもあんな感じだと思う。これからステップ・バイ・ステップだと思う。(森岡のケガ再発について)まあ6週間で治ったとして4月、まだ8週間、準備期間があることを思えば、選手には『ドント・ウォーリー』と言うことも大事だ。決してネガティブにはとらえていないし、ポジティブに考えていく」※明日11日から、代表候補は静岡県内で2日間の合宿を行い、ウクライナ戦に向けメンバーを整備する。


「サッカーは何人でやるのか」

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 3バックに、果敢なドリブルで一人挑んで行ったマルキーニョスに試合後聞いた。シュート4本、ドリブルで持ち込んだ回数を含めれば、数的不利を背負っていたとは思えないような果敢なプレーは、この試合のメインディッシュであった。あれだけ積極的に「前を向く」姿勢には、敗れたとしても、一人で勝負をするというサッカーの基本的な醍醐味があったように思えたからだ。
 1対1どころか、試合中何度も、1対3、1対4の場面で、磐田の誰もが止められないシーンが続出した。珍しいケースだ。

「もちろんチームとしての戦術は重要で、それを守っている。だけど、その前に、まず自分でどんなチャンスがピッチにあるのかを探るのがサッカーで、もちろんFWでは一番大事だと思う。ボクはそう教わってきたし、まず前を見ること、まず自分で突破しようとチャレンジすることを、いつもの試合と同じように考えていただけ。結果的には、得点を取れたけれど、でも満足できない。1点決めれば2点、2点決めれば3点と思いたいから」と、悔しそうな表情で話していた。

 前半から、磐田は今季から新しくしたシステム3バックの戦術に、それは「チームプレー」という掟に対してひたすら真面目な姿勢として評価されるが、一方ではそれにがんじがらめにされたかのように、中盤とDF、DFと前線が開いてしまった。こうした中、ボールを持って前向き、ドリブル突破に挑む、こうしたマルキーニョスのシンプルで自由奔放なサッカーに、もっと言えばたった1人の個人技にいいように翻弄されてしまう。
 先制点も、ボールを奪ってから得点まですべて「一人で」完結されてしまった。反対に、1対1から大岩がミスをし失点をした後、これを取り返したのは、磐田の「11人」であった。

「取り返しのつかないミスがある。もし、チーム全員であれをカバーしようと思ってくれなければ、今日の勝利はなかったと思う。サッカーは11人でやるものだ、と改めて肝に銘じたいと思う。今日はみんなに感謝をします」

 大岩は試合後、しみじみ話していた。
 1対1、あるいは1人で3人を相手にして勝つことさえできるシーンと、11人でミスを取り返して勝利に結びつけること。
 試合の内容はともに大味で、戦術的にはまだまだ修正点が多いことだけを印象づけたが、何かサッカーの根本的な怖さであり、魅力に触れる試合だった。



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