10月13日

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サッカー

J1 2ndステージ第8節
ヴィッセル神戸×清水エスパルス
(神戸総合運動公園ユニバー記念競技場)

天候:晴れ、気温:22.6度、湿度:54%
観衆:10,493人、15時3分キックオフ

神戸 清水
3 前半 2 前半 2 6
後半 1 後半 4
33分:鈴木健仁
44分:和多田 充寿
74分:土屋征夫
バロン:11分
アレックス:42分
バロン:59分
オウンゴール:65分
バロン:69分
横山貴之:88分

 8月18日以来、勝ち星のない神戸は、前節の札幌戦での5失点からDFの建て直しを図って清水との試合に臨んだ。
 前半11分、右サイドを市川大祐に割られセンタリングを中央に入れられる。このボールをアレックス、バロンとつながれ、中盤のDFが機能する前に早くも失点してしまう。しかし33分には、DFの鈴木健仁が、マークがFWに集中する間をノーマークでシュート。98年以来となる鈴木のゴールで清水に追いついた。42分にはアレックスに得点を許したが、ロスタイム直前、ゴール前の混戦で、土屋征夫、三浦知良、和多田充寿とつないで再び同点とし、前半で追いついて折り返した。
 しかし後半になると守備が崩れ、神戸はゴール前に盛んに攻め込まれてしまう。取られたあとのカウンターでロングボールを押し込まれてしまうために、ポジショニングが非常に悪くなり、後半14分にはバロンに追加点を奪われたのに加え、オウンゴールを喫して、2−4と清水にリードを許してしまう。29分には土屋が1点を返したものの、さらに途中交替で入った横山貴之にゴールキックを起点にしてシュートを決められ、3−6と、札幌戦に続いて大敗。攻撃でも、FWが三浦、ダニエル、和多田、岡野雅行と4トップのように並んでしまう場面があるなど、17日のG大阪戦までの短期間で、てこ入れが必要となってきた。
 神戸は勝ち点8のまま、下位グループでの苦しい戦いを強いられる。

試合データ
神戸   清水
14 シュート 12
3 CK 8
16 FK 19
清水・ゼムノヴィッチ監督
「勝ちたいとは思って来たが、こんなに点が入るとは思っていなかった。後半はいいリズムで得点できたし、選手は非常によくやっていたと思う。サイド攻撃が安定しているのは、うちの持ち味。6点でも4点でも、何点でもいいから、勝ち続けたい」

神戸・川勝良一監督「失点が多いのは、守備陣ばかりのせいではない。前でのプレッシャーが十分でなく、またカウンターで取られてしまうなど、攻撃との連携もある。2試合で11失点は、いずれにしても何かをやらなければならないし、中盤でのシステム変更を考えている」

三浦知良「ボールが自分のところまで来ないというのは、チーム全体の攻守のバランスが悪かった証拠。2試合で11失点でも、気持ちは早く切り替えないと」


「グラウディオラ、その後」

 終わってみれば大味な試合で、しかも公式では1本だが、誰かが触った、コースを変えた、という「認定」オウンゴールならば清水に2本、神戸に1本と、珍しいほど流れの安定しないゲームだった。
 そんな中、清水は、代表を目前にしながら入ることのできない帰化申請中のアレックス、高いパフォーマンスを見せながら必ず合宿で落とされる市川の両ウイング、また、アフリカとの欧州遠征に参加し、セネガル戦では振られて失点したDF森岡隆三、ボランチで伊東輝悦、そしてトルシエ監督にナイジェリア戦後「私の見つけたグラウディオラ(現在のスペイン代表の中盤で攻守の要とも言われる選手)は戸田だった」と言わしめたDF戸田和幸といった代表組と、ユニークな構成で、遠征後の初戦を迎えることになった。

 戸田はこの試合、ストッパーに入った。神戸の俊足・岡野対策でもあり、ボランチの吉田康弘が好調なこともあって、後ろに下がっているというチーム状況もある。
「トルシエ監督がそう言ったというのは、後で報道で見ました。でも本当にそんなレベルでないことは、僕がわってますから、監督の褒め言葉なんて全然気にしませんね」
 戸田は表情も変えずに言う。それでも、「最大の収穫」として挙げられたのだから、もう少し喜んだら、と水を向けたら「欧州で収穫があるとすればひとつだけ」と、落ち着いた口調で言った。

「まったく違う次元のサッカーがあった、ということを知ったことです。サッカーは、1対1からすべて始まる競技ですから、まずはここでの力比べなんです。僕はこの遠征でただの一度も(アフリカ勢には)勝てなかったんです。確かにチームプレーなら、日本はかなりすばらしい戦いができる。でも一人のサッカー選手として、1対1で一度も勝てなかったのに、チームとしては十分に戦えたなどいう結論にはならないんです。だから、グラウディオラでも戸田でもなんでも、どうでもいいんです」

 スライディングでボールを奪おうにも届かない、体をコースに入れる前にすでに相手がいなくなっている、など、サッカーの個々の局面で勝てなかったことが、悔しくて、またこれからの試合ひとつひとつに大きなインパクトをもたらした、と戸田は説明する。この試合も、ストッパーではなく、ボランチから始めたかったことだろう。もとは今年初めにチーム事情から与えられたポジションで、代表のレギュラーに上り詰めたからだ。

 トルシエ監督もナイジェリア戦後、「互角の戦い」と評価し、ミックスゾーンでもDFの選手が「カヌーがいなかったので、今日はワクワクするプレーがなかった」とか「カヌーがいなくて残念」といったコメントをしていた。しかし、試合を見る限り、あれだけ豪快に、「カヌーなし」でも振られながら、「ナイジェリアにはワクワクするようなプレーがなかった」とした現実認識には違和感があった。
 さまざまなリスクと日程の無理を犯して行なった欧州遠征、それも、アフリカ2か国と第3国で戦うような練習試合の価値を、選手それぞれがどう得ているのか、じつは「その後」を取材していなかった。
 しかし戸田が「2試合で一度も勝てなかった」と冷静に分析した感想には、むしろ明るい展望や、リアリティがある。「日本のグラウディオラ」とたとえられるのではなくて、日本のボランチ・戸田の存在意義を、11月のイタリア戦でぜひしっかりと見届けたいと思う。



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