4月23日
陸上春季サーキット
シドニー五輪代表選考会
(神戸ユニバ記念競技場)
マラソンを除くトラック、フィールド種目の選考会となる春季サーキットが22日始まり、この日は、女子10,000mに出場した第一人者・川上優子(沖電気宮崎)が31分47秒28と五輪参加A標準記録32分30秒を突破して優勝、五輪代表の座をほぼ手中にした。この種目は日本女子のレベルが高く、すでに標準記録を10人ものランナーが突破する激戦区でもある。セビリア世界陸上で入賞した高橋千恵美(日本ケミコン)がすでに昨年11月に内定を受けており、残る2代表の座をめぐって5月7日の水戸サーキットには大本命の弘山晴美(資生堂)があす24日に米国から帰国して調整をして来る。女子マラソン同様のレベルの高さを誇っており、水戸国際に注目が集まる。
また昨年6月に足指の骨折をして以来レースから遠ざかっていた100mの前日本記録保持者、朝原宣治(大阪ガス)が復帰初戦となる200メートルに挑み、20秒84で優勝。この種目のA標準記録20秒70には及ばなかったが、これを足慣らしとして29日には織田記念で100mに出場する。
男子10,000mでは、すでに標準記録は突破している花田勝彦(ヱスビー食品)が優勝。28分10秒11と標準記録にはわずかに0秒11足りなかった。
「一緒に行かせて頂きます」
ふくらはぎ痛、アキレス腱痛、そして坐骨神経痛と、ここ2年ほどは故障に泣かされ続けた川上が笑った。
8,000メートル過ぎから続いた渋井陽子(三井海上)松岡範子(スズキ)との争いに決着をつける場所は、すでに心に決めてあった。最後の直線にさしかかろうという地点で渋井を抜き、自然に笑顔がこぼれる。直線では笑みを浮かべて走り、ゴールではガッツポーズでテープを切った。
長い故障に苦しみ、ようやく掴んだはずのセビリア世界陸上10,000mでは入賞を果たした弘山(4位)、高橋(6位)に大きく水をあけられる12位で終わった。大会前には絶好調だったはずのピークを大会に持っていくことができずに、大会中にコンディションがドン底に陥ってしまったことが要因のひとつでもあった。
「悔しくて悔しくて。あの時の惨めな気持ちは忘れられないし、そこから這い上がるのも簡単ではなかった。光など、一筋も見えない状態でした」
怪我をおして実業団駅伝に出場。今年に入って、無理を承知で出場したクロカン(福岡)が「ひどい状態のはずが、体はきちんと動いてくれた」と自信を抱かせてくれた。
「川上の持ち味は集中力。ここ、とレースをあわせたら本当に集中して自分のものにできる点はすごいものがある」と、広島監督は言う。世界陸上ではこうした集中力がマイナスに働いて、仕上げを早く、早くと自らを追い詰めてしまったことが、「生きた教科書」(本人)にもできた。
冬の間、仲間がマラソンで凄まじい記録を出しているのをテレビで眺めながら、やはり悶々とした。走れる彼女たちと、走れない自分。同じオリンピックを目指す仲間の快走は、何よりの発奮材料でもあった。
ロッカーでは、すでにマラソン代表に決まった山口衛里(天満屋)とすれ違った。
「(川上に向かって)あんまり早く走らないでよ。周回遅れにならないよう焦って走ったんだから」と2人で笑い合った。
「一緒に(シドニーへ)行かせていただきます?」
山口にそう言うと、右手で山口と握手を交わし、川上は大きな深呼吸をした。
春のサーキットでは静岡で5,000メートルに出場する。
「緊張したかと思うと、急に冷め」
前日本記録保持者の朝原が、骨折後の不安をまったく感じさせない力強い走りでゴールした。昨年6月13日に骨折を負い「とてもオリンピックどころじゃあない」と、自らの肉体への不安のほうが募った。
しかし、ドイツに拠点を構える中、セビリアの世界陸上を見学に訪れ、蚊帳の外にいる自分にふがいなさと、本物の闘志が湧いてきた。「やはりオリンピックがあるからこそ、こうしてカムバックできたのだと思う」としみじみと口にした。
しかし前日本記録保持者にしてみれば、復帰戦は決して満足なものではない。
19日に帰国してからの調整にも失敗した。「足がちょっと気持ち悪い」とやるべき練習ができず、その分を埋めようと、休むべき日に練習をしてしまう。またレースでも、アップからスタートラインまでの気持ちの持って行き方にブランクゆえに戸惑った。
「急に興奮してみたり、かと思うと急に気持ちが冷めてしまってダラーとしたり」と反省しきりだった。
29日は織田記念で百メートルへの完全復帰を狙う。
10,000メートルに出場した山口衛里(18位)「抜かれそうでもう必死です。今の段階であまり絞れているよりは、多少(体脂肪が)たぷついていても(笑い)いいかな、と。シドニーマラソン(4月30日)でコースをしっかりと見てきます」
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