3月19日


松江レディースマラソン
(松江市、島根県庁前スタート)

 12日の名古屋国際女子マラソンで優勝を果たし、シドニー五輪代表に決まった高橋尚子(積水化学)が、レースからわずか1週間で、市民ロードレースに参加した。ゲストとして10キロの部にオープン参加で、自らの腕時計では、33分27秒だったそうだが、自分がゴールしてからも、ゴールと参加選手を励ますために再度コースに戻るなど、何十往復もしながらファンランを満喫していた。
 高橋は、今後4月2日に佐倉の積水化学合宿所に戻るまではフリーとなり、実家の岐阜に戻って休暇を取る。春のトラックシーズンは、シドニーを考えて自重する予定で、その代わり4月にシドニーの五輪コースを下見することになっている。

 高橋と一問一答

──レースからわずか1週間ですが
高橋 きょうは(ゴールが)最後の人までお話しながら走ることができました。私ががんばってください、と声をかけると、うれしいと言ってもらえたり、それがまたうれしかったりして……。みなさんにも楽しんでもらえたら、私もうれしい。
──沿道からは応援の声が飛んだのでは
高橋 もうそればかりでした。オリンピックがんばれ、シドニーがんばってね、といった声ばかり受けて、それにありがとう! と手を振り、けっこう話をしながら走ったんですが、ゴールで時計を見たら33分なんで、あれ、そんなに遅いタイムではないなあ、と思いましたね。「転ぶなよ(18日にも転倒し、手をすりむいてしまった)」という声もありました。
──名古屋からどんな1週間だったでしょう
高橋 あっという間なのに、なんだかもうすごく過去のことみたいにも思えます。
──たくさん食べたみたいだけれど……
高橋 もうきょうは、みなさん(いつも練習を見ている報道陣)にこの脚をお見せしたくなくて、はじめはジャージで行こうかと思ったくらい。(体が)重かったぁ。この1週間、何が食べたい、というんじゃなくて、とにかく目に入ったものを全部口に入れていたような状態で……。欲望に任せて食べまくっていました。4キロ、増えたんですよ、この1週間で。監督からは今回はハメを外すなよ、と言われていて、3キロまでなら許す、と。ですから、4月2日に(再集合で)監督に会うまでに、ダイエットしなくては。それが当面一番の目標です。
──しばらくお休みをもらえるようですね
高橋 はい、あすからです、実家に帰って友達と会って、それからお世話になったみなさんにも挨拶回りをしたいと思ってます。
──今後の予定は
高橋 まだ決まっていませんが、トラックはこのまま行けばたぶん5月にベストが出ると思ってます。でもそうするとあとで必ず疲れがきちゃうんです。今年はシドニーを優先という定まった目標がありますんで……。本当はボストン(マラソン)、という話も監督とは(名古屋が終わってから)2日間くらい真剣に考えたんです。名古屋を練習の一環として、という感じですが、でもやはり9月に(五輪が)あるので、それが終わってから、と監督と話しました。
──今後やってみたいことは
高橋 やってみたい、というよりもやらなくてはならないんですが、補強(ウエイトや筋力を高める運動)ですね。今も、(左)手首骨折の後は瞬間的に動かすと痛いんです。補強をやれ、と言われても、これまでは「手首が痛いんです」とか言って逃げていました。でも名古屋のビデオを見たら、補強が足りないから、上体が結構大きくブレてますね。これからきちっとやらないといけませんね。

「記録が、私の生きる道」

 名古屋で4回目のマラソンを走り終えた高橋がまず口にしたのは、「近いうちに、記録のことだけ考えて走ってみたい」という夢だった。
 松江でも、名古屋の直後に小出監督とボストンマラソン(4月)出場をめぐって話し合いをしていたことを明かし、「やはり、記録だけを狙って走るレースをしてみたいんですね。多分、シドニーオリンピックが終わっても私の(マラソンランナーとしての)道は、そこにあるような気がします」と、女性初の10分台への突入と合わせて、世界最高記録への挑戦に強い意欲をのぞかせた。
 それにしても、「目に入るものを食べた」という1週間で4キロ増には驚く。
 ランナーの体重は怪我などを招く要因にもなるために、非常に神経を使うもののはずだが、高橋は「食べて、走る」で体重増加の環を断ち切っているかのようだ。
 前日練習中につまずき右手のひらはすりむいてまだ赤くなっていた。
 市民マラソンに参加して、市民ランナーのほうから「転ぶなよ!」と盛んに声がかかるのも、高橋の愛嬌か。

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