3月18日


Jリーグ ディビジョン1 1stステージ 第2節
名古屋グランパスエイト×ジュビロ磐田
(名古屋市瑞穂陸上競技場)
キックオフ:14時2分、観衆:21,071人
天候:晴れ、気温:16.6度、湿度:20%

名古屋 磐田
0 前半 0 前半 0 1
後半 0 後半 1
  福西崇史:89分

先発メンバー
交代出場
名古屋

62分:福田健二(岡山哲也)
磐田
なし

 開幕戦でともに黒星を喫してのスタートとなった優勝候補同士の対戦は、前半からファールが連続する激しい試合となった。
 試合開始直後の1分、まずが磐田の藤田俊哉が中盤で奪ったボールを中山雅史に出し、これを中に走り込んできた高原に折り返してシュート。絶好のチャンスは名古屋のGK楢崎正剛に阻まれたが、勢いを感じさせるスタートとなった。最初のラフプレーで太田主審が流してしまったのをきっかけに、10分過ぎから選手のプレーが荒れる。
 中盤で、磐田の山西尊裕と名古屋の呂比須ワグナーが衝突したことで、両チームとも輪を作ってあわや乱闘、の不穏なムードが漂い、33分には、判定に怒った名古屋の岡山哲也がボールをたたきつけイエローカードを受ける。
 後半も、わずかなファールですぐ転倒する、言い争うなど、時間を無駄にしたプレーが目立ち、膠着状態となった。磐田は、両サイドを使った展開を試みるが、名古屋に流れが傾き、岡山がGKと1対1となる場面もあったが尾崎勇史がセーブ。またゴール前の混戦でも、ボールを最後に押し込むことができない名古屋に助けられて無得点のまま。後半、磐田は6本、名古屋も8本ものシュートを放ちながら決定力に欠け、このまま延長かと思われたロスタイム、名古屋のDFホミルドのクリアミスを井原正巳が拾って、ペナルティエリア付近まで自ら持ち込んでリベロ・福西崇史へスルーパス。福西は左サイドからこれを落ち着いて決め、試合時間としては、後半48分のわずか前、ラストプレーで1−0と名古屋を突き放した。
 磐田は開幕からの連敗を免れて勝ち点3に。次節は横浜F・マリノスとアウエーで戦う。一方、連敗でのスタートは名古屋にとって厳しいものとなってしまった。

名古屋、ジョアン・カルロス監督「前の試合(開幕戦)よりはいい戦いができた。集中していたし、攻撃も守備でもいい形だった。敗因は決定機を逃がしたことだろう。2連敗でのスタートといっても、第1ステージはまだまだあるのだし、精神的に云々といった問題などない」

磐田、ハジェヴスキー監督「見ていて本当に疲れる試合だった。両チームに勝てるチャンスがあったと思う。最後にそれを分けたのは、私たちのモラルだったと思う。(試合終了間際の点は)どうしても勝ちたい、という気持ちがプレーに出た結果だった」

今季からリベロに起用され、持ち味を発揮している福西「(ゴールを決めた時には)DFラインのカバー(味方の)があれば、いつでも思い切って上がろうと思っていた。時間内に絶対に勝ってやるんだ、と強く思っていた」

「2つのモラル」

 試合終了間際、47分何秒か、という時間にようやく得点を奪って逃げ切った磐田の主将・中山は「きょうは務めて冷静にプレーをすることだけを考えた。試合は熱かったけれど、頭は冷たかったですよ」と、試合を振り返った。
 1勝目をあげたい、優勝候補と言われるチーム同士の対戦だっただけに、確かに技術的にもレベルの高い、内容のあるゲームになった。名古屋は、GK楢崎、DFの大岩剛、MFの望月重良、また磐田も中山、MFの奥大介、服部年宏が日本代表の中国戦から中2日で試合に出場しているため、コンディションもあまりよくはないことは予想されていたが、それでも、前半から初勝利をめぐる戦いはヒートアップしていった。

 せっかくの熱いプレーも、途中からはラフプレーに変ってしまった感がある。太田主審のジャッジにも問題があったが、それ以上に、はやる気持ちを抑えることができない両者は、「反則はやられたら、やり返す」の繰り返し。プレー後の、「レイト・タックル」の連続で前半17分には福西、33分にはボールをたたきつけた岡山が、39分にはストイコビッチがそれぞれ警告を受け、何度が両チームの選手が歩みより、円陣の中で小競り合いを続ける場面もあった。

 しかし、中山は1人だけ冷静だった。不満をぶつけ合う円陣に加わることは一切なく、審判に詰め寄ろうとする仲間を「止めろ、いいから」と腕を入れてあっさりと制止し、審判には抗議せず自分のポジションに全速力で戻って行くだけ、それを前後半とも繰り返しているだけだった。
 監督は試合後の会見で「勝負を分けたのは、私たちのモラルが上回ったこと」と話した。このモラルとは、「士気」とか「意欲」といった意味を持つ。しかし、中山がピッチで見せたモラル、それは「秩序」のほうであった。
「自滅はしたくないからですね。ああいう流れで熱くなっても、いいことはひとつもないですから」
 相手との駆け引きと同時に、自分たちだけの駆け引き、つまり「自滅」こそ怖れる敵かもしれない。

 15日の日本代表の対中国戦では、決定力不足について試合後、先発FWとして「申し訳ないし、恥」とまで責任感を表し、また、この日は左足のケガを押しての出場だった。動きは満足なものではなかったかもしれないが、自滅を警戒し続けたゲームへの注意深さは、見えないファインプレーだった。

「なんでそこにいるのか」

 DFラインで得点を奪うという裏技を見せた、井原と福西の動きには、今年の磐田の面白さが凝縮されている。
 今年からリベロとしてバックラインに入り、「福西を余らせる(フリーにする)ようにすること、井原と鈴木秀人がカバーリングの精度を上げていくことが、福西を動かし、チームの攻撃を意外性のあるものにしていく」と、ハジェヴスキー監督はスーパーカップ(4日、国立競技場)で、今年の磐田の特徴について解説していたが、2試合目にして、その意図が徐々に形に表れつつあるようだ。
 アシストを決めた井原は「なんであんなところにフク(福西)がいるの? と思うでしょうが、ああいう連携については試合ごとによくなっていると思う。自分自身も、常に前を意識することで、また新しいプレーにチャレンジできる」と話している。
 福西のリベロにはさまざまな可能性が秘められている。なんでそそこに……、それがリベロ(「自由な人」の意)だから、ということか。

試合データ
名古屋   磐田
12 シュート 12
13 GK 13
4 CK 7
19 直接FK 22
3 間接FK 4
2 オフサイド 3
0 PK 0

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