3月6日


2000年シーズン Jリーグ記者会見
(東京・新高輪プリンスホテル)

 8年目の開幕を11日に控えたJリーグの概要を発表する会見が行われ、J1の16チーム、J2の11チーム、合計27チームの監督、チームを代表して選手1人ずつが出席した。
 この記者会見、パーティを前に、全監督(ただし、清水のペリマン監督は父の葬儀で欠席)とトルシエ日本代表監督、大仁邦弥技術委員長らが合同で「監督会議」を行って、代表日程の了承や代表への協力を求めた。

「形ばかりではもったいない」

 監督会議は、トルシエ監督の置かれている立場、つまりチームのエースを供給しながらも(対等な相手には)勝てない、(流れの中で)点が奪えない、という状況から考えても、もっと白熱したものになっていいはずだった。
「従来のものと変らない。持論を展開していたし、特に改めて聞くこともなかった」と西野監督(レイソル)は話していたが、無理もない。各クラブの監督にはさまざまな質問があっても、それをぶつけられたトルシエ、大仁委員長が、どうも「立会い」を避けているかのようだ。

 会議では、福島のJビレッジで行われた代表合宿で行った体力測定について、「日本人は……」といった概論のみを監督が報告。これに対して、大宮の新監督・三浦俊也監督が「具体的にどういう話なのか、それと具体的な測定値もしっかり報告してほしい」と質問したが、回答はなかったという。
 また、ただ1人、トムソン監督(広島)が、「今の3バックシステムで、あなたはハッピーなのか(満足しているか)、代表には何か問題はないのか」といった質問をぶつけた。しかし、トルシエ監督は「非常にいい」と答えて、ほかはまったく肩通りに終わってしまったそうである。

 会議は非公開だったが、会議後、トムソン監督に話を聞いた。
「もちろん、問題がないわけがない。点が取れない、そして勝てない、誰もが、問題は大ありだと思っているし、私だけではなく、多くの選手を提供している監督にしてみれば、一体、日本選手のレベルがこれほど上がったのに、なぜ、代表はフランスから止まったままのか、という疑問がある。それに対して、ああいう場所で答えることは代表監督の義務だと思う。ユースの強化は順調だ、五輪もいい流れだ、と彼は私に言っていたが、じゃあ代表は、という話だね。きょうはミスター大仁ともども非常に政治的なものを感じた。何もしゃべらないのがいい、そういう感じだったのが残念だった」

 スコットランド出身のトムソン監督にしてみれば、1年にたった1度だけ集まることができる監督会議こそ議論の場、なのだろう。また同じ3バックをチームのシステムとしているだけに、「今の3バックには日本選手の長所を活かされていないのではないか」と率直に指摘する。
「ご理解をいただきたい」という紋切り型の挨拶だけではなく、Jリーグでプレーする全チーム、全監督、全選手の力をうまく利用し活かせる場をうまくコントロールしていくことも、代表監督の重要な仕事のはずだ。

 また、15日の中国戦での代表収集については、「中国戦は代表の今年の日程では大切な一戦。中田も名波も城についても、等しく重要な戦力として考えている」というトルシエ監督の強い意向もあり、協会側と調整し、中田英寿(ローマ)、名波浩(ヴェネツィア)、城彰二(バリャドリード)の3人とも召集することになった。

「監督同士は、和解」

 5日の「ちばぎんカップ」で、柏の洪明甫が退場となった件について、市原のザムフィール監督と柏の西野朗監督は、監督会議に出席した際、真っ先に謝罪をし合った。
「試合の流れの中で起きた激しいプレーであり、決してわざとやったプレーではないし、彼もそういう選手ではない。そのことを伝え、もちろん監督も理解してくれた」と西野監督は説明した。
 ザムフィール監督も、柏ベンチに行き西野監督に対してユニホームをぶつけた件(実際には、見てみろ、破れてるぞ、と抗議したかった、と説明)について「非常に申し訳なく思っている」と、反省の気持ちを西野監督に伝え、両者は和解した。
 しかし痛手をこうむったのは西野監督だろう。監督は「開幕には、影響、はっきり言ってある。でも、なんとか修正してチャンピオン(磐田)といいゲームをしたい」と話していた。

「未来と世界はかすかでも見える」

 恒例の華やかな会見と監督の集合は、8年目のJリーグの序幕、となる。
 壇上に全27チームの監督が勢ぞろいし、抱負を語るなど、選手が主役のリーグではあるが、これはこれでプロとしてのJリーグの、あるいはサッカーそのものの特殊性を一目瞭然で知らしめるイベントであるように思う。
 さて、今年の監督の国籍である。
 トニーニョ・セレーゾ(鹿島)、ゼッカ(川崎F)、ジョアン・カルロス(名古屋)はブラジル、アルディレス(横浜M)、ピッコリ(福岡)はアルゼンチン、トムソン(広島)はスコットランドで、ペリマン(清水)はイングランド、新監督のハジェヴスキー(磐田)はマケドニア、張外龍(川崎)は韓国、ザムフィール(市原)はルーマニア、J2のブランコ(水戸)はユーゴスラビアと、これだけで9か国にも及ぶ。

 鹿島の新監督・トニーニョ・セレーゾ監督は、W杯を戦った世界的なプレーヤーでもある。
 背番号も、永久欠番で大騒ぎするようなことはないが、それでも十分に多彩で、観る者をわくわくさせるような「世界観」が存在している。
 サッカーの面白さとは詰まるところ、世界さえボールたったひとつで表現されてしまう、そのことにあるのだ、と思い出させるような監督「大集合」だった。

監督の一言(会見、パーティでの囲みから抜粋、開幕対戦カード順に):

磐田・ハジェヴスキー監督「日本で仕事ができることは光栄だと思う。日本は大きな進歩を遂げているし、そのリーダーとして磐田を率いたい。今年は新しいシステムに挑戦し、さらに上を目指したい。柏の洪の退場? ええ、彼が柏のベストプレーヤーであることは承知している。しかしサッカーとは個人とではなく、チームとするものだということも忘れてはいけない」

柏・西野監督「(磐田が4日のスーパーカップを制した、と質問されて)ええ、うちも昨日のちばぎん“カップ”を制してますので、タイトル戦では並んでますね(会場が爆笑)。洪の退場、出場停止は痛いが、短い期間でも開幕まででしっかり修正していきたい」

鹿島・トニーニョ・セレーゾ監督「きょう来日したベベットは、ジーコのトレーニングセンターでみっちり体を作ってここに来たと聞いている。しかし大切なのは、スター選手の存在ではなく、有能な外国選手と日本人選手の融合である。私自身、まだ時間は短いが何とかいいチームにできると思っている」

名古屋・ジョアンカルロス監督「(昨シーズン2ndステージ第7節の磐田戦からリーグ戦負けなし)いい形で準備もできたとおもう。あとは早く始まってほしいし、(6日に来日した)ベベットが出ても出なくても、名古屋は名古屋のサッカーをするだけだ」

福岡・ピッコリ監督「昨年リーグ昇格を争った因縁の対決ではあるが、私にはほかのチームの対戦と何ら変らない。敬意を払ってプレーするだけだ」

川崎F・ゼッカ監督「13人が新しい選手となり、新しいシステム、コンビネーションともまだ時間をかけなくてはならない。ただ、シーズンを戦いながら、きっといい結果が出ると思う」

J2 平塚・加藤監督「ゼロからの新しいチームを作るため、キャッチフレーズは“汗”です。大きなスポンサーはいないけれど、こういうチームでもクラブができるんだということを証明したい」

J2 仙台・清水監督「J2も、非常にレベルアップしているので激しい戦いになるだろう。勝負にこだわりながらも、J1のサッカーの流れに沿いながら若手も育成したい」

<J1開幕戦の対戦カード 3月11日(土)>
ホーム
アウエー
キックオフ(会場)
磐田
監督/ハジェヴスキー

監督/西野 朗
14:00〜、磐田
鹿島
監督/トニーニョ・セレーゾ
名古屋
監督/ジョアン・カルロス
14:00〜、国立
市原
監督/ザムフィール
京都
監督/加茂 周
15:00〜、市原
神戸
監督/川勝良一
広島
監督/トムソン
15:00〜、神戸ユニバー
福岡
監督/ピッコリ
川崎F
監督/ゼッカ
15:00〜、博多の森
清水
監督/ペリマン
C大阪
監督/副島博志
16:00〜、日本平
V川崎
監督/張 外龍
G大阪
監督/早野宏史
19:00〜、等々力
横浜
監督アルディレス
東京
監督/大熊 清
19:00〜、横浜国際

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