by リュージョン

3月23日東播
KAZさんから「根掘る?」との誘いがあって出掛けた。朝7:00に吉川町のKAZ宅前に着くが、携帯しても玄関ピンポンしても反応無し。氷点下1.5℃で寒いんですけど〜。スクワット300回したんですけど〜!待つこと1時間、ようやくKAZさんが寝巻で玄関から出てきた。羽化不全か?それとも寝不足のノコかメンガタか?
車を西に走らせ、小野市の丘陵地帯へ入り、まずはクヌギの根を狙ってみる。林内に入ると大きな樹液痕のある木が目に留まる。思わずナイトウォーカーズの樹液採集下見モードになってしまう。朽ちたクヌギの根はあるものの、どれも古くて乾いており、結果を出せなかった。それではと、クヌギvs柳の比較検証はさっさと諦め、加古川の河川敷へ移動した。3月9日の採集場所より大分上流だ。
加古川の春 よく晴れて風も無く、気温がぐんぐん上がってきた。このあたりの河川敷の柳は大きめの木が多く、両岸に広く連なってどこにでも入ることができる。土手を降りていこうとすると漁協パトロールの人が声をかけてきた。
「釣りですか?」
「いや、虫採り!」(と言ってバチツルを振り回す)
「釣りの時はお得な年券買うてや〜」
昆虫採集権なんて無いので虫券買わないぞ〜。

土手の上から見た加古川の河川敷。柳が芽吹き始め、下草も青みを帯びつつある。ここは夏でも釣り人の踏み跡を通って樹液採集ができるかもしれない。

木の数の割に良い材が無い。ようやく河川敷の中央部に先端が埋まった材を2本見つけて堀りにかかった。KAZさんの天地返しにヒラタ成虫♀が1頭、あとはコクワの猛攻でどうしようもない。
少し動いて、ワンドのほとりの木に来た。地中で分岐しており、1本が生木、1本が朽木だ。朽木を折って地中に掘り進んでいくと、少し古いが食痕からなる赤腐れのフレークと材が半々の状態となってきた。右手が肘まで入るところまで掘ってやっとヒラタ♀が転がり出てきた。さらに指2本で掘り進む。
「KAZさん、一番奥でアタリがあるよ」
「何?」
「大アゴ〜」
地中40cmから盲牌で引きずりだしたのはヒラタ♂52mmだった。手堀り、見ずに手掴みのヒラタ採集なんて画期的じゃないか、と妙に嬉しかった。
加古川採集風景小野ヒラタ1♂2♀
左は倒木の前のKAZさん。曰く「生木だよ〜」。 右はこの日の成果のヒラタクワガタ1♂2♀。

この後は河川敷を小巡回して2本ほど削ってみたが、コクワ天国のため深追いは止めた。気温は15℃まで上がり、浅瀬にはザリガニが出てきていた。ワンドには20m間隔でバス釣りの人が並んでいる。真剣な彼らの目の前をヌートリアがくねくねと泳いでいるので、見ていてとても滑稽だ。
「釣れてるの見たことないな、あれ」
「ヌーちゃんも居るしねえ」
「りゅーさん、最近グッと燃えるものが無くてさ」
「虫採りは地味だからな〜」
「来週、磯行こ。行けば情熱が湧いてくる」
「紀伊長島ね。ええよ」
春の匂い一杯の土手を、釣りの話をしながら登った。3頭だけのお土産を持って。

おわりに
この3回の採集で、クヌギで大きいのが出たし、柳は小さめばかりだったので、一応仮説に沿った結果が続いている。数が少なくてそこまでしか言えないが、十分楽しかった。改めて知ったのはヒラタクワガタの適応力の幅広さだ。固くしっかりした材からボロボロのフレークまで、赤枯れ、白枯れ、バクテリア分解など何でも食う。増水時には水没する場所でもちゃんと生きてる。朽ちた根っこさえあればそこはヒラタの国だ。

さて、朽ち木割りというと罪悪感を感じるとか私はやらないとかいう人が多い。言いたいことはわかるし、私有地で大げさにやるのはマズいと思う。でも、生息調査みたいな感じで、あちこちで少しずつ、何かテーマを持って自然の恵みに触れることは本当に楽しい。何が豊かで何が貧しいのか、採って初めてわかることがある。採れなくてさえも色々わかることがあるのだ。ゲームにハマる子よ、バーゲンを漁る母よ、リストラに立ち向かう父よ、なんて高邁なことは言わない。ぜひフラっと採集に出掛けてみることを勧める。根堀りなら節度と道具を忘れずに。
 
 

ご意見・ご感想・お問い合わせは リュージョン: rjyo@jttk.zaq.ne.jp


 
 
 

記事先頭へ戻る

くわ馬鹿2003年春号目次へ