しかし、そのようなクワガタ貧困地に住んでいようとも、くわ馬鹿 の道を進むのにけっしてめげてはいけない。そんなところでも、近 所を探せばクワガタはいるかもしれない。そのクワガタとは、そう、 コクワガタ。くわ馬鹿の基本中の基本。「コクワに始まりコクワに 終わる」のであり、「コクワを笑うものはコクワに泣く」のである。 都会のくわ馬鹿は、至る所にひっそりと棲息するコクワの強い生命 力に感謝しなくてはならない。 ![]() 先日も近所の子供を連れて近場のポイントにコクワを採りに行った。 コクワといえども、また、しょぼい採集結果であろうとも、樹液に つく野生のクワガタが採れれば都会の子供はそれだけで大満足。ラ イブな採集の醍醐味は、コクワ採集で子供達に十分伝えられるのだ。 とはいえ、そこはやはりコンクリート・ジャングル、アスファルト 地獄。やみくもに探したって見つかるわけはない。探す手順は、く わ馬鹿なあなたにとってはあたりまえのようだが、改めて示せばこ うだ。 1. クヌギを探す まずは、ホストの木がなくては話にならない。クワガタがつく木 は、クヌギ、コナラ、シラカシ、ヤナギなど、いろいろあるだろう が、クヌギを見つけるのがもっとも手っ取り早い。たとえば目黒区 は、「鷹番」なんて地名があるように、昔は猟ができるくらいの山 野だったのだろうから、クヌギだって探せばなんとか見つかる。い や、むしろ結構多いかなという感じである。目黒区から少し外れる が、お洒落な店が立ち並ぶかの有名な代官山の駅のすぐそばにも、 実は立派なクヌギがあったりするのだ。 ![]() まあ、クヌギがなかなか見つからなければ、区役所に尋ねてみる 手もあるかもしれない。都市部にいまさら若いクヌギなんてあまり 残ってないだろうし、樹液を期待するなら老木だろう。そんなクヌ ギは、区の保存樹になっている可能性が高い。ならば、保存樹リス トから探せば早いではないか。ただし、これには区役所に実際に出 向いて台帳を閲覧する手間が必要となる。 一本の大きなクヌギさえ見つかれば、それが単独の木だろうと、 コクワが見つかる可能性は高い。しかし、規模は小さくとも雑木林 があれば、状況はくわ馬鹿にさらに有利となる。最近は、市街地で も、公園によっては雑木林のメンテをしたり、切り出した材を放置 して生物を多様化させようとする試みが行われている。そんな公園 が見つかれば、期待に胸を膨らませてよい。 2. 樹液を探す せっかくクヌギやコナラが見つかっても、それが樹液をまったく 出さないのであれば、これまた話にならない。しかし、世の中に樹 液を出すクヌギと出さないクヌギとどちらが多いかといえば、圧倒 的に後者だろう。樹木が普通に健康に成育していれば、樹液なんて めったやたらに流しはしないのである。 でも、それでは都合がよろしくない。何とか樹液を流してもらわ ないと、こちらの涙が流れてしまう。では、樹皮に傷でもつけてみ るか。いやいや、樹木が公共物かまたは他人の私有物である以上、 そのようなことは許されないであろう。 都市部においてはボクトウガ幼虫の活躍になかなか期待できない のだが、いないことはない。カミキリムシだって棲息しているだろ う。ここは足を棒にして、樹液の出す木を探し当てるしかないので ある。 樹液がなくてもバナナ・トラップがあるではないか? う〜ん、樹液のないところでむやみにトラップをかけても、あまり期 待できないのでは。 樹液の見つけ方としては、まず遠くからは、チョウ、とくにキマ ダラヒカゲなどが木の回りをヒラヒラと飛んでいないか、近寄った 場合は、カナブンやシロテンハナムグリ、時としてスズメバチがつ いていないか、などが適当な目印になるであろう。カナブンなどが いなくても、小さなヨツボシケシキスイが集まっていたら、クワガ タがつく可能性が濃厚な樹液酒場であるのはご存じのとおりである。 そのような虫たちが昼間見つかればそれだけでしめたものだが、た とえいなくても、一応採集可能ポイントとしてチェックしておこう。 都会ではポイントを贅沢に選ぶ余裕はけっしてない。 冬場であれば、樹液痕なるものを探すのであるが、クヌギやコナラ に幹の表面がボコボコしていてその周囲が黒ずんでいるところがあ れば、夏場に期待をかけておそらく間違いない。 |