06/14
軟禁7日間



「君、入院しよう、入院。一週間くらい。」
GW中の急患診察で一通りの問診と病状説明は済んでいるとはいえ、診察室に入った途端に医者は何の前置きも説明もなくポップにお茶目に嬉しそうに言い放つ。
そして目が点になった私に狙い追い打ちをかけるべく、息つく暇も口を挟む暇も与えず追い打ちをかけるように満面の笑みを浮かべながらしきりに入院を奨めるのである。
「耳が聞こえなくなったら嫌じゃない?」
「友達なんかにうつしちゃったら寝覚め悪いじゃない?」
「最悪の場合、顔面麻痺になるかもしれないしさ」
「ね、どうする? 入院する? 入院しようよ?」
「隔離の意味で個室に入ってもらうけどさ」
「個室はほんとは一日参萬参千円なんだけど、治療のために無理矢理ってことで壱萬円になるからさ。」
「あ、今頷いた? 入院する? 入院するんだね。覚悟決めた? そーかそーか。」
「じゃあさ、これから書類用意するからその間に採血行ってきてよ。」
そしてショック覚めぬまま採血から戻ってくれば椅子に座らされ、研修医と小さな本と手を携えて患部の見学会を開くのである。
「ほら、見て見て。典型的な症状でしょ? 」
「これが実物〜」
「耳まで掛かっちゃってるしさ、こうなったらやっぱり入院しないとね」
「あ、書類書きおわった? じゃあ今日の会計終わったら病室行って安静にしててね」
と、こんな調子で何時の間にやら入院することが決定してしまったのである。

その入院する原因となった病気は、かなり大袈裟に言えば伝染性の皮膚病である。
病名は医者は帯状疱疹(たいじょうほうしん)と略しているが、正式名称は帯状疱疹ヘルペスウイルス感染症という。昔はヘルペスと言っていたウイルス性の恐い病気らしいが、何のことはない。その実態は局地的に復活した水疱瘡なのだそうだ。
もう少し詳しく言うなら疲れやストレスが原因で体内に残っている水疱瘡ウイルスが局地的に暴れ出し神経に悪さをするらしい。私の場合は普段からの睡眠不足に加え激痛で眠れなくなるくらい首を寝違えた後に追い打ちをかけるように首から耳にかけて蕁麻疹が出て(医者曰く首の痛みも蕁麻疹も帯状疱疹が原因らしいが痛み方が比較にならない上、蕁麻疹はともかく首の痛みはタイムラグがあるので別口と思われる)更に寝られなくなっているのにいつのも調子でハードスケジュールをこなし更に肉体労働までしたのが悪かったと思われる。
特徴は水脹れとわりと強烈な神経痛。これだけなら笑って済ませられるのだが、「放っておいても無駄。薬を飲まないと絶対に直らない」ときっぱり言い切る代物で、その薬は一日分だけで保健を適用しても¥4k〜¥5kもする(3割負担の場合)ある意味凶悪な薬であり、また水疱瘡だけになかなか消えない痕が残る上に神経痛も個人差はあるが最低2,3週間は悩まされるのが確実で、運が悪ければ冬になると痛む若しくは常時痛むといった一生モノになる可能性もあり、更にウイルス性の病だけに発症した場所と運が悪ければ深刻な後遺症も残る等、運が悪い人にはとことん難儀な病気であり、運が悪くなくてもやっぱり難儀な病気である。

続く



TOPページへ戻る