01/14
真説 おかたづけ隊、来る(加筆修正版)
もう4ヶ月が過ぎたし時効であろうと思って、これを記す。
正直な話、誰かに手伝って欲しいのは本気だったが、まさか応募者がいるとは思わなかった。しかも女性は想定していなかった。
御本人からの御申し出には「おかたづけ隊」とあった。微妙な名称であろう。しかし「隊」ということは複数なのか? 十中八九1人だろうとは思うが、良くわからない。一応「おかたづけ隊ってことは複数ですよね?」と伺ってみると「TM Revolution が1人であるように、おかたづけ隊も1人である」との返事が帰ってきた。ちょっと待て、彼氏でもない一人暮らしの男の部屋に女性が独りで入るのは如何なものか。いや、純粋に善意で申し出てくれたのはわかるのだが、流石に無防備ではあるまいか。気が乗らないときには例えオードリー・ヘップバーンやマリリン・モンローがベッドで手招きしても、何をされても何もしない自信も実績もあるとはいえ、万が一私の理性がぷっつんして襲いかかったらどうするんだ。
と思ったものの、拠ん所ない事情があったごく少数の例外を除いて親しい人であっても滅多に家に入れないのに、知らない人を上げるのは嫌だし、一応は恥になる部屋を初対面の人に見せるのも如何なものか。「共通の友人でもない人を、友達の部屋の片づけに行かない? と誘っても、相手が困りそうだ。」と言う彼女の言も納得できる。元々あちらが気にしていないのだから、後はこちらの問題である。と、一通りのやりとりの後に3分熟考した末、安直ではないが極めていい加減な思考の結果話が進められた。
たまたま直前に職場で公私共に頼み事と相談を幾つか受けていたので「やっぱりちょっと信用されすぎのよなきがする。今回の私事の信用には応えられるだろうからいいんだけれど。」と書いた。彼女も見ているので誤解はおきるだろうと半ば確信的だった(こういう性格は良くない)が、案の定誤解は起きた。それに対する私の対応も、茶々を入れるという非常に拙いことをしたので、気分を害してしまったらしい。幸い、彼女のさっぱりした性格と寛容さのおかげで大ごとにならずに済んだ。
完全にゴーサインが出たこの段にいたって、問題は根本的且つ最大のもののみとなった。
彼女の安全については当日までに考えて場当たり的に実行するとして、当面の問題は部屋に入れるかどうかだ。
過去、つきあっている女性から仕事のパートナーまで数種の女性数人が訪れたが、未だかつて部屋に侵入した人はいない。がんばって部屋を覗いた人はいたが、「見てはならぬものを見てしまった」といった顔ですぐに外に出ていったなどの曰く付きの部屋だ。「耐えられなかったら映画見に逃げるから」とは言うものの電車賃を無駄にさせるし、こちらも片づかないと互いに何の益も無い(彼女には元々笑う以外に益は無いが)。一応大物は暇を見て片づけていて、それを間接的に知らせていた。彼女は誤解していた節があるが、実は玄関もトイレも当日まで全く手を着けていなかった。特にトイレに関しては「前日に掃除道具を用意して当日にやりゃぁ何とかなろか」と、非常に安直に考えていた。
しかし失念していたが、前日は土曜日であり「口を開かない日」だった。要するに1日仕事以外では一切声を発せず乗り切るチャレンジデーだったので、掃除道具を揃えるのは一苦労だった。トイレといえばサンポールしか知らない人間である。放置したせいで星一徹よりも頑固になった黄ばみと水あかに対して、昔ながらのサンポールより強力なものは存在しないのか。また普通のブラシでは埒があかないことは過去に学習済みであるから、何を使って磨けば効率が良いのか。全くわからない。わからないが言葉で聞いてはいけない。筆談しようにも書く物がない。仕方がないので洗剤は、やはりロングセラーのサンポールで良かろうと決め、ブラシはクイックブライトのような物が見つかった。
しかし、困ったことにゴム手袋が見つからない。私個人はトイレの中に素手をつっこむのも平気なのだが、当日の朝トイレを洗った男と顔を合わせるだけでも申し訳ないのに、言わなければわからないとはいえ当日の朝便座を素手で手をつっこんで洗ったとなれば、いくらなんでも合わせる顔がないのでゴム手袋は何がなんでも買わなければならない。なのに見つからない。台所庭トイレ風呂の掃除コーナーなのに見つからないとはどういうこっちゃねんっ。と思っても仕方がない。この際口で聞けない縛りを取っ払ってやろうかと思いつつ鍋コーナーに行ってみた。ここに無けりゃチャレンジの縛りを解くことにしようと、一縷の望みを托して捜してみると・・・あった。鍋のとこには鍋掴みだろがっ!!! と怒りに震えたものの、とにかくよかった。
予定通り口を開かず帰宅して在宅仕事を幾つか片づけて、明け方近くに床に就いた。
一応予定では朝8時に起きて片づければ余裕をもって迎えられるだろうと考えていた。事前に見せてはヤバい物やゴミ袋は片づけるなり隠すなりしていたこともあって、結果から考えるとその通りだった。しかし、、、寝過ごした。目を覚ましたのは10時を過ぎた頃だった。何せ目を覚ましてから30分は何もできない質なので、実質行動するのは10時半を回ってからだ。ヤバい。めちゃめちゃヤバい。時間が無さ過ぎる。しかも、習慣上風呂に入るのは朝なので少なくともシャワーで汗は流さねばならない。
一応13時から14時の間に着くとのことだったので「できるだけ遅くきてくれっ!」と願いながら洗濯機を回し布団を干し、必死にトイレ掃除をした。途中トイレの床掃除にクイックルワイパー詰替用を買って床を拭いたら一拭きで真っ黒になっただとか、例のクイックブライトのようなものが破れて使えなくなって焦っただの、その日が丁度不燃物の回収日だったので纏めるのに必死だっただの、流し台の中は片づけておこうと思いつつ忘れてただの、それはそれは大変だった。そのくせ、ネタ用に写真はしっかり撮っている。幸い到着が14時過ぎだったのでコインランドリーの乾燥機にぶち込んだ後に迎えに行けた。
ご足労頂けたのは非常に有り難いことだが、ここで大事が待ち構えている。例のモニタの箱は本当は押し入れに放り込みたかったが、何とか笑いに持っていけた。一応部屋の中は普通にとんでもない状態になってはいたものの「ひいている」のはなんとなくわかった。私としては試験をその場で採点されているようなものだし、「片づけの手よ、救いの手よ、逃げないでくれ、帰らないでくれ」と、本気で祈っていた。
次の大事はもしも私の理性がぷっつんしたときに安全に逃げ出してもらう方法だ。が、はっきり言って何も考えてなかった。元々友人に手を出す趣味も無けりゃ、自分の理性(意思ではない)の強さは私の双子と自信があったから、万に一つもない可能性に本気で取り組む質ではない。
とりあえず普段のように閉めてしまったドアを見て考え直し、ドアは鍵どころか扉も閉めずいつでも飛び出せるようにし、叫び声が隣三件に聞こえるよう窓を全開にしておけば、換気面でも丁度良かろう。
結局俺より奥に行かねば片づけられない事実と、休憩にお茶するときも上座に座った彼女に完敗した。
彼女の活躍は既に記したが、その間私は何をしていたのか。はっきり言って邪魔をしていた。彼女はとりあえず整理よりも片づけることに専念し、物を箱に詰めつつそれを置く場所を確保しようとしていた。私はとにかく整理しつつ片づけたかったので、彼女が確保した場所に必要な物を文字どおり放り投げていく。効率の悪いことこの上なく、彼女の「仕方ないなぁ」という顔を見て、台所を片づけることにした。台所の片づけなどそう長くはかからないので、結局紙以外の物を細々と片づけるのか散らかしてるのかわからないようなことをしながら、どんどん片づく様を眺めていた。
全てが終わった後、部屋の中で感謝しながら大の字になって眠った。
TOPページへ戻る