10/05
おかたづけ隊、来る



以前に「住めば都」で書いたが、私が棲んでいるのはゴミ箱がそのまま部屋になったような所である。上には上がいるものの、常人では及びもつかない想像を絶する部屋である。今まで各種女性が部屋の前に来たが誰も足を踏み入れられず、各種男の中には結局3時間どこにも座れなかったのが居たほどである。また、「遊びに行くぞっ」と意気込んでいた人が、「住めば都」を掲載以後、一度も口にしなくなったのは有名な話である。
とはいえ、あの程度の汚さは標準状態であるから、特に人に手伝ってもらうほど汚くはない。しかし、今回は史上単独3番目の汚さであり、更に単独2番目に手が届きそうな勢いだったので、これは何とかせねばならんと思いつつ、のんべんだらりといつものように過ごしていた。

そんなとき、とある日とある所で「人間として最低限の生活をしたいと思う今日此の頃。歩くたびに「カキッ」「パキッ」て音がするのはどうかと思い、自分でやってみたけれども終わりが見えない。床が見えるのは本来の5%くらいだろうか。家の掃除を手伝ってくれる心優しい奇特で希有な人を募集します。いや、まじで。」とつぶやいた所、高校時代に縁のあった香山氏が「おかたづけ隊」として名乗り出てくれた。最近知ったのだが、関東で就職されていたのだそうだ。
もちろん私は善人であるからして、何の予備知識も与えずにお願いしたわけではない。特に台所や風呂トイレ等の水回りが特に酷い状態であること、「洗濯したもの袋」から溢れた服が散乱しており当然のように下着も転がっていること、8月初旬の部屋(かなりピンぼけ 各60k前後)を見ていただき、これが「まだ綺麗」であることを説明している。にも係らず、とりあえずトイレだけは「一般的に汚い」程度までは掃除しておくこと、部屋に入れる程度までは片づけておくことが条件として出されたものの、一応の日取りが決まったのだから彼女には頭が下がる。
来てくれる日の直前に男の一人暮らしの部屋に娘さんが独りで来くるというのは如何なものかとちゃちゃを入れたものの、直前に2、3度のやりとりの結果「彼女が気にしないんだったらいいんじゃないかな」という非常に安直且ついい加減な思考により、晴れて手伝っていただくことになった。

ともかく、一応の日取りが決まってからおかたづけ隊が来てくれるまでに10日あまりあった。やるといった限りにはやらねばならないし、その日のうちに終了させたいではないか。
ということで、まずは部屋を支配している部外秘書類と空段ボール箱(以下、空段)大小計10個を何とかせねばならない。空段は基本的に「空」ではあるものの長く居座っていたために、実際には中に色々と放り込まれたものが多い。大半はゴミとして処分しても良いのだが、中にはその中のものの要不要を判断して、いらないものは放り出し、必要な書類や女性には見せられないモノ(ビデオでも写真集でも、PTAが怒るゲームの類いでもないぞ)を最も大きい空段に放り込み、それを押し入れの奥深くに放り込むことにした。本当は紙の類いはおかたづけ隊が来る前にとっとと処分して机の片づけと本の整理に当てたかったのだが、要不要を判断しそれを「わかりやすく」収納するのは時間がかかる作業なのに、忙しい合間を縫ってやらねばならんので猶予期間では部外秘や見せられないモノしか終わらなかった。
次に部屋と台所の間を塞いでいる、空き缶入れに成り下がってしまった60cm四方の段ボール箱の処理をせねばならない。これまでこの箱には大変難儀させられていた。兎にも角にも邪魔なのだ。台所と部屋の間にあり、それだけでも邪魔なのに缶が山積みされ、更にその上に服やゴミが乗っているのだ。昼間でも跨ぐのは一苦労なのに夜帰宅すると暗い中をカンを頼りに跨がねばならない。疲労困憊している時などは躓いて倒れることもあった。「ならとっとと捨てろよ」と言うかもしれないが、単純に運ぼうとしても箱が冷蔵庫に引っかかって簡単には出せない。個別に袋に入れて持っていくなど面倒だし冷蔵庫に負けた気がしてやりたくない。本来は箱の処分と平行してやりたかったのだが、「面倒なので後回し」と後ろ向きの発想で箱に負けてしまった。
結局手をつけた頃には思い立ってから10日も過ぎた頃だった。


そしておかたづけ隊がやってきた。
玄関に進入して発した第一声が「・・・入られへんやんか」
そうなのだ。現在も玄関には17インチモニタの箱が鎮座していて、人独りが漸くすり抜けられる状態だ。しかも、その上には空段が箱のまま積み上がっている。片づけての間に何か役に立つだろうと、箱のままにしていある。その高さ、玄関より約180cm。私の背より高い。
第二声は部屋に入った直後「・・・どこで寝てんの?」
というのも当日の起き抜けに布団を乾す際に力任せに引抜いたので、布団の上に乗っかっていたあれこれが一気に床に散らばってしまった。結果、仮に彼女が丸くなって横になっても入りきらない面積しか床が見えていなかったからだ。実際は、障害物は多々あるものの、私独りがまっすぐ? 寝転ぶと丁度良い空間が存在したのだ。

ここまででおかたづけ隊が目にした光景が下の「おかたづけ隊が目にした惨状」である。上の左から右に向かって、おかたづけ隊が目にする順に並んでいる。みればわかるのだが、床を支配してるのは基本的に4割を紙が占め、3割が書籍、2割が衣類である。衣類といっても部屋にあるのは洗濯後の衣類であるから、洗濯されずでろでろになった衣類は無い。そのため部屋の中で異臭はほとんどしないことは断っておく。また、2枚目の写真で玄関に色々モノが転がっているが、実際は片づけていたはずだったと思う。たぶん。
おかたづけ隊が目にした惨状(別ウインドウで開きます)

床に散らばっているもので重要なものは無い旨伝えて、私は散らかし専門なので手順はお任せすると伝えた所、少し顔をしかめたものの大活躍が始まった。
私の床を立体にしているのは半分以上が紙の類いである。紙といってもティッシュではない。各種書類各種原稿各種広告各種新聞に1種雑誌であるから空段に放り込めば捨てるのが楽ということで、豪快に掴んでは豪快に放り込まれていく様はなかなか素晴らしい。しかも私が台所で少し作業をしているほんの少しの間に、紙の4分の1ほどが片づいてしまっていた。作業前に「今日中に終わらないと思うから」などと言ったのが愚かしく思えるほどのハイスピードだ。そして書籍を収納するための箱を用意している間に紙はほとんど終わってしまった。書籍用の箱がおかたづけ隊の手に渡ると整理は置いといてまずは、とりあえず収納するつもりらしくどんどん箱の中に詰め込んでいく。同時にこたつの上もテーブルの上の物も見る見るうちに片づけられていく。そして気がつくと「捨てるものがなくなった」ということで打ち止めとなった。あくまでも「おかたづけ隊」であって「おそうじ隊」ではないらしい。
おかたづけ隊効果(別ウインドウで開きます)


しかし14時前から始まり、途中休憩をはさんだものの16時過ぎには終わったのだから、素晴らしい。ブラボーと叫びたい。予想以上の威力であった。まったく、これから彼女には足を向けて寝られない。感謝の念で一杯である。たとえ約1週間が経過した現在では、既に床が全く見えなくなっているにしても。



TOPページへ戻る