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■純正加工 ショートストロークMTシフトの製作■

純正シフトリンケージ加工によるショートストロークMTシフト。
  コンソールは、カードホルダー付きのAT車用を流用しています。
 
●1999-06-08:新製、 ●1999-06-16:更新(後半部分を加筆)、 ●2002-02-21:校正、レイアウト変更&書式統一


加工前の状態 ショートストローク化した後の状態
加工する前の状態




シフトリンケージは純正のまま シフトレバーの短さが分かるショット
 

1.まえがき
 

今回は 「ビンボーチューンの巻」です。工具さえあれば 「部品代=タダ」 の改造ですから。STi のインプレッサ用ショートストロークシフトを用いず、また市販のクイックシフトも用いず、ただひたすら純正のシフトリンケージを加工することによって、ショートストロークMTシフトを完成させるという大胆な荒技に出ました。「シフトリンケージを加工する」・・・と書くと、いかにもすごそうですが、実際には大したことはありません。単にレバー (フロアからシフトノブに向かって生えている垂直方向の「棒」) を、思い切ってぶった切ってしまうというだけの手法ですから。・・・いや、それ自体がスゴイことだ、と言われればそれまでですが・・・。
 
「+」ドライバー、バイス、ハンドルの3つのみ 【使用工具】
 
今回の改造に使用する工具は
たったこれだけ(4つ)です。 
 ・「+」ドライバー        
 ・金ノコの「刃」         
 ・ダイス(ネジ加工用の工具)
 ・回転ハンドル(ネジ加工用)

切断する位置 (つまりショートストローク化する量) は個人の好みにより調整できますし、仮に切断した後でも、市販の延長ノブやターンバックル (延長ネジ) などを利用すれば、すぐに元の位置までシフトノブを上げることだって可能です。早い話しが、お金をかけずに高い効果を得るための手法です。加工に要した時間は、ボク(KAZ)の場合で小1時間程度です。以下にその手順を解説します。
 

手順1:センターコンソール取り外し
 

まず、センターコンソールを取り外します。コンソールは前後2分割の構造になっています。図1の画像で赤丸印のネジ(2ヶ所)をプラスドライバーで外せばOKです。ちなみにこの画像から分かるかも知れませんが、私はコンソール内には6連装MDチェンジャーを内蔵させています(スバル純正オプションのKENWOOD)。

【図1】 コンソールを取り外す。赤丸印のネジを外せばOK。
ネジを取り外すコンソールは2分割で外れます取り外した状態(「ワタ」は吸音材です)

ネジを外すと、センターコンソールは後ろ側(パーキングブレーキカバーの部分)と、前側(Bタイプではめがねケース&シフトのカバー部分)とに分けて取り外せます。前側のカバーは単に 「ツメ」でハメ込まれているだけですから、上に持ち上げると簡単に外れます。その際、あらかじめシフトノブは反時計回りに回しておき、ロッドから抜いておきましょう。ここまでの作業時間は、約1〜2分です。慣れない方々でも、約5〜10分もあれば充分できそうです。無事に取り外すことができれば、右上の画像のようにハダカのロッドが出てきます。余談ですが、私は駆動系の騒音低減のため、右上の画像にあるように防音材をこの周囲に巻いています。これで、ミッションからの音はかなり低減されると思います。
 

手順2:レバーを好みの位置で切断 (^^;)
 

コンソールを取り外したあとは、いよいよレバーの切断です。切断する際の工具は、金ノコ (金属用ノコギリの「刃」) でOKです。金ノコの 「刃」 は、DIY系のホームセンターなどで入手可能です。ちなみに私が使用したものは、「SANDVIK HIGH SPEED SUPER HSS ALL HARD」 という刃渡り25cm程度のものです。

【図2】 シフトレバーを好みの位置で切断。短くしすぎないように注意する。
好みの位置で切断する  切断する瞬間

レバーのどの位置で切断するかによって、シフトストロークが変わってきます。ちなみに私の場合は、ロッドを8cm短縮しました。これ以上短くすると、シフトノブの根本がコンソールの水平面よりも 潜ってしまうので、短縮量としては8〜9cm程度が物理的な限界値だと思われます (←注:これはBGレガシィのBタイプMT車の場合です。他車種では年式やグレードによってシフトリンケージの仕様が異なるかも知れませんので、あくまでも参考限界値です。)レバーの切断後は、ネジ加工を入れて正規品と同様にシフトノブを固定装着します。
 

手順3:切断した先端をネジ加工する
 

次はいよいよ 「ネジ加工」 工程です。ここがいちばん 「慎重さ」 を要求される作業です。レバーを単に切断したままでは、シフトノブを取り付けることができませんから、棒端に 「雄ネジ加工」 を加えます。雄ネジ加工するためには 「ダイス」 と呼ばれる専用工具と回転ハンドルが必要です。ダイスは右上の画像にあるように、内側には超硬のネジが切ってあり、それ自身が相手部材 (ここではレバーになります) を取り込みながら回転することにより、相手部材を削ってネジ山を形成させるものです。

【図3】 ロッドの先端を「ダイス(ネジ加工用の工具)」を使ってネジ加工する。
「バイス」+「ハンドル」を当てたところ  専用工具「バイス」で雄ネジを切る

ダイスをロッドに対してナナメ (非垂直) にセットしてしまうと、ネジ山もナナメに出来てしまうので、せっかくのネジも出来損ないになってしまいます。回転ハンドルを用いて慎重にネジ山を切削していきます。シフトノブのネジサイズは、直径12mmでピッチが1.25mmですから、使用するダイスの規格も 「M12×1.25」 になります。ネジ部分の加工長さは、純正に合わせて25mmとします。無事に加工が終了した後は、ネジ部の切り粉を丁寧に払い、棒端のバリ取りをします。 ここまでのトータル作業時間は、私の場合で約40〜50分です。HP作成用にデジカメで写真を取らなければ、もっと早くできるかも知れません。ここまでくれば、ショートストロークシフトを製作する全行程の約9割が完成したようなものです。

さて、棒端をネジ加工するもう一つの理由は、純正仕様と同等のシフトノブ高さに戻せるよう配慮するためです。切断除去した方のレバーにもネジ加工をしておけば、残った方のロッドとターンバックルなどで接続することにより、ごく簡単にノーマル状態相当に戻せるのです (注 : ターンバックルとは、両端が雌ネジ加工された中空の接続金具。2つのレバーの接続長さを微調整しながら一体化できるというもの。)なお、ダイスなどの工具が無い場合には、シフトノブとロッドとを強力接着剤で接合
することになるでしょう。エポキシ樹脂のように、A液とB液を混合して強力接着力を発揮するタイプが良いかも知れません。シフトノブには、意外と強い操作力が加わる可能性があるからです。シフト操作中に緩んでしまっては、フィーリング悪化どころか事故につながる恐れもありますので、注意が必要です。
 

手順4:センターコンソール取り付け
 

最後に、前後のコンソールを取り外した手順と逆の工程で組み付けていけば完成です。私の場合は、BGレガシィのBタイプ・AT車用のフロアコンソールを加工流用しています。その理由は、上の画像にあるように、AT車用にはカードホルダーが標準で内蔵されているからです。デッドスペースを利用しているので、オプション設定の灰皿交換タイプ・カードホルダーより、こちらの方がずっと使い勝手が良いです。

【図4】 コンソールを取り付けして完成!  
     あとはブーツの製作を残すのみ。  

コンソールはAT車用(カードホルダー付き)

残る作業としては、短くなったレバーの長さ(−8cm)に合わせてブーツを製作することでしょうか。何せ、シフトノブがフロアから直接 「生えている」 格好になりますので、ノーマルブーツのままだと、ヒダヒダが2重にも3重にもなってしまいます。せっかくショートストロークMTシフトを製作したのですから、今後はブーツを含めて見栄えの向上を図る予定です。
 

↓1999-06-15 : 更新(後半部分を加筆しました)↓

■ 実際の使用感について
 

<良かった点>
(1)操作のダイレクト感、剛性感が「格段に」増した。
(2)腕を使わず、「手首の返し」でシフトが可能。
(3)助手席にどんな脚の長い人が股を広げて乗っても、その右ヒザにシフトレバー
   を(1〜2速シフト時に)ぶつけることがまず無い。
(4)以前は、2速→3速へのアップシフト時に、シンクロの「ゴツン感」とか「ゴリゴリ感」
   といった、いわゆる軽い2段入りのような症状が見られたが、ショートストローク化
    してからはナゼか気にならなくなった。
(5)狭いビルの駐車場や立体駐車場などで、クルマを降りずに席を移動
   (助手席←→運転席)するときに、レバーがジャマにならない。

<慣れを必要とする点>
(6)ニュートラル状態を確認しようとして、レバーを左右に動かしてみるのですが、
   左右に動かしてもレバーの移動量(=セレクト量)自体も短くなっているので、
   その点では(ニュートラル位置が分かりにくいので)慣れが必要。

現状で気が付いた項目は、上記の6点です。(4)については、単にシフト操作力が増した分、現象自体はそのままで、シフトノブに伝わるゴリゴリ感が薄らいだだけ?なのかも知れません。また特にここには挙げていませんが、ベースとして必要とされるシフト操作力は増していますので、女性の方が初めて乗ったら少々 「重さ」 にとまどうかも知れません。ちなみに私の場合、加工後のシフトフィーリングは、まるでミッション(というかクルマを) 丸ごと変えたような気分です。剛性感だけは、私が個人的に勝手に目標としていたユーノスロードスターの上をいくのではないか、と思います。
 

付録1 : 「レバー比」 について
 

シフトレバーの操作特性を決める重要な要素の一つに、「レバー比」 があります。「レバー比」 とは、簡単に言うと 「支点〜作用点までの距離」 と 「作用点〜力点までの距離」 の比であり、図5では長さBに対する長さAの比で表されます。

【図5】 長さの比、A:Bが「レバー比」になります。
レバー比

Bに対してAが大きく (→レバー比が大きく) なると、てこの原理により、シフトに要する操作力は小さくて済みますが、その代わりにストロークが長くなります。BG5レガシィでは A:Bがおおよそ5:1 (正確には4.8:1だそうです) であり、その一方でインプレッサの純正クイックシフトは約4:1とのことです。したがって、BG5レガシィであってもシフトレバーを 「A=4×B」 になるように長さを短縮すれば、STiのクイックシフトと同等のショートストロークMTシフトを実現できることになるわけですね。

シフトレバーを短縮する(=削り落とす)ことによる懸念点としては、シフトノブ位置が単純に下がるのでノブが遠くなる恐れが真っ先に挙げられますが、私が実際にBG5レガシィの純正シフトとSTiのクイックシフトを見比べた限りにおいては、BG5の純正シフトレバーを削り落とした位置が、ほぼそのままSTiクイックシフトのノブ位置に相当しますので、違和感はほとんどないものと思われました。
 

付録2 : レバーを切断しないショート化
 

次に、シフトレバーを切断しないでショートストローク化を実現させる手法について、簡単に考えてみます。ショートストローク化するためには、レバー比を縮小すれば良いので、前章の図5でAの長さを短くするのではなくBの長さを長くしても良いことになります。すなわち、シフトノブ位置(力点)はそのままで、作用点 (ミッションから生えているロッド=横棒 と、フロアから生えているレバー=縦棒 とのジョイント位置) を上方に移動させても良いわけです。

【図6】 作用点Aを仮想的な位置Cに移動させて、レバー比を短縮。
(実際の結合点はAからBに移動)

作用点の位置を仮想的に移動

図6においては、青色で示されるような 「フ」の字型の部材を追加することによって、ジョイント点A (=もともとの作用点) を点B (=実際の結合点)へと、半径Rを一定に保ったまま移動させるのです。すると見かけ上、作用点は仮想的な位置 (=点C) まで上昇することになるので、力点 (=シフトノブ位置) と 支点 を変えずにレバー比を短縮化したことになるはずです。繰り返しますが、図5でAの長さを短くするのではなくBの長さ (Bの下側が支点) を長くする、という手法です。その目的達成のためには、図6の青色で示されるような 「フ」 の字型の部材を追加することで、シフトレバーの切断を免れるわけです。
 

 
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