佐藤真監督の挨拶 1999.02.07

 1999年2月7日、札幌のシアターキノで「まひるのほし」の先行上映が行われ、佐藤真監督が上映後に挨拶した。

 1992年に「阿賀に生きる」で衝撃的にデビューした佐藤真監督の最新作。舞台になるのは、兵庫県西宮市にある武庫川すずかけ作業所、滋賀県信楽町の信楽青年寮、神奈川県平塚市の工房絵(かい)の3か所。それぞれの作業場で知的障害者たちは、一心に作品を創作している。

 監督はポップな作品を生み出した「シゲちゃん」に会わなければ映画にならなかったと語り「会った時から衝撃的な面白さだった。期待されるシゲちゃん像をちゃんと知っていた」と語った。すごい作品を生み出す多くの障害者に出会い、映画化を決意した。「絵は遊びで自立には役立たないという意見もあるが、立派に仕事になっている」と現状を説明。一方、「僕らがこうやってほしいということが一切通用しない世界だった」と撮影の難しさも強調していた。ただ「とても自然でしたね」と感想を述べると「やらせもあったんだよ」と、率直な答えも返ってきた。


パンフレットの冒頭に置かれた佐藤真監督のインタビューから


  口に出したとたん嘘っぽく思えたり、言葉ではとても表せない気持ち というものがある。ある事情から、自分の気持ちを表現しない人もい る。でも、その中の多くの人は、絵や彫刻でとんでもなく深い何かを 表現している。その創作行為を通じて言葉にできない気持ちや心を描 けないかと夢想した。「知的障害者の優れた作品紹介」というアート オリンピックの映画にだけはしたくないと心に決めた。
 ところが、撮 っていくうちに肝心のアートとは何かということが訳分からなくなっ てきた。色の洪水や意味不明の土の固まり、落書きやメモ、はてはた だの叫び声や沈黙までがアートであると本当に思えてきた。シゲちゃ んの現代アートに出会って、私の混迷は更に極まった。これでは、何 をやってもアートだし、何もしなくてもアーティストになれる。
 袋小 路に陥ったわりには、フィルムはどんどん廻っていった。あとはヤケ のヤンパチ、パッチワークである。見たこと、感心した話、聞こえる 物音、好きな作品、それらを切り貼りして、作っては壊し、組み上げ ては崩しをくり返しながら、何か別次元のものにならないかとアレコ レ考えた。
 完成したこのコラージュ映画は、たしかにわたしのある意 図の下に編集してある。だが、その意図も、なぜこうなったかの理由 も、もうすっかり忘れてしまったし、とても言葉で表せるものでは ない。

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