onedotzero(ワンドットゼロ)2004in札幌


 イギリス発世界最大のムービングイメージ・フェスティバルonedotzero(ワンドットゼロ)2004in札幌が、10月8日から10日まで、2会場で行われた。8日は、アーバンホール(札幌市中央区南3西4、札幌アーバンビル7階)で上映。9日からはエデットに会場を移し、アットホームな雰囲気で上映やプレゼンテーション、質議が行われた。

sh*te + shynola

 私の大好きなシャイノーラ。ワンドットゼロでは毎年取り上げられてきた。4人のメンバーは結成当初から共に生活し働いている。デジタルの作品だが、手書きアニメの感触が実に上手く生かされている。そして笑いからぞくっとする恐怖まで、ポップな明るさからパンクな破壊まで幅広いテイストを持ち合わせている。独自性のある一つの表現というよりも、シャイノーラ空間という楽しい広がりこそ持ち味だと思う。今回、作品をまとめて見て、どの作品にも多彩な毒が仕込まれていることにあらためて驚いた。

 メルヘン風に始まり恐怖に叩き込む「eye for an eye」のほか、ドットアニメのお祭り騒ぎのような楽しさが詰まった「move your feet」、恋した天使の頭をドングリと間違えて食べてしまうリスの悲しくも残酷な結末を描いた「good song」、雑誌の切り取りとライブ映像を貼り合わせて作られたパンクな「house of jealous lovers」などなど、本当に楽しいプログラムだった。面白さの中に映像的なセンスが光る。

presentation1・logan

 ローガンは、アレクセイ・ティレビッチとベン・コンラッドの二人組からなるロサンゼルスのデザインユニット。実写、アニメーション、イラストレーションを組み合わせた作品を制作している。プレゼンテーションでは、ミュージックビデオやCM製作の技術に踏み込んで解説。iPodCMの秘話も聞くことができた。キレの抜群に良い映像にうなった。そして、後日あのフィルムが未公開のものだったことを知った。12日に世界公開されたU2のCMをいち早く見ることができた。

wavelength 04

 ウエブレングスは、斬新性なミュージックビデオ のプログラム。多彩な作品がそろった。中でもジョナス・オデルの「take me out」(franz ferdinand / uk)が傑出している。ダダイスト/構成主義的フォトモンタージュという定義に収まらない斬新さを備えている。映像的な試行のはずのプログラムだが、社会批判の作品が目立った。これは偶然ではない。圧倒的な情報の中で、訴えを際立たせること。この21世紀的な課題は、動画的なデザインに隠されているのかもしれない。かつての、エイゼンシュテインのモンタージュ理論のように。

presentation2・airside

 エアサイドは、ロンドンを拠点とするデザイン・エージェンシーで、アニメーション、ウェブ、プリント、ID、おもちゃ、Tシャツなどを含む幅広いメディアで仕事をしている。ゲストのフレッド・ディーキンは、とにかく多才。トークもウイットに富んで面白い。音楽からグラフックス、CG、そしてグッズまで幅広い分野で活動している。あふれるアイデアにおぼれることなく、ディスカッションを大切にしている姿勢が印象的だった。自発的な創作とオーダー作品との関係についても、示唆に富む話が聞けた。

extended play 04

 批評家から絶賛されているショートフィルムとアニメーションのプログラム。ことしは、特に充実していた。marc craste「jojo in the stars」( studio aka / 2003 / france/uk)は、白黒で描写された悪夢的で美しい世界。 そのオリジナルなキャラクターデザインと愛と犠牲のストーリーに涙が出た。daniel askill「we have decided not to die」( 2003 / australia)は、3人の肉体に関する3つの儀式。異様な強度が衝撃的だ。juan solanas「l'homme sans tete 」(onyx films / 2003 / france)は、「頭のない男」という題名でショートショートフィルムフェスティバルでもノミネートされた作品。以上3作品は、いずれも奥深いユニークな世界観がある。virgil widrich「fast film」( six-pack film / 2003 / austria)は、300以上もの映画史上に残る作品を引用する信じられないほどの労作。

wow+flutter 04

 実験性にあふれた作品がそろうプログラム。もっともワンドットゼロらしい斬新さがある。何よりもプリカーサーの「quietus」のスタイリッシュな映像にみとれた。チューブと内臓と血。生と死、優雅とグロテスク、メカニックとオーガニックが共存する。シャープで耽美的なスプラッター好きの私には、たまらない作品。

presentation3・束芋(たばいも)

 ことしのプログラムの、思わぬ拾い物。28歳の現代アーティスト。現在、京都造形芸術大学教授。日本の今をブラックなユーモアで描く作家。インスタレーションのスタイルで複数面のアニメーションを見せる。卒業制作の「にっぽんの台所」から、異様にクオリティが高い。「にっぽんの横断歩道」「にっぽんの湯屋(男湯)」「にっぽんの通勤快速」と、その構成は複雑化し無気味な毒は濃くなっている。歪んだ日本の今を多角的に切り取り味付けする構成力は卓越している。

 作品やアートの状況について説明する束芋さんは、いたって明晰で分かりやすかった。一見、外国の受けを狙った作風、色使いに見える。しかしながら、実は内側から外を見、外から内側を見ているのだと分かる。危険な道を果敢に歩いている。

 「束芋」さんは、本名が田端アヤコさんで3人姉妹の真ん中。同じ学校に通っていた姉と区別するため 「田端の妹」から「タバイモ」。それに漢字をあてて「束芋」になったらしい。

sneakers

 何故アメリカのスラムで生まれたスニーカーが世界中に広まり、高級化していったのか。その流れを追うドキュメンタリー。しかしその映像表現は、とてもユニークだ。ドキュメンタリーでも、このような思い切ったデジタル処理でめりはりをつけることができるのかと感心した。

presentation4・中谷日出

 NHK解説委員、BS「デジタル・スタジアム」キャスターの中谷日出さんがプレゼンテーション。軽妙な語りで、「デジタル・スタジアム」の作品を次々と見せてくれた。そしてなんと、秘蔵の自作も上映。心温まる作品に触れることができた。こういう人がNHKで頑張っているのだと、あらためて敬意を表したくなった。

j-star 04

 日本で活動するクリエイターによる人気のプログラム。会場も一番混んでいた。daiki aizawa「loop pool」は、2004年1月、NHK「デジタル・スタジアム」にてベストセレクションに選ばれた作品。命の循環を描き、見事なアイデアのラストが印象に残る。isao nishigori [p.i.c.s.] 「slue, course, to the nucleus」は、ACIDMANのサウンドにのせて多層レイヤーを生かし壮大な叙事詩、自然賛歌へと展開していく。

 森田修平(syuhei morita)の「kakurenbo」は、「かくれんぼ」を題材としたフル3Dアニメーション映画。少人数のチーム「YAMATOWORKS」で作り上げた驚くべき完成度の作品。新しくて懐かしい。新しい才能の誕生に立ち会った。

●公式ワンドットゼロin2004札幌・情報

●ワンドットゼロ2003札幌の記録

●ワンドットゼロ2002札幌の記録

●ワンドットゼロ2001札幌の記録

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