11月20日 天安門広場から故宮(紫禁城)へ
■北京ツアーの三日目の朝が空けた。ホテルのリッチな朝食を済ませて7時50分にバスで出発。最初に連れて行かれたのはラテックス寝具店。ガイドの董さんの巧みなトークに乗せられてそれほど苦にならない気分で店内に入る。最初にラテックスについての店員からの解説がある。要はゴムの樹の樹液を原料に加工した伸縮性のある材料のようだ。これを加工して高反発の枕やマットレスができる。店内のベッドに横たわり実際に寝心地を試してみる。これが実に心地良い。使用中の低反発枕に違和感があったので夫婦二人分の枕を購入した。
■北京を代表するスポット「天安門広場」に着いた。正面には毛沢東の巨大な肖像画が飾られたお馴染みの天安門が位置している。その前面は世界最大といわれる広大な広場である。20年余り前に起こった天安門事件の舞台でもある。大学卒業直後の董さんもこの事件に関わった学生運動家の一人だったという。
■毛沢東の肖像画の下の門をくぐると、彼方に故宮の正門である赤い牛門が見える。故宮は言わずと知れた歴代皇帝の居城であった紫禁城である。牛門の先の人造川に架かる橋の向うには大和門がある。更にその先に紫禁城の正殿である大和殿の巨大な建物をようやく目にした。映画「ラストエンペラー」等の舞台としても余りにも有名な郷愁を誘う光景だった。更にその奥に向って中和殿と保和殿が続く。保和殿北側の龍を刻んだ巨大な一枚岩のレリーフの迫力にも圧倒された。
■保和殿の先にある乾清門から向うが内廷と呼ばれる言わば大奥である。皇帝や妃たちの居室であった数多くの宮が建ち並ぶ。その一部は現在は皇帝たちが所蔵した文物の展示館として開放され、いくつかを見学した。故宮の北端にある庭園・御花園には太湖石という珍しい一枚岩の築山・堆秀山があった。ようやく故宮の裏門に当たる神武門に出た。門の上には故宮の北側に位置する景山公園の万春亭の風情のあるたたずまいがあった。
■「蒼穹の昴」の舞台と京劇鑑賞 
■上海料理の昼食の後、世界遺産・頣和園(いわえん)に向った。市の西北部に位置し万寿山とその南に広がる昆明湖から成る広大な庭園である。18世紀に清の乾隆帝により造営され、20世紀初頭に西太后によって再建された。正門の東宮門を入ると仁寿殿や徳和殿などの宮殿区がある。湖畔に面した玉瀾堂は改革を目指した光緒帝が叔母の西太后にうとまれ幽閉された場所である。以前読んだ浅田次郎の「蒼穹の昴」の舞台のひとつが眼前にあった。すぐ横の道を抜けた途端に広大な湖と優雅な楼閣・仏香閣が広がる絶景が飛び込んできた。湖畔に沿って西に進むと緑の柱の長い回廊・長廊がある。回廊を進むと梁に極彩色花鳥や風景画が描かれている。折り返して湖畔の道を対岸の風情を楽しみながら戻った。
■途中でシルク店に立ち寄った後、北京ダックの老舗「全聚徳」で北京料理の夕食を摂った。いかにも老舗らしい格式の店内には大勢の日本人客が席をしめていた。待つほどに大皿に盛られた食材が並べられ、ワゴンで切り分けられたメインの北京ダックも運ばれた。皮付きのダックを数枚とり、甜麺醤をタップリつけ、白ねぎと一緒に荷葉餅 (小麦粉の皮)で巻いて食べる。10年前に家族で香港に旅した時に味わった。二度目の北京ダック体験はかっての感動には遠く及ばない。
■7時半からは3,900円のオプショナルツアー・京劇観賞だった。ホテル内に設けられた京劇専門の「梨園劇場」に着いた。舞台前の客席はテーブル席がありお茶お菓子の接待がある。その後の自由席最前列に陣取り、40元で日本語イヤホンを借りて観賞した。ここは写真撮影は自由ということで舞台上の艶やかな演技をたっぷり撮影した。演目は「項羽と虞美人の別れの場面」「活劇」「皇帝の来訪を待つ楊貴妃」の三演目だった。終演後に出口に向うツアー仲間のオバサンが呟いた。「ア~、ヨー寝られたヮ」。
■今回のツアーで最も盛りだくさんの観光を楽しんだ日だった。歩数計のカウントも1.8万歩を記録した。ホテルのベッドで疲れた身体が深い眠りを誘った。

四日目に続く