プロローグ  オヤジの個人ツアーのプラニング
■昨年の2度の海外旅行に続いて今年も海外旅行に出かけた。個人旅行であるがパックツアー風に表現すればに「ドイツ・ロマンチック街道とスイス・ハイジの村&氷河急行の旅」とでもいうところか。妻とカナダから帰国直後の娘も含めた家族旅行である。
■元々、夫婦二人だけで気楽なパックツアーに参加する予定だった。カナダ滞在中の娘とのIP電話・スカイプでの会話が計画を修正させた。カナダ滞在中にイギリス・スペインの一人旅を敢行し、すっかり海外ツアーに嵌っている娘が、一緒に行きたいと言ってきた。1年の約束の留学が半年間延長されている。これ以上延ばされては堪らない。この際、帰国確定の意味でも娘の参加は好ましい。娘も一緒なら彼女の語学留学の成果を武器に、個人旅行の楽しさも満喫できそうだ。そんな双方の思惑が一致して昨年の海外ツアーと同じ顔ぶれの出発となった。
■とはいえツアー計画やチケット手配等の準備は、カナダ滞在中の娘には頼めない。2ヶ月ほど前からネットをフル活用してオヤジによる海外個人ツアーのプラニングが始まった。同様の企画のパックツアーのパンフレットを取り寄せラフ計画を組み、日程調整、必須訪問先、現地ツアーの有無の確認と手配を確定していく。
 現地情報の収集は、おなじみのガイドブックである地球の歩き方(’06〜’07年版)の「南ドイツ」「スイス」である。
 イタリアやカナダ旅行でも依頼したエージェントの同じ担当者とコンタクトを取り、航空チケット、レイルパス、ホテル・バウチャー、現地ツアークーポン等を手配した。 ネットで独自に現地ツアーやホテルも確保した。
9月12日 機内で飲むドイツビールのライトなのど越し
■出発日がやってきた。朝9時55分発の出発便である。5時50分、マイカーで自宅を出発。カナダから帰国した娘を出迎えに5日前に関空に行ったばかりである。その時に確かめた神戸トンネルを経て阪神高速湾岸線「住吉浜入口」に入るルートをとった。例によって今回も「KHKパーキングサービス」の駐車サービスを利用した。7時20分に関西空港の第1駐車場の業者専用駐車スペースに到着。ここで業者担当者と合流して旅客タームナルに向う。今年6月の道路交通法の改正で旅客ターミナル前の路上での受け渡しができなくなったとのこと。
■エージェントから送られてきたフランクフルト行きのルフトハンザの航空券は、今後主流になると思われるEチケットである。全行程の搭乗ルートが記載されたパソコン出力の用紙だけである。はなはだ心もとないが、これが全てであり最終搭乗手続きまでこれだけで通用する。
 ルフトハンザが加盟するスターアライアンス・グループの搭乗手続きカウンターは、ANAの職員が全面的にカバーしている。従ってこのドイツの航空会社は、遠く離れた関空に職員を配置する必要はない。航空会社間の国際的なアライアンスが、マイレージの共通化という顧客の利便性以上に、コスト削減といった現実的な経営課題であることを知らされた。
 関空のターミナルビルの施設もだんだん充実してきている。早朝の出発で採っていなかった朝食をローソンのおにぎりでカバーする。24時間営業のコンビニにとって国際空港は絶好の立地である。8時前後のローソンは3台のレジがフル稼働している。フランクフルト到着直後の現地通貨の手持ちがない。出発ロビーのゲート付近にあった紀陽銀行出張所でとりあえずのユーロを手に入れた。
 ここ数回の海外個人ツアーの学習効果で出国審査、手荷物検査等もかなり慣れてきた。早目に搭乗ゲートに到着し搭乗を待つ。
■出発が10分早くなり9時45分になっている。25分に搭乗が始まり、LH741便に乗り込む。離陸後11時間45分のフライトとのアナウンス。水平飛行に入るとすぐにドリンクサービスとなる。待ち望んだドイツビールのライトな喉越しがたまらない。続くランチタイムでも2本目のビールをゲットする。いつも飲みすぎ注意の警告に目を光らせる隣席の妻も、ツアー中のビールについては黙認している。機内でのその後の夕食でも3本目のビ−ルが待っていた。
フランクフルトの駆け足観光
■現地時間14時50分、フランクフルト国際空港に到着。時差は7時間だ。15時30分には入国ゲートを通過した。テロ対策の厳しいご時世としてはスムーズに運んだというべきだろう。空港ターミナルビル地下1階のSバーン(都市近郊電車)の空港ローカル駅に向う。日本茶のペットボトルをしこたま詰め込んだ重いスーツケ−スと格闘しながらプラットホームにたどり着く。
■とりあえずこの重い荷物をまずホテルに預けることが先決だ。この点が個人旅行の泣き所でもある。行先はここから6駅先のコンスターブラーヴェッヘという舌をかみそうな名前の駅だ。フランクフルト中央駅の更に先にある。この季節はドイツ各都市で見本市が開催中で、中央駅周辺のホテルは満室だった。
 「地球の歩き方」と首ったけでようやく自動券売機でチケットを確保する。とはいえどの電車に乗っていいかわからない。近くで見かけたルフトハンザの日本人スチュワーデス2人組に尋ねて、ほどなく到着した電車に乗り込む。ここでまた新たな悩みが発生する。下車はどうしたらいいのか。ここの鉄道にはなんせ改札口がないのだ。同乗していた先ほどのスッチーに再び尋ねる。「こちらは乗客の自己申告に任されてますから、そのまま降りて下さい」とのこと。
■16時、なんとか初日のホテル「NHフランクフルト・シティー(画像@)」にたどり着く。フロントマンは30代の日本人男性だった。しかも出身は伊丹市だという。チェックインのついでに観光スポットやレストランガイドをしてもらった。
■フランクフルト滞在は、到着日だけである。観光に当てられる時間はわずか2〜3時間しかない。ただお目当てのスポットは、いずれもホテルから1km前後のところにある。早速出かける。最初は「旧市庁舎のレーマー(画像A)」だ。独特の色使いの壁と階段状の切妻の屋根が印象的だ。レーマーの200mほど東に「大聖堂(画像B)」があった。神聖ローマ帝国の皇帝選挙や戴冠式が行われた歴史のある教会だ。聖堂内に入る。キリスト教の由緒ある大教会の堂内を初めて目にした瞬間だった。荘厳な雰囲気に包まれた左右対称のドーム型の美しい造形美が圧倒的な迫力で迫ってきた。
■その後、ドイツ屈指の大型デパート「カウフホーフ」に立ち寄った後、ビアガーデン(屋外のテラス風のビアレストラン)で夕食(画像C)をとることにした。今までのツアーでは注文しなかった娘が、突如ビールをオーダーする。カナダでの1年半の留学生活が変えさせたのか。アルコールを苦手とする息子を持つ父親としては、初めて子供とジョッキを酌み交わす機会となった。ツマミを兼ねた食事は、これぞドイツ料理というボリュームたっぷりの「ソーセージのポテト添え」を注文。気の良さそうな若いウエイトレスに家族写真を撮ってもらった。
■19時30分、ホテルに帰る。エキストラベッドを持込んでトリプル仕様とした部屋は、まずまずのレベルだった。21時には眠りについた。朝5時起きの長い1日の終わりが23時間後に訪れようとしている。
 翌朝の朝食はアメリカン・ブレックファーストタイプだったが、豪華そのものだった。何よりも日本人女性がいて、ご飯、味噌汁、焼き鮭、漬物等の和食のメニューがドイツ料理以外にたっぷり準備されていた。これが最後の日の朝食だったらどんなに感激したことだろう。

第2部に続く