3月16日(月) パムッカレの石灰棚とイスラム神秘主義教団
■ツアー四日目の朝は、浴槽の蛇口からの温泉水の噴き出し音で目覚めた。4時半ではないか。温泉の早朝風呂を楽しもうという家内の所業だった。6時からの朝食を済ませ7時30分ホテル出発というのが、このツアーの不動のパターンとなった。
■7時半、バス車中で「ギューナイドン(お早うございます)」の挨拶を交わしホテルを出発。約10分でパムッカレ最高の観光スポットに到着。世界遺産のヒエラポリスと石灰棚だ。ヒエラポリスはアレクサンドロス大王時代の古代遺跡である。円形劇場やアポロ神殿跡等の発掘済みの建造物だけでなく、果てしなく広がる広大な敷地には未発掘の遺跡が眠っている。遊歩道を遺跡を眺めながら散策し、ヒエラポリス博物館横を通り、古代遺跡が沈む温泉を見学する。
■その後、いよいよメインスポットの石灰棚の見学と足湯体験となる。真っ白な石灰棚と牧歌的なパムッカレの街並み、背景を彩る冠雪の山並みが感動的なビューポイントを演出している。温泉湯の流れる石灰棚に裸足で入り苔のぬめりに滑りそうになりながら足湯体験に興じる。30分ばかりの自由時間を石灰棚を巡る遊歩道散策で過ごす。1時間半の観光を終え次の目的地コンヤを目指す。
■11時過ぎにトイレ休憩。名物の蜂蜜ヨーグルトを味わう。古くからある練り状のヨーグルトに天然の蜂蜜をかけた美味しいデザートだった。ここから1時間半をかけて昼食をとるアクシヒルに向かう。途中は内陸部の山岳地帯や湖水の景色が続き、大理石の産出現場も目にした。温暖なエーゲ海沿いの風景が、雪景色の山岳地帯の風景に一変する様に驚かされる。
■1時過ぎにサービスエリア到着。短時間休憩の慌ただしい昼食となる。いんげんの前菜、ピデ(トルコ風ピザ)、肉の煮込み料理、デザートと続く。ひき肉を柔らかい生地で包んで焼上たピデは絶品だった。1時40分に今日の最終地コンヤに向かう。徐々に雲が濃くなり、1時間後にはとうとうバスの前方の窓を粉雪が叩き出した。
■コンヤに入り、メヴラーナ博物館に向かう車中でコンヤのガイドがある。政教分離のトルコの中でも有数のイスラム色の強い街のようだ。確かに街中ではスカーフを巻いた女性が多い。かってのセルジューク・トルコの首都でもあり、芸術、科学の中心でもあった。イスラムは、花の文化であるという。チューリップはアッラーの、バラはマホメッドの、カーネーションは天国のシンボルとされる。町中でそれらの花々の飾りが目につくのもコンヤの街だ。4時過ぎに博物館に到着。イスラム神秘主義派・メヴレヴィー教団の創始者・メヴラーナが眠るの霊廟跡である。最初の小部屋にコーランの言葉を引用したアラビア語の多くの額が飾られている。
■テオさんの解説。「共和国建国後、アタチュルクはトルコ語をアラビア語からローマ字に変えた。83年を経て若い世代を中心に国民の多くがアラビア語を読めなくなった。ここではそうした背景から敢えてアラビア語のコーランを掲示している」。アラブのイスラム諸国の中でトルコは親西欧の独自のスタンスを持ち、EU加盟を目指している。ローマ字化は、政教分離とともに国民の精神風土をそうしたスタンスを確立する上で重要な役割を果たしたに違いない。館内を旋舞(セマー)の神秘的な旋律が流れている。彼を高く評価しているらしいテオさんの熱のこもったガイドが続く。イスラム教の中でも唯一仏教的な教えを取り入れた宗派であるという。
■5時前には見学を終えてホテルに向かう。コンヤの郊外に建つ真新しい近代的高層建築の高級ホテル・リクソスである。正面玄関の回転ドアはメヴレヴィー教団の旋舞のモチーフが施されている。1階館内の広々としたロビーが5ツ星ホテルの風格を漂わせている。チェックインした部屋も最新設備のハイレベルな仕様だった。
 早目のチェックインのおかげで6時に繰り上がった夕食が、ビュッフェスタイルの食材を一番乗りでありつける幸運をもたらした。高級ホテルにふさわしい料理の数々だった。とりわけ昼食でその美味しさを味わったピデ(トルコ風ピザ)がここでも焼き立てで提供されていたのに満足した。7時半に隣室の友達ご夫婦を訪ね、持参の電気ポットで沸かしたコーヒーを御馳走になりながら懇談した。友達同行のツアー参加のくつろぎの一時である。9時半頃にはベッドについた。本日の万歩計は15553歩を数え、広大なヒエラポリス遺跡の散策が奏効した。
■4時半起床。昨晩の早寝が早朝の目覚めをもたらした。テレビでニュース番組を見た。イスタンブールで開催中の世界水フォーラムの様子が映された。判読不能のアラビア語でないローマ字テロップがかすかに内容を教えてくれる。ローマ字導入のアタチュルクさんに感謝。出席の各国首脳に交じって日本の皇太子の顔が見える。ビュッフェスタイルの食べ過ぎる朝食を済ませ、7時半にホテル出発。

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