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エピローグ 現地ガイド&「地球の歩き方」 | |
現地ガイド「ようこさん」の「ローマ人の物語」観 ■マドリッドとトレドの現地ガイドは「ようこさん」というマドリッド在住の日本人女性だった。プラダ美術館でのガイドぶりはレベルの高い的確なものだった。幅広い知識と造詣を感じさせるガイド内容は知的水準の高さを物語っていた。そんな彼女にトレド散策中に多くの質問を投げかけた。中でも最も聞きたかったのは塩野七生とその著書「ローマ人の物語」についての彼女の評価だった。 ■私にとって「ローマ人の物語」は多くの読書体験の中でも特筆すべき作品だった。このブログでも次のような書評をコメントした。http://ahidaka.asablo.jp/blog/2006/10/09/ 「ローマ人の物語」を通して得られたものは「文明観」ということであり、とりわけ西洋文明の根底にローマ文明があるという見方は新鮮で説得力のあるものだった。そんな私の所感と作者への好感を長くヨーロッパに在住する同性の彼 ![]() ■移動中の会話を通して彼女の人生の軌跡の一端をを知ることになった。「40年近く前に当時若者たちの間ではアメリカ志向の強かった中でヨーロッパを目指して渡航した。紆余曲折の後スペインに定住しスペイン人男性と結婚した。現在娘がドイツに留学している。自分の人生を振り返れば彼女が現地でパートナーを選び定住することもやむを得ない」。私の同世代に近いひとりの日本人女性の逞しくも自信に満ちた人生を垣間見た。 ■ その彼女の私の問いに対する回答だった。「私も『ローマ人の物語』は文庫本を日本の姉から送ってもらい、ずっと読んでいます。素晴らしい本だと思います。ヨーロッパ各国のルーツがローマにあるということは全く同感だし、日本の皆さんがそのように理解してもらえるのはとてもうれしいことです。塩野さんは素晴らしい日本人女性だし尊敬しています。ただ『ローマ人の物語』に関して欲を言えばローマ在住の彼女の著述はローマ側の見方に勝ちすぎているように思います。ローマの属州だった各国側の視点がもう少しあればという気がします」。 期待した以上の回答だった。「ヨーロッパの故郷ローマ」という理解がマドリッド在住の彼女自身の口からも裏付けられたと思った。 |
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「地球の歩き方・スペイン編」
![]() ■「地球の歩き方」は基本的には海外に個人で旅をする人向けのガイドブックである。それだけに街歩きや宿さがしや飲食店ガイドの情報が豊富だ。それらはパックツアーで出かける分には余分な情報と言えなくもない。とはいえ現地ガイドが手当てされないという前提だけに個々の観光スポットのガイドは懇切丁寧だ。事前にその知識を頭に入れた上で現地ガイドの説明を聞けばより一層理解が深まるというものだ。 ■それ以上に貴重なのは国ごとの基本情報に加えて気候、郷土料理、伝統文化や芸能、歴史や年表などがコンパクトにまとめられている点だ。それらはお仕着せツアーではあっても異文化体験という旅行の最大の醍醐味をよりよく満たしてくれる。とりわけ歴史はその国の成り立ちや現在の風土を知る上で欠かせない情報だ。目前の観光スポットがその国にとってどんな意味を持つのか、またその国の歩みにどんな役割を果たしたのか。そうした点を念頭に眺める上での必須情報と言えよう。 ■「地球の歩き方・スペイン」版にもスペインの「紀元前のイベリア半島」から「スペイン共和国から現在まで」に渡る歴史が2頁にコンパクトにまとめられている。とはいえスペインのドラマチックな歩みと同様にその中身は濃い。今回見学したスポットはそれらの歴史に刻まれた痕跡でもある。ガウディーのバルセロナ、タラゴナのローマ遺跡群、各地のイスラム様式の残るカテドラル(大聖堂)、ラ・マンチャ地方の風車群、イスラム最後の拠点アルハンブラ、文字通りイスラム寺院の名残りをとどめるメスキータ、栄華を極めたスペイン帝国王家のコレクションであるプラド美術館・・・。スペイン各地を巡るツアーは刻まれた歴史の名残りを確認する旅でもあった。 |
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